無責任な飼い主
sae
第1話
私の好きなタイプは、真面目で誠実でちょっとドジだなと思うところも可愛くて小動物なんかも大事に育てられるような人。
「猫ぉ?無理、生きもんとか死なせる自信ある」
ダルそうに怖いことを平気でこぼすこんな男を好きになるわけない。
そう思っていたのに。
「
「そ……んなことは」
「一番あかんタイプ。はじめに可哀想で手をつけたらあかんねん」
「捨てられてたら可哀想って思うの普通」
「優しぃな、でもそれ自己満足の優しさやん?捨てられた猫は案外幸せかもしれんで?そんな無責任な飼い主と暮らしてるより」
「それで死んじゃったら元も子もない」
「それはそいつの運命か寿命」
正論かもだけど、容赦がなくて聞いてて嫌になる。
「三間は優しぃなぁ。やから浮気されんねん」
言わなくていいことまで突き刺すように言うんだ。
「男見る目ないの」
「ほんまない」
(芹沢みたいな男を好きになった時点でない)
来るもの拒まず去るもの追わず、束縛嫌いで執着なし。芹沢と付き合って泣いてる子はたくさんいる、それでも好きだとまた泣く子もいる。
そんな風に女の子を夢中にさせても、芹沢は誰にも本気にならない。いつもダルそうで、適当に女の子と遊ぶから。
「芹沢は捨て猫そうに見えて無責任な飼い主の方」
「はぁ?」
飽きたら捨てる、無理と思えば平気で手放す。相手の気持ちなんか何も聞かずに。
「気まぐれに猫拾っていらなくなったら捨てる飼い主と同じ、可愛いだけで手をつけるのも罪だよ」
「それ猫の話か?」
ニヤッと笑いながら聞いてくるその顔も腹立だしい。
(猫だよ。可愛い可愛いきゃあきゃあ鳴く
私はそうなりたくないのに。
捨てられる子猫にはなりたくないのに。
「拾われた猫はおとなしく飼われてた方がええなぁ、なぁ?三間ぁ」
芹沢は私を拾ってくれた。
捨てられた私を見捨てず抱き抱えるように。
気まぐれの、飽きたら捨てられる、そんな男。
わかってたのに。
ボロボロになりかけた私はその手を振り払えなくて、差し伸ばされた手を迷わず掴んでしまった。
また捨てられる、きっと、前よりも傷つく。
わかってるのに。
芹沢なんか、好きになりたくなかった。
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