スーツアクターだった俺が異世界で戦隊初めました!外伝 平安時代宝石商彼の地にて奇妙な冒険伝

桐生連

第1話 宝石商穴へ堕ちる

延暦794年 平安時代…


この世にはまだ奇妙奇天烈な出来事や物怪達が至る所で騒ぎを起こしていた事が当たり前のこの時代…

だが、まさかこの時代から異世界へ堕ちる者が居ようとは誰も思うまい。神隠しと片付けられて終わるだけだ。


峠の茶屋にて小さな葛篭を担いだ若者が団子を食し茶を啜っている。

見るからに何かの商売をしているのか商人の格好をした其の者の名は…


「藤原ノ貞春(ふじわらのさだはる)!」


「いっ!?」


名前を叫ばれ立ち上がる貞春。


「この小悪党が!!大臣様の館から良くも宝を盗んだなっ!!」


「大人しく御縄につけ!!」


検非違使と言う今で言う警察の役人達がこっちへ向かって走ってくる。


「やっべ!!」


青年は団子を咥えながら古銭を置いて荷物を乱暴に担ぎながら急いでその場を後にした。


藤原ノ貞春は宝石商を名乗る男だが、実はちんけなこそ泥であり御役者の家から宝をくすねては各地へ売り捌く小悪党だ。

顔は整ってはいるが産まれは実は貧乏で両親は彼を金借りに売って捨て、さらに彼はその日に目を盗んで売られた家から金目の宝を奪って逃走して十年と言う何とも忙し無い人生を送る青年だった。


「もう見つかったのか!!意外に早かったな!」


貞春は田圃道を走る。検非違使達はそれを追う。10人体制で確実に貞春を捕まえようとしているのだ。


10人?


貞春を追いかけているのは5人だ。


「逃がさないぞ乞食め!」


「前からかよ!!」


貞春の前方からも検非違使5人が迫って来ている。このままでは捕まってしまう。

急遽貞春は右にある長い階段に目を向けると急いで登る。合流した検非違使達10人も跡を追う。


「ひい!」


捕まったら絶対に腹を切らされる!!

貞春は身の安全の為にとひたすら階段を登る登れば降り道になる筈だ薮の中へ飛び込んでおさらばだ。

しかし、貞春がそう考えながら頂上の寺へ着くとそこには…


「げ!」


「乞食ごときが我らを出し抜けると思うなよ!」


既に8人の槍を構えた足軽を従えた検非違使達5人がそこにいたのだ。どうやら予め貞春がここへ逃げる様に誘導していたようだ。


引き返そうにも既に退路は断たれていた。


総勢24人に追い詰めらた貞春はじりじりと寺の入り口まで追い詰められる。


「さあ観念して御縄につけ小悪党が!」


「俺は小悪党じゃねぇ!宝石商人だ!」


「盗んだ宝を売り捌いて小銭を稼いでいて何が宝石商人だ。笑わせるな貴様の様な奴は世間では乞食と言うのだ!」


検非違使の若者が貞春に指を刺しそう言うと皆一斉に笑う。


「金持ちなんだから少しくらい貰ってもいいじゃないか!税金ばっかり踏んだくって買った汚い宝だろこれだって!」


「黙れ!乞食は乞食らしくゴミ溜めにすっこんでのたれ死ね!それが分相だ!!」


「黙れ!俺は絶対にそんな惨めにはならない!必ずデカい事をやってやる!」


「何をすると?」


「決まってんだろ!デカい山を当てるのさ!俺ならそれが出来る!俺は世界一宝を見つける男だからな!」


「コソ泥が口ばかり!さっさと御縄につけ!」


検非違使達が一斉に貞春に迫った時だった。


突如貞春の足元に奇妙な模様が円を描いて現れ光る。


「な、なんだ!?」


やがて魔法陣が光輝くと貞春は魔法陣の穴に引き込まれていく。


「うわぁぁぁぁ!!」


やがて貞春は一瞬で消えた。


この出来事は寺で起きた神隠しとして永遠に語り継がれたと言う。


魔法陣に引き込まれた貞春は異空間をぐるぐる回りながら何処かへ引っ張られていく。


「な、何なんだよ!!」


激しい動きで葛篭が空いてしまい中に入っていた宝石が散り散りになり異空間の彼方へ消えてしまった。


「あぁぁぁぁ!?俺の小売品がぁぁぁぁ!!」


貞春は泣き叫ぶ。


貞春は激しく異空間を彷徨いながらやがて光が見えると貞春は異空間から飛び出した。


「うわぁぁ!痛てぇ!」


貞春は勢いよく地面と顔面キッスをした。


「っつ…何処だここは?」


貞春が立ち上がるり目を開くとそこには見知らぬ人々と見なれぬ宮殿の中だ。


「な、何だここは?」


「成功しましたぞ姫様!」


姫?


貞春の目の前にキリッとした目の金髪でポニテの赤目の少女が立っている。

しかも豪華なドレスを身に纏ってだ。


「アンタ誰?」


「言葉が判るのですね」


「一様な」


大和の言葉だしな。


少女は貞春に近づくとひざまづく。


「私はジャンヌ・ガネットと申します。我々の願いに馳せ参じて頂き感謝致しますわ。勇者様!!」


ジャンヌと名乗る少女が貞春の手を取りその手の甲にキスをする。


これが始まりであり後に語られる物語の1ページである。


後の初代勇者、藤原ノ貞春と後の初代ガネット女王。ジャンヌ・フォン・ガネットとの馴れ初めであり神と崇められる宝石の獣達が世に放たれ地を駆け巡り人々と交わり勇者が生まれる馴れ初めの物語でもある。




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