準備運動7

その日の夜


自宅にて───────




食材を各自で持って来いって言われてもな...


まぁ、無難に肉と野菜って感じか?



変わり種とかは、これといって思いつかないからなー



ちょっと調べてみるか



食材をメモに書きだしていたところで、手を止め

傍らに置いてあったスマホを手にとり...



って、やべ  

いつもの癖で別のアプリを開────


「あ...」


アプリが起動し、目に入ったのは...


塚越さんたちが所属するアイドルグループ

「ANYMORE」の新曲の動画だった


このタイミングでおすすめに出てくるのは、いくらなんでも空気読みすぎじゃないか…


別に特別みたいと思っていたわけではないが、

少しぐらいなら...と本来のスマホを起動した目的を忘れ

思わず動画をタップしてしまった





「...ここまですごい人が同じクラスにいたのか!?」


正直、いくらアイドルだからと言っても

まだ高校生になったばかりなわけで


あくまで、俺の常識の中では

クラスの人たちの反応的に考えて

実力的にも知名度的にも中堅ぐらいかと思っていた


だが、この動画を見ても

その認識を改めないのは、彼女たちにも失礼ではないかと思った。


俺が今までテレビで見てきたどのアイドルよりも

歌は圧倒的で、可愛らしさも兼ね備えていて

踊りをとっても、凡人の俺には到底理解できないほど

練習を重ねてきたんだろうと思う



センターとして人気を集める塚越さん、

塚越さんと仲がいい川井さんがそれを支える


名前はわからないが、残りのメンバー三人もそれぞれ

個性があり、それが見事にお互いを引き立てあっていた。



改めて一言


こんな人が同じクラスなのは...こっちとしては荷が重い


俺なんかは友人としてでさえも到底釣り合うはずがない


俺は、こんな多くの人に見られることなんてやろうとも思わないし

そもそも出来やしない


あまりにもチキンな自分に、いらだちまで見えてきた





そんな感情を持ちながら、スマホの電源を消したのだった



────────────────────────




あの後、結局変わり種は用意せずに

準備を終え、新入生歓迎会当日...




「それじゃあ、バスの席発表するぞー」


先生の声が、歓迎会直前で心ここにあらずの生徒たちが集まる静かな教室に響き渡る。



そして先生は、バスの席と名前が書かれている

大きなポスターを黒板へ磁石で貼り付ける



俺の席は...


前から五列目の窓際か


隣の席は誰だろう...


えっと、宮城櫻...?



確か、俺が座っている席が

ちょうど教卓の目の前の列で、その列の前から三列目で...


あ、俺の座っている席の右斜め前の席の子か



授業中の様子を見てる感じだと、おとなしい子って感じの印象なんだけど...




隣が翔吾とかだったら、良くも悪くも絶対目立ってたはずだけど

この席だったら、たぶんバス内は目立たずにいられる..のかな?





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る