第14話 vs魔王

斧での連続攻撃を鎌で打ち返してくる魔王。

いくどと攻撃をふるうがすべて防がれる。


くそ。


魔王には余裕があるのが透けて見える。

魔王の鎌から受ける衝撃が強く早くなってきている。


徐々に攻撃を繰り出すタイミングが魔王と合ってくる。

それは、アスタロートが攻撃を仕掛けてそれを防ぐ魔王の構図が変わることを意味する。



間違いなく、防御の姿勢から攻めの姿勢へと移行しようとしている。

まずい、このままでは、攻撃している側から受ける側へと回ってしまう。


アスロートは、魔王と打ち合っていた間合いから逃れるために瞬時に移動するが、それについてくる魔王。


くそ。


力とスピードは今のところ拮抗している。

だが、これは魔王が全力を出していないからだ。

じわじわと魔王の力は強くなっていく。

このままでは、力負けしてしまう。


はやい。


こちらが攻撃するよりも早く攻撃してくる。

思わず、攻撃を受け止めてしまう。


そこからは、防戦一方だ。


なんとかして、距離を取りたいが、足運びでは距離をたらせてはくれない。


何かいい魔法がないか考えるが、そんな合がいい魔法なんて知らない。


そもそも、誰かに魔法を教わったわけでもない。

転生したのも昨日だ。

魔法の師匠となるような人も知らない・・・。ん?

いるではないか!

そうか、魔王の魔法攻撃を真似すればよいのだ。


魔王の攻撃を斧で受けながら魔力を込める。


「はぁ!」


斧を前に突き出し、魔王の攻撃を受けると同時に、魔力を魔王に向けて放出する。


それは、氷をまとった衝撃波として魔王に襲い掛かる。


この攻撃に、やっと魔王は距離をとるが、まだまだ、余裕そうだ。


「ガハハハハ。俺を相手に身体能力だけで同等に立ち回れる奴はそういないぞ。まだまだ、余裕があるのだろう?こちらもギアを上げるぞ。」


いや。これからも何も全力で斧をふるったんですけど・・・。

ギアなんて上げないでほしいんですけど。


魔王は何かを期待するような目で見ているが、そんな目で見ないでほしい。

スピードは頑張ればついていける、力は魔王のほうが上だ。

あと技術面では圧倒的に魔王に軍配が上がる。

それに、魔王にはまだ余力がありそうだ。


魔王の体から、紫色のオーラが出てくる。

あれは、なんだ?

魔王の魔力が体からにじみ出ているようだ。


強化魔法だろうか?


異世界にきてすぐに試した魔法もイメージで何とかなった。

ならば、イメージで何とかなるのではないだろうか?

根拠はないが、魔王と同じことができる気がする。


アスタロートは体中に魔力をいきわたらせ、筋力のサポートをするようにイメージする。

体から、冷気が出て白い靄がでてくる。


どうやら、できたようだ。

魔力を体に流せば流すほど体がかなり軽くなった。


この体の調子ならまだまだ魔王と戦えそうだ。


手を握っては開いてを繰り返し、体の調子を確認する。


戦闘技術は魔王のほうが上だ。

武器の扱いもわかっているが、戦闘経験がなさすぎる。

技術面で争おうとしても勝てないだろう。


魔王が全力を出していない今、圧倒的火力で叩き潰す。

短期決戦、これしかないだろう。


幸い、巻きこみたくないフルーレティーは外に出ている。

これなら、力加減が分かっていない魔法も打ち放題だ。


両手を強く握りしめる。

両手の力むことで両手の魔力が濃くなり、氷のガンレットが現れる。


不思議な現象に一瞬気を取られるが、今はそんなことに気をまわしている余裕はない。


斧は、もう使わない。

魔法とこぶしで殴る戦法だ。

原始的だが、この両手の使い方はよくわかっている。

斧の扱いかたを体は分かっているようだが、知識としてない分、拳で戦った方がいいだろう。


「ガハハハハ。楽しみだぞ。その魔力。技将にも届くやもしれん。では、第二ラウンドだ。」


魔王から仕掛けてこようとする。


戦闘経験がほとんどないフルーレティーでもわかるほど、魔王の魔力が練り上げられていく。


先ほどまでの戦いは、身体能力が主体の戦いだとするならば、これからは間違いなく魔法戦だ。


魔王の紫色のオーラーがどんどんと色濃くなっていく。


この世界では、魔法を練れば練るほど、体から魔力があふれ出てくる。

そのオーラで相手が何系統の魔法が得意なのかがわかる。

アスタロートの場合は、青白い氷系統の色となる。

なんの魔法だ。


片手で鎌を持ち、もう片方の手に、紫色のオーラが集まる。


もう潮時なのだろうか。


魔王が、暴走している気配はない。

いやまだ、戦える。

魔王が正気を保っている間は、死ぬリスクは少ないだろう。


魔王に対抗できるように、魔力を両手に集めていく。


今度は、魔王から仕掛けてきた。


魔王の手に覆われている球状のオーラが一瞬振動した。


その振動が、部屋全体に広がった直後、アスタロートが魔王に引き寄せられていく。


突然のことに、踏ん張ることができず。

魔王の間合いに引き込まれる。


体勢を崩したアスタロートにすかさず、魔力で肥大化した鎌をふるってくる。


振るわれた鎌は、アスタロートの真横より少し後方から、草を刈り取るような起動を描きながら迫ってくる。


走馬灯という奴だろうか?

鎌の動きが非常にゆっくりに見える。

いや、これは、この体の特徴だのだろうか、勇者との戦闘でも非常にゆっくり見えた。


この戦いでは、これが初めてだ。


ただ、勇者たちとは比較にならないほどのスピードで繰り出される鎌は、アスタロートが避けきれるよりも先に体に届く。


降り注ぐ刃のもとで、少しでも長く考える時間が取れることは、次の一手をより正確に選び取れる。


どごぉぉぉぉん。


砂煙が、立ち込め、あたりが見えなくなる。


すぐそこに魔王がいるはずだが、顔すら見えない。

まったく、なんて攻撃だ。


砂煙が収まると、鎌の内側で鎌の柄を片手で受け止めているアスタロートが見える。


魔王はすかさず、次の攻撃を繰り出そうとするが、それはアスタロートも同じだ。


カメの甲羅を破壊した時と同じようにこぶしを振るおうとするが、魔王の攻撃のほうが早く全方向へ衝撃波が飛ばされる。


至近距離にいたフルーレティーは、魔王の鎌を握りながら耐えようとする。


魔王の鎌を防ぐために、鎌の内側にいるアスタロートは後ろに吹き飛ばされると、鎌の餌食となるからだ。


だが、その踏ん張りもきかず、少しずつ後ろへ滑って行き、背中や翼から痛みが走る。


いったぁぁぁぁ。


でも、ここで、倒れるわけにはいかない。

鎌を握っているということは、魔王の動きも制限されている。


今、ありったけをぶつけることで、魔王に勝てるかもしれない。


数秒遅れで、アスタロートの魔力をありったけ乗せた拳を振るう、魔王は逃げようとするが、そうはいかない、鎌を引き抜いて動こうにも、鎌の内側にいるアスタロートもともに移動してしまうし、そもそも鎌の柄を握っている。


衝撃波を耐えきりこぶしを振るうアスタロート。


「うおぉぉぉ。」





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