夏の終わりと君の声

雨音

序章 1話 また君の元へ

また夏がやってきた。

夏の匂いと共にやってくる、あの絶望。

ずっと忘れられない。忘れるわけが無い。

この日、この日は



━━━大切な人が死んでしまった日━━━


8月13日

蝉の声がする。

今日はお盆 これからお墓参り。

頭が痛い。口の中が渇いて目眩がする。

次第に、階段をおりる足が重くなる。

「やっと降りてきた」

「…ごめん」

「いいけど…そんな格好でいいのかい?」

「うん」

「…悲しいのは分かるけどいつまでも引きずってちゃだめだよ」

「……分かってるよ」

ばぁちゃんに言われなくてもわかってるよ。

わかってる。

もう帰ってこないことなんて分かってる。

けど、けど、、

「また、会いたいなぁっ、」

そんな叶わないことを考えてる。


ガチャッ


長い階段を登る。必要な物を持って桶に水を溜める。

ゆっくり、慎重に進んでいく。

コケたら連れてかれるってばぁちゃんが言ってた。まぁ、連れてかれてもいいかもな。

そんなことを考えてる。

「……きたよ」

やっと着いた。

「久しぶり」

何も聞こえない。答えてくれない。

「紡…」

ばぁちゃんの悲しそうな声がする。

「聞こえてる?帰ってきたよ 僕。」

「僕、ここにいるよ」

「ねぇっ、!」

なぁに

「!?」

聞こえた。

確かに、聞こえたんだ。

「聞き間違い、?」

そうだよ。僕。もういないんだよ。

考えたらわかるだろ。


「楓菜」は死んじゃったんだ。


「……紡?」

「帰ろ、ばぁちゃん」

「あぁ、そうだね、」

そうだよ、聞き間違いだよ。

そうだろ。楓菜。

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