第25話 資金調達
ギルドの中に入ると、一人の魔人が、近づいてきた。
こいつは間違いなく目がカメレオンのようにギョロギョロしている魔人だ。
しかも、見るからにチャラい奴だ。
「おいおい、お前かぁ。昨日リザリンが言っていた新入りって奴は?」
ナイフをチラつかせながら、近づいてくる。
正直、絡みたくない。
なんたって、変な奴ばっかりだもん。
昨日も薄々感じていたが、今朝のバクの魔物で確信した。
ここの世界の人は、頭の弱い奴がおおい。
「あぁ。よろしくたのむよ。」
西国までどれくらい時間がかかるのか分からないし、ここで時間を割かれると面倒だ。
ここは、穏便に済まそうと思ったアスタローターは、とりあえず握手をしてみることにした。
チャラそうな魔人は、以外にも握手に応じてくる。
「おぉ。よろしく頼むぜ。っじゃねぇよ。お前が、握手してきたから、応じてしまったじゃねぇか。クソ。今のは無効だからな。」
応じたと思ったら、手をはたかれた。
この男の目的が何だか分からないが、仲良くなる気はないようだ。
「俺は、お前と仲良しこよしをしに来たんじゃねぇ。俺はなぁ、懸賞魔人でもないどこの馬の骨かも知らねぇ奴を、いきなり、領内最強として扱うのに納得がねぇんだよ。」
「いや、そんなこと言われた覚えはないですけど・・・。」
別に領内最強だなんて言われた覚えなんてない。
「お前は知らなくても昨日ギルドにいた奴らが言ってたのを聞いたんだよ。昨日、ギルドで何をしたのか知らねぇが、リザリンさんや他のギルドにいたメンバーがお前が最強だと言ってたんだよ。」
「いや、全然知らない。」
「リザリンさんは、これからは、料理も投げないって言ってたぞ。」
「それは、いいことだ。」
「他のメンバーに聞けば、お前がリザリンさんにその遊びはするなと言ったそうじゃないか。お前は、その後、料理を口から吐き出して遊んでいたのに!」
「いや、それは誤解だ。」
「いつも大きかったリザリンさんの背中が小さくなってたぞ。お前なんぞ認めない。戦わずにリザリンさんが一位の座から降りるなんて納得がいかない。俺としょうンーーー!」
「――待て、レロンチョ。」
また新しい魔物がギルドに飛び込んできて、カメレオンの目を持った魔物の口を押さえた。
話の流れから、俺に昨日のことで文句があるようだ。
異世界にきてからもとの世界の常識が通じていないことを感じつつある。
また、何かやらかしてしまった可能性がある。
「悔しいが、奴の力は本物だ。今朝届いた新しい懸賞魔人リストなんだけどよぉ。ごにょごにょごにょ。」
突如乱入してきた魔物がレロンチョと呼ばれた魔物の耳元でささやいている。
なにを言っているかは、分からないが、レロンチョの反応からあまりいい話ではなさそうだ。
耳元で話している内容は聞こえないが、あぁ?とか、ん?といった相づちを繰り返している。
そして、耳元でささやいている魔人が一枚の紙を見せると、おひょっと短い悲鳴を上げ、威勢の良かったレロンチョの顔がみるみるうちに青くなって、震えていく。
「―――な、悪いことは言わない。さぁ、帰るぞ。」
「あっぁっぁ。すっすまないが、かっかっかえら、帰らせてもらう、いただきます。」
さっきまで、流暢に話していたのに、急に詰まりながら話をし始めた。
何を耳打ちされたのかは分からないが、急ぎの用でも出来たのだろう、顔色を悪くしたレロリンは、こちらの様子をうかがいながら、後ずさるように、ギルドの入り口の方へ移動していく。
魔物ギルド内で最強がどうとか言っていたから、ギルドに関して何か言いたいことがあるのだろう。
俺も、昨日簡単にしか説明を受けていないからもしかしたら何かタブーなことをしてしまったのかもしれない。
「レロンチョだな。顔は覚えたから、また何かあったら今の続きを聞かせてくれ。」
そういうと、レロンチョは白目を剥いて気絶した。
「おい。レロンチョ!気を確かにもて、だから俺は早まるなと言ったんだ。」
何かを伝えに来た魔人は、レロンチョを引きずりながらギルドを出ようとする。
「おい。大丈夫か?」
レロンチョが、倒れたのだ。
よっぽどのことが起きたのだろう。
肩を貸してやろうと近づくと、止められた。
「まて、俺一人で大丈夫だ。それ以上レロンチョに近づかないでいただきたい。」
「そっ、そうなのか?じゃぁ、俺はもう行くぞ。」
「あぁ。そのまま行ってくれ。」
魔人は、レロンチョを引きずりながら、ギルドを出て行く。
結局、何が言いたかったのか分からずじまいで、後ろ髪を引かれる思いだが、考えないようにしよう。
考えても分からないことは、考えてもしかたがない。
ギルド内は、他にも数人はいたがレロンチョの後を追って出て行った。
なぜ、出て行ったんだ?
こんなに、人から避けられるのもさみしい者だな。
前世では仕事柄いつも人目に晒されながら生活しており、正直人目がうっとうしくてなんとかならないかと思っていたが、あからさまに避けられるとなぁ。
まぁ、いい。
どうせ、しばらくは西国へ行くのだ。
魔王を倒して、ここへ帰ってきたときには、関係もリセットされているだろう。
受付で早速、給料をもらって西国へ向かおう。
今、ギルド内にいるのは私と職員の女性一人だけだ。
昨日、ギルドに登録したがカウンターには、昨日いなかった別の職員がいる。
「あのぉ。今日の給料もらいたいんですけど・・・。」
「ひぃぃ。少々お待ちを。」
なぜ、悲鳴を上げるのだ。
俺は、何かしたのだろうか?
原因を考えてもよく分からない。
今日が初対面のはずだ。
レロンチョとのやり取りを見ていたとしても、あそこまで驚く必要はないと思う。
「どうぞ。今日のお給料です。お収めください。」
どさぁ。
そう言うと、異世界のお金が入った袋を重そうにカウンターへ置く。
その量は、あからさまに昨日より多い。
数十倍はある。
そもそも、昨日はカウンター越しに、コインを数枚もらっただけだ。
袋いっぱいにもらってはいない。
「あのぉ。昨日はコイン数枚だったのですが、これであってるんですか?」
「はっはい。間違っておりません。アスタロート様の給料は、袋いっぱいです。」
「そっ、そうなのか。」
袋いっぱいってまた随分とざっくりした単位だが、はっきりとそう答えられた。
絶対に何かがおかしいが、自分に取って悪い話ではない。
何も働いていないのに、これだけのお金をもらうのも少し気が引けるが、お金に余裕があると今後の不安もかなり解消できる。
ならば、ここは、素直に受け取っておこう。
「では、ありがたく頂くよ。」
ソフトボールくらいのサイズの巾着袋を受け取る。
ソフトボールサイズとはいえ、金属が入っているのだ、かなり重い。
巾着袋を腰からぶら下げて、ギルドを出る。
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