第2話 これからのこと
リリアンになったとしたら、この物語のことを簡単におさらいしなければならない。机に向かうリリアンは紙とペンが無いことに気がつく。きっとリリアンはわがままお嬢様だから色々メチャクチャにしてしまうため、片付けられているのだろう。
リリアンは扉を開けて外にいるメイドに紙とペンをお願いする。すぐに用意してもらうとそのメイドに名前を聞くことにする。
「そういえば、あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
「は、はい!!メリーと、申します」
「メリーですね。爵名はないのかしら?」
「はい!平民出身ですので…」
メリー、最後までわがままばっかりだったリリアンに最後まで付き合ってくれた唯一のメイド。茶髪の可愛らしい見た目、リリアンでは無く、もっといいところで働けるはずだというのに。
「そう、ではこれからよろしくね。メリー」
「は、はいっ⁈」
突然のことにメリーはうまく返事ができなかった。部屋に戻るリリアンは紙にこれから起こることを書き出して行く。まず初めにこの物語に登場するキャラクターを書き出していく。リリアン、男爵令嬢のヘリン、リリアンの兄ガクド、皇太子のアーサー、魔塔の主人ヒリリトン、ギルドマスターのダンゲル、あとは騎士長、魔王。
騎士長と魔王にはまだ名前をつけていないため、どういう名前なのかわからない。この世界は魔法も使えるためどのようなことが起こるかわからない。
「まずは…この後に起こることといえば、パーティーね」
リリアンはパーティー前に起こる事件を書く。それはリリアンが着るはずだったドレスを男爵令嬢のヘリンに奪われること。男爵の娘とはいえ、平民並みのお金しか持っていないヘリンにリリアンが着るはずだったドレスを買えるわけがない。この世界を造った本人が言うのがなんだが、ヘリンは怪我をしたアーサーを助けたため、そのお返しとしてドレスを与えられた。皇太子のお願いをブディックの主人が断るはずがない。
「そうなると、リリアンが着るドレスが無いってことだよね…」
リリアンはパーティーに着ていくドレスを考える。すると部屋をノックされて慌てて紙を隠す。
「ど、どうぞ!!!」
「お、お嬢様。お手紙が…」
リリアンはそれを受け取ると間違いなくブディックの主人からの手紙。内容はリリアンの思った通りのドレスが間に合わないという申し出。そのことにリリアンは覚えていないフリをしてメリーに聞いてみる。
「メリー、ブディックの主人さんからドレスが間に合わないって来てるけど、私って、ドレスを頼んでいたのでしょうか?」
「は、はい…ブルーサファイアがついたドレスを…」
「そうなんだ、なら直接行ってみましょう。間に合わないなら別のドレスを見たいので」
リリアンは笑顔になるとメリーは慌てた様子でリリアンの外行き用のドレスに着替えるのを手伝ってくれる。
ーーーーーーーー
美しく着飾ったリリアンはブディックに到着する。お店前にやってきたリリアンは馬車酔いをしてしまい、かなりげっそりしている。
「だ、大丈夫ですか?」
「馬車って、こんなに酔うのですね…」
リリアンはまだ車で酔っていた方がマシだと感じる。ブディックに入る瞬間、リリアンは公爵令嬢として礼儀正しくする。
「いらっしゃいませ…ひぃ!!!」
中の店員はリリアンを見た瞬間、凍りつくように青ざめて店長を呼びに向かう。奥からはひどく青ざめた店長がやってくる。
「公女様!!この度は誠に申し訳ございません!!!!」
「店長さん、気にしないでください。実は私、店長様のことを忘れてしまい、どのようなドレスを注文していたのかを忘れてしまったのです。ですので新しく注文し直したいのです」
「ふぇ???」
リリアンのその態度に理解ができずに店長からはおかしな声が出てしまう。リリアンは奥のVIPルームに案内される。
「えっと、改めまして公女様、わたくしはラルジェリーを任されております責任者のファーメルと申します」
「よろしくお願いいたします。突然のことで驚かれますが、私はどうやら記憶喪失になってしまいまして…。私はこちらでいつもドレスを購入していたのでしょうか?」
「は、はい!!我が店舗は多くのお貴族様がご利用する店舗でして、一番高く豪華な物を取り揃えております」
リリアンは入ってくる時に店前には豪華なドレスを取り揃えている。しかし皇太子によって婚約破棄されることとなるリリアンにとって豪華なドレスを着ても意味が無い。今のリリアンは昔のリリアンとは別の物。高価なドレスは必要ない。
「そうですか、でしたらシンプルなドレスはありますか?今までわがままを言ってしまい申し訳ありませんでした」
「頭をお上げください!!!頭を下げなければ行けないのは私たちでございます!!公女様のドレスを別の者に売ってしまった我々が行けないのですから!!!」
「別の?」
ファーメルは失言をしたようで顔が青ざめる。だが、ここで怒ってしまうと今までのリリアンと変わらない。どうせ皇太子に売ってしまったのだから。
「えっと…!その…!!!」
「気にしないで、別の物を仕立ててくれれば済む話なので」
ファーメルはすぐに派手では無いシンプルなドレスを持ってくるように伝える。
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