運命の花嫁と呼ばれた私は身に余る溺愛から逃げ出られない
鯖缶ひな
第1話 運命の花嫁と呼ばれた私は身に余る溺愛から逃げ出られない
この日本という国では古くから、あやかしの混血の一族が権力を握ってきました。
その一族達の跡取りである守り人と呼ばれる者達には運命の相手がおり、あやかしではなく、人間の中から探す必要がありました。
運命の相手となった者は、守り人の溺愛を一身に受け、逃げる事はできません。
守り人と運命の相手は出会うと、お互いの手のひらに花の刻印が模様のように現れ、お互いがお互いの唯一無二である事が誰の目から見ても明らかだそう。
きっとそんな恋が出来る人生は、とても幸せなものなのでしょう。
ある日、どこにでもある公立高校である、都盛高に、桜桃学園というお嬢様学校から来た女の子がやって来ました。
その女の子は灰原桃瀬という子で、家は資産家でしたが、優秀な妹と比べられ続け、自分に自信がありませんでした。
灰原さんは明るく、友達も多いのらしい、十分素敵な女の子なのにも関わらず、です。
しかし、灰原さんは友達を訪ねてやって来た都盛高等学校で、運命の王子様と出会う事になります。
「ハンカチ、落としましたよ」
「あ、ありがとうございます……!」
偶然にも、灰原さんのハンカチを拾ったのは、月宮家というあやかしの混血の一族の跡取り……つまり守り人の男性でした。
その男性は、名を月宮葛人といいました。
2人が触れあった瞬間、周囲にいた者達は花びらが散る幻覚が見えたとの事です。
そして、2人の手のひらには、コスモスの花の刻印が咲きました。
「え、な、何これ……!?」
「……これは、あなたが俺の運命の人という証拠だよ」
「も、もしかして、あなたは守り人なの……?」
「あぁ、そうだよ……やっと出会えた、俺の刻印の花嫁」
そういって彼は美しく微笑んだと言います。
何があっても、守り人はいつかは運命の人と出会うものなのです。
「葛人くんの花嫁になれるだなんて、思ってなかった。幸せです」
ここは2人がいつもデートをしている喫茶なぎさです。
パンケーキが評判ですが、他の料理も美味しく、もちろん紅茶やコーヒーもマスターのこだわりが出ているような、素敵なお店です。
「ありがとう、俺も君と出会えて幸せだよ……桜花ちゃん、今日は何がおすすめ?」
「自分で考えてください、お客様」
「はは。桜花ちゃんは冷たいな」
「こら、桜花! もっと真剣に答えろ!」
店長は怒ってしまいましたが、彼女がこのように葛人くんに言うのはある意味当然と言えました。
葛人くんは毎日毎日、灰原さんのデートの度にこの店に来ては、彼女に「おすすめは何か」と聞くので、彼女もおすすめのレバートリーがなくなってしまっていたのです。
ちなみにこの幸津川桜花という人間は、葛人くんと灰原さんの恋物語には一切かかわり合いにならないモブなので、記憶から消して頂いて構いません。
葛人くんとは不本意ながらに住んでいる所も近く、通っている高校も同じなので、この2人の背景をうろついている事はあるかもしれませんが。
店長はこの2人を見守る良き大人としてのポジションを確立しているので、しっかり覚えておきましょう。
「あはは、今日も幸津川さんと葛人くんは仲良しですね」
「ありがとう、灰原さん。でも、それは違うよ。桜花ちゃんと俺の仲はあまりにも最悪だ」
そう言うなら、何故彼女に葛人くんが構うのかというと、それは灰原さんには決して語られてほしくはない部類に入る話でした。
ただ一つ言えるのは、葛人くんは灰原さんの前で猫を被っているだけで、性格があまりにも最悪という事です。
灰原さんは葛人くんのそんな態度に苦笑しつつ、話題をすり替えました。
「ね、ねぇ、葛人くん。私、オムライスが好きなんだけど、駅前に有名な玉子料理のチェーン店が出来たんです。良かったら、一緒に行きませんか?」
「ごめん。俺は外で食べるオムライスが嫌いなんだ」
「え」
「俺には妹みたいな存在の女の子がいるんだけど、その子が作るオムライスが大好きでね。その子以外のオムライスは食べたくないんだ」
葛人くんのあまりのシスコン発言に、可哀想な事に灰原さんは顔をひきつらせました。
葛人くんのこの発言は大嘘で、その妹みたいな存在の女の子とは数年前に絶縁してしまっているのですが、それを灰原さんは知る由もないので、可哀想な話です。
そして恐らく、灰原さんはそろそろこのカフェ以外のお店でデートしたかったのでしょうが、葛人くんは華麗にスルーでした。
葛人くんは今までずっとこのカフェには立ち入る事はなかったのでしたが、灰原さんと付き合い始めてから、すっかりお気に入りのお店になってしまっていたのです。
どういう心境の変化なのかは、本人に尋ねないと分からないような問題ですが。(そして正面からそれを尋ねても、葛人くんは大人しく答えるような人間ではないのですが)
「月宮くん、そろそろ灰原さんを他のお店に連れていってあげなさい」
葛人くんにそんな事を言える店長は、間違いなく勇者でした。
葛人くんは一瞬不快そうな顔になりましたが、笑顔で店長に言いました。
「そんなの、嫌です。俺は店長の淹れるお茶を気に入ってしまったので」
「君が気に入っているのは、僕のお茶じゃないでしょう。この頻度で来るなら、僕はあなたを出禁にしますよ」
「桜花ちゃんもそう思う?」
彼女は葛人くんに内心動揺しながら、ワンテンポ遅れて、答えました。
「私が灰原さんなら、もっと色々な所でデートしたいと思います」
店長は彼女に葛人くんに隠れてグッと親指をたてました。
彼女は店長のその反応を見て、少しほっとしました。
「く、葛人くん。私はこの店も大好きなんですけど、葛人くんと色々な経験がしたくて。私、今まで誰からも認められてなくて、塞ぎ込んでいたけど、葛人くんと色々な世界を見たいんです……駄目ですか?」
「駄目な訳がないよ。そんな事を言ってくれるなんて、今すぐ君にいけない事をしたくなってしまうじゃないか」
「く、葛人くん……!」
灰原さんは頬を赤く染めました。
いけない事をしたくなってしまうという、乙女ゲームの中でしか存在が許されない台詞も、ハイスペックイケメンが言えば見事に決まるようです。
幸津川桜花と店長は2人に隠れて、苦々しく笑いました。
それから、2人は色々な所をデートしました。
映画館に博物館、図書館で勉強デートまで。
2人は他校でしたが、放課後の時間を使い、仲を深め続けました。
そのラブラブな様は、葛人くんの事が好きな女子が見たら、心が壊れてしまう程に仲睦まじいものでした。
しかし、2人はどうやら、プラトニックのまま、キスはおろか、手を繋ぐ事すらしていないようでした。
2人は2人とも、奥手だったのかもしれません。
それもあり、やっかみもあり、灰原さんは「身持ちが固く、運命の花嫁なのに守り人にキスすらさせない女」と陰口を叩かれるようになってしまいました。
通常だったら、灰原さんは「葛人くんに本当は愛されていないんじゃない」などとも言われている所でしたが、守り人が運命の花嫁を愛さない事などあり得ないのは大原則なので、そういった展開にはなりませんでしたが。
「あんた、いい気になるんじゃないわよ!」
そんなテンプレ台詞と共に灰原さんに冷水をかけたのは、都盛高の中でもスクールカースト上位の少女達でした。
一緒に下校しようと、桜桃学園からわざわざこちらへやってきた灰原さんを、無理やり校舎裏へ連行したのです。
「運命の花嫁の癖に、まだキスもさせてあげてないんですって? お高くとまってるわね!」
中々コンプライアンス的にアウトな発言でしたが、それに対して突っ込みを入れる人はいませんでした。
灰原さんは、困ったような顔でしたが、どこか余裕があります。
これが愛される事を知った人間の強さなのかもしれません。
「違います。ただ単に、彼は私に何かすると最後までとまらなくなっちゃいそうだから、何かあっても責任が取れる歳までは手を出さないって言ってくれてるの」
「……そんな事って、ある?」
「あります。私は彼が私に何もしないのは、私の事を大切にしてる証拠だって、自信をもって言えます」
「う……うるさい!」
そういって短絡的な事に、灰原さんにスクールカースト上位ちゃんが手を上げようとしました。
「や……やー!」
そこに恐らく灰原さんやスクールカースト上位ちゃんにとっては唐突に、幸津川桜花が現れました。
「幸津川さん!?」
「灰原さんに乱暴を奮うのはやめて! それ以上、灰原さんに何かしたら、先生も月宮先輩も呼ぶから!」
「……ちっ。面倒な事になったわね」
そういってスクールカースト上位ちゃん達は退散しました。
彼女……幸津川桜花は内心ほっとしました。
モブにして、二回目の登場です。登場人物の使いまわしでしょうか。
基本的にそこまで勇気のない彼女がこういった行動に出たのは、目の前で知り合いが酷い目に合う姿など、見たくなかった為です。
「幸津川さん……何でここに?」
「ええっと、美化委員として、草を刈っていたんです。そうしたら、たまたま皆さんの声が聞こえてきたので……」
彼女は不本意ながらに、灰原さんと葛人くんに巻き込まれがちの人間でした。
「そうだったんですね。ありがとうございます、助けて頂いて」
「い、いいんです。私は葛人くんの好きな人が傷ついている所を見たくなかったので……」
それは半分本当で、半分嘘でした。
「葛人くんと幸津川さんって、あのカフェ以外に関わりがあったんですか?」
「いえ、全く」
「そうなんですね。幸津川さんは葛人くんに特別な思い入れがあるように見えたので、もしかしてと思ったのですが」
それは女の勘というやつでしょうか。
彼女は何も言えず、押し黙りました。
「幸津川さんにお願いがあるんです、いいですか?」
「え、あなたが私なんかにお願い……? どういう事態ですか……!?」
「何でそんなに低姿勢なんですか? いえ、幸津川さんに今度、葛人くんの高校生活を教えてほしくて」
「私はあんまり詳しくないので、他の人を頼った方が良いですよ」
「別にそんなに突っ込んだ話まで聞きたい訳じゃないんです……ただ、彼の普段の顔が見てみたくて。彼は私の前での恋人としての顔とどれぐらい違うのかなっていう、いけない好奇心です」
そう言う灰原さんの顔には葛人くんに愛されているという自信に満ち溢れていました。
それは、葛人くんに片思いしている人が見たら、憎らしく感じてしまうであろうものでした。
「私は噂話レベルでしか月宮先輩を知りませんから……」
そういって彼女はダッシュでその場から離れようとします。
「あれ、桜花ちゃんと桃瀬さん?」
「葛人くん!」
灰原さんは笑顔で葛人くんに駆け寄りました。
いつの間に灰原さんから桃瀬さん呼びになったのでしょう。2人が以前より距離を縮めた証ですね。
「校門を探したけど居なかったから、ここまで見にきてみたんだ。君がいて良かった」
「ありがとう! 来てくれて嬉しい!」
そうやって2人の世界を作り上げているので、モブである幸津川桜花は2人の元から去ろうとしました。
「桜花ちゃん、もしかして桃瀬さんは俺の事で呼び出しでも受けてたの? 運命の花嫁の癖に生意気だ! ……とか」
「何でそれを私に聞くんですか」
「桃瀬さんに聞いたら、その相手を庇うような事を言うだろうからね。桃瀬さんは優しいから」
灰原さんは図星をつかれたようです。
彼女は迷いましたが、このような事が何度も起きたら大変ですし、必要最低限の事だけ葛人くんに伝える事にしました。
「……確かに、呼び出されてましたよ。詳細は私の口からはちょっと言えないですけど」
「大体内容は想像つくな。俺の花嫁に手を出すなんて、許せない」
「……やりすぎないであげてくださいね」
幸津川桜花にはそれしか言えませんでした。
そのまま、彼女はその場から去る事にしました。これ以上、この2人の恋愛事情に巻き込まれたくなどなかった為です。
彼女はもつれるような足取りで2人の姿を後ろに歩き始めました。
「……俺の花嫁。君がこんな扱いを受けるのは、きっと俺がいつまでたっても君に手を出さないせいだよね」
「別にそんなの、いいんです! 私は葛人くんがその、したいと思った時にしてくれればそれで……」
「ありがとう。俺のわがままを聞いてくれて……今は、これだけで」
「きゃあ!?」
幸津川桜花が思わず振り向くと、葛人くんは灰原さんの髪を持ち上げてキスをしていました。
それは彼女にとって初めて見た、葛人くんと灰原さんの直接的な触れ合いで、彼女にとっては生涯絶対に見たくなかったものでした。
「あぁぁ……い、嫌ぁ……!」
幸津川桜花は崩れおち、口からはか細い悲鳴が漏れました。
やめて。そんな所見せつけないで。
嫌、嫌、嫌。
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌…!!
「……可愛いな、そんな可愛い顔を見せられたら、俺の理性が保てなくなるだろ」
「そ、そんな、それなら、私だったらいつでも……」
「本当に可愛いね、俺の、俺だけの桜花は」
幸津川桜花は……いや、私は、耳を疑った。
「ずっと俺とこの女の事を憎らしそうな、哀しそうな目で見てて……本当に可哀想で可愛かったよ。君の目の届く所を選んで、好きでもない女と恋人ごっこに興じるだけの価値はあった」
葛人くんが私の所に向かってくるのを気配で感じる。
駄目だ。逃げなきゃ、離れなきゃ。今までもずっとそうしてたんだから。
そう思うのに、何故か足は動かなかった。思わぬ事態に混乱していたというのもあるし、ずっと飢えていたものが手に入る予感で、心が震えていた。
本当はそうするべきでないという事は分かっていたのに、甘美な誘惑に負けてしまった。
「ねぇ、俺が他の女の事を好きになると思った?」
「……守り人は運命の花嫁の花嫁を好きになるものだから」
「俺は守り人である前に俺だよ。俺の運命の花嫁がいるとしたら……それは桜花、君だけだ」
私は瞠目する。
葛人くんとは、私から拒絶する形で、数年前から関係は断絶していたのに、未だに私の事を「運命の花嫁」と呼ぶのか。
私の手のひらには紋章は浮かばない。だから、葛人くんの運命の花嫁でないのに、葛人くんはいつも私を愛しげな眼差しでそう呼んでいた。
私はへなへなと地面に座り込む。
じゃあ今まで、喫茶なぎさで、映画館で、博物館で、図書館で、私の行く場所行く場所で仲睦まじくしていたのは何だったのか。
「あの女を口説くような真似をしていたのは苦痛だったよ。俺は俺の気に入ったものだけ愛でていたいからね。でも、そうでもしないと、君は素直になってくれなかっただろう?」
そんな理由で、この男は今まで灰原さんと一緒にいたのか。
やっぱり、葛人くんは人として大切な所が、どこか欠落している。
……でも、彼のこんな言葉に歓喜してしまう私が、一番どうかしているのだけど。
葛人くんは私の背後へと来ていた。
「桜花、好きだよ。愛してる。ずっと君には拒絶されていて、辛かった。でも、俺の前に紋章を持つ女が現れて、確信したよ……俺の運命の花嫁は、幸津川桜花、やはり君だ」
葛人くんは私を後ろから抱きしめ、項にキスをした。
背中が、項が、全身が、火傷しそうなぐらい熱い。
「君は幼い頃から俺の側にいてくれて、妹代わりのようなものだった。でも、君を妹そのものに見た事はなかった……俺にとって君は、いつだって素敵な女の子だったから」
「……運命の花嫁を愛さない守り人なんて、あり得ない。私の事を好きだなんて、そんなのはきっと錯覚だよ」
「俺の事を侮らないでくれ。俺は君以外の人間を愛したりなどしないし、君が俺を愛している事も知ってるよ」
そういって、葛人くんは私の指を手に取り、キスをした。
「君の事だから、色々無駄に気を回しているだろうけど、大丈夫。俺と君を邪魔する全ては、俺が何とかするよ」
当たり前だ。本来の運命の花嫁を愛さず、その辺にいるモブを運命の花嫁と呼ぶなんて、私たちが良くても、世間は許さないだろう。
でも、「国内が煩わしかったら、月宮の跡取りの立場を放棄して、世間の声や月宮の手の届かない国外まで逃げようか。海外で起業するのも楽しそうだしね」と囁く彼は、そんな事も折り込み済みな気がした。
「俺から離れられるなんて思うなよ。俺とあの女をあんな目で見ていた上に、俺に抱きしめられて、今にも蕩け出しそうな顔をしている癖に。俺の運命が君であるように、君の運命も俺だよ」
あぁ、どうしてこうなったのだろう。
幼い頃、今とは別人のようで、歳上ながらに苛められっ子だった彼を助けなければ、こうなってなかった?
幼さ故に世間に疎く、守り人にとっての運命の花嫁の存在を知らず、無邪気に彼の事を好きになり、彼につきまとわなければ。
運命の花嫁を知ってからも、中々彼の事を諦められず、妹のような存在でいれば許されると、ずるずると彼の側にいなければ。
私は結局、月宮の人に「葛人様に近づくな」と言われてからでないと、葛人くんの事を拒絶出来なかった。
そうして、数年間は関わりをなるべく絶っていたのに、結局私は葛人くんを忘れられなかった。
だからきっと、葛人くんがこうやって私に執着するのは、私が葛人くんに執着していたからなのだ。
そうなのだとしたら、私は葛人くんに向き合わないといけないのかもしれない。
それが、葛人くんが本来の運命の花嫁と結ばれる手伝いをするか、もっと違う道か、それとも、このまま葛人くんの気持ちを受け入れるか、どういう方向性であっても。
今までは葛人くんから逃げていたけど、葛人くんは本来の運命の花嫁である灰原さんと会ってからも、私への気持ちが全くぶれていなかった。
それなら、もう腹をくくるしかない。
「絶対に逃がさないよ。俺の本来の運命をねじ曲げたのは、桜花ちゃんなんだから」
「……逃げない」
「え?」
「私は、葛人くんに向き合うよ」
「……っ!」
葛人くんは私の顎を持ち上げると、唇にキスをした。
私は目を丸くする。
「好きな人には、責任を取れる歳になるまで、手を出さないんじゃ?」
「何言ってるの? 好きな人にすごく可愛い事を言われて、理性を保ったままでいられる男なんていないよ」
そういう葛人くんは本当に幸せそうだった。
……何という二枚舌と思ったけど、そういえば、葛人くんは昔からスキンシップがそこそこ多かったな。
「これからは俺から逃げないでね、桜花ちゃん。君が側にいない日々なんて、生きている意味がなくなっちゃうんだから」
「……お、重い、重いよ。葛人くん」
愛も重いが、ぎゅうぎゅう抱きしめながら、体重をかけるのはやめてほしい。
「安心して、葛人くん。私は逃げないから」
そう。
運命の花嫁と呼ばれた私は、身に余る溺愛から逃げられない……いや、もう逃げないって決めたのだから。
……ところで。
私が気にするのはお門違いだけど、葛人くんが放置してしまった灰原さんは大丈夫なのだろうか……。
運命の花嫁と呼ばれた私は身に余る溺愛から逃げ出られない 鯖缶ひな @sababasababa
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