序章 2話 再開
きこえてるよ
何回も、口の中でこの言葉を転がす。
確かに聞こえた。きこえてるよって。
「……紡」
「どしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そっか、僕、今日歩いて帰るよ」
「時間がかかるよ?車で送ってくから」
「んーん、考えたいことあるんだ」
「そうかい…気をつけて帰ってきなよ?」
「うん」
広い田舎道をゆっくり歩く。
さっきのは本当に何だったんだろうか。
瞬間 強い風が吹く。まるで子供のイタズラみたいに――。
そこまで考えて目頭が熱くなる。
何かを考えたら泣きそうで、苦しくなって
急いで家に帰った。
ガラガラガラッ
「おかえり」
「ただいまっ 部屋行くね」
「わかったよ」
どうしよう。苦しい。しんどい。
引き出しを開いてノートを取り出す。
音楽と物語だけが僕にとっての救いだった。
苦しくてどうしようもない時は一心不乱に曲や小説を創り続けた。
1時間くらい、経っただろうか。
1つの物語を完成させてやっと息がしやすくなる。でも、
「こんなの書いてなんの意味があるんだろ」
そう思ってしまうのだ。誰も僕を認めてくれる人はいない。誰も僕の作品を見ることは無い。
すごいなぁっ
「えっ、?」
聞こえた。また?確かに、聞こえた。
パニックになりながら辺りを見渡す。
すると、本棚の近くにいた。
声を上げそうになるのを堪える
ひさしぶりだねっ!
そう言って、本を片手に持ち幼く微笑む
楓菜によく似た幽霊が──。
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