羽ばたく前に
たこやき
ただ最期を思いながら
「こんにちわ」
誰だこの人。僕からの彼の第一印象はただそれだけだった。僕は空中に足を投げ出そうとしていた。そんな時に話しかけられ空に飛び出そうとした足は行き場をなくし、足は冷たいコンクリを踏む。
「誰ですかあなたは」
こんなやつ無視すればいい。そう思うのだが無視できなかった。いつも僕は中途半端だ。
「いえ散歩しながらふと空を見るとあなたがいたので興味が湧きまして柵を乗り越えて何をしてるんですか?」
正直に言うとむかついた。目の前のこの男を殴り倒したい衝動にかられた。そんな心を抑えた。
「見てわかりません?自殺しようと思ってまして」
何でこんなこと言わなければならないんだ。しかも今あったばかりの印象の悪い男に。
「あっそうでしたか。お邪魔でした?」
「ええ。ちょうど身を投げようとしていたところですよ」
「それはちょうどよかったですね。どうぞ飛び降りてください」
本当になんだこの男は。いちいち神経を逆なでしてくる。何がしたいんだ。
「でも飛び降りでいいんですか?」
「そういうことです?」
「いえ私の友達が一度飛び降りをしてまして」
「はあ」
この男は何を言ってるんだ。自殺を止めたいならもっと方法があるだろう。生きてればいいことがあるとか。何で急にこんな話を?
「まあそいつ生きてるんですけどね」
「何が言いたいんです?」
「死ぬにはもっといい方法があるって話ですよ。良ければ案内しましょうか?」
ホントに何者で何がしたいんだこいつは。話を聞く必要ないもう飛び降りよう。
「自殺未遂したそいつ下半身不随なんだけどつらいみたいですよ。足の感覚がなくなって介護が必要らしいです。やらなきゃよかったと。」
「何が言いたいんですか」
「その話を聞いて私は思いました。次自殺しようとしている人をみたら楽な自殺をお勧めしようと」
要するに楽な自殺を勧めに来たということか?なんなんだこいつは。むかつく。そう思った時にはもう声を荒げていた。
「なんですか何がしたいんですか。僕はもう生きたくないんですよ。僕のいいところなんか一つもない。両親すら出来のいい弟を溺愛して僕のほうはほとんど見てくれない。友達も彼女もいない。生きていたっていいことない。だからここで死のうと思って...あんたに何がわかる」
「何もわかりゃしませんよ。でも飛び降りは痛いらしいからやめたほうがいいよってえだけですよ」
ああもういい。こんなわけわからん奴と話してたって意味がない。もういいから飛び降りようこいつを無視して。
「もういいですよ。僕は飛び降りますから。ご忠告ありがとうございました」
そういうとにこやかに笑う意味の分からない男を無視して片足から空中に投げ出す右を出した後は左を。そして僕は体に重力を一心に感じながら地面にたたきつけられた。
結果から言うと僕はまだ生きている。
足から飛び降りたため無事だったらしい。両親は泣いていたし、何人かお見舞いに来てくれた。会いに来てくれたクラスメートは僕と話したかったが話しかけてくるなと言わんばかりのオーラを放っていたため話しかけずらかったらしい。もっと早く友達にれたら自殺を止められたかもしれないと言っていた。そして友達になろうと言ってくれた。とりあえずその場ではうなずくと彼は喜んでくれた。
そんな風に僕のために人が来てくれる。僕は幸せな気持ちに包まれた...
と言いたかったがそんなこと心からどうでもいいなと思った。次はどうやって死のう。そう思いながら明日を迎える。ただ最期を思いながら。
羽ばたく前に たこやき @TAKOYAKIasa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます