エピローグ

 お姉ちゃんとの戦いを終え、図書室の方へと戻ってきた僕。  


「何故、どうしてこうなったの?」

 

 そんな僕はガイア姐さんに向かって疑問の声を上げる……何故か、僕の正体をガイア姐さんに教えられたサーシャを見ながら。


「仕方ないでしょう?今回の件に関して納得してもらうには説明するしかなかったのよ。教えないで後始末どうするつもりだったの?」


「殺すつもりだったけど?」


「……ッ!」


「友達に向かってそんなこと言わないの。上の方針転換よ。ある程度、貴方たちの一族に関する情報を開示するつもりなの」


「なるほど。であるならいいか」

 

 僕がガイア姐さんの言葉に頷く。

 爺ちゃんたちがそのような方針を打ち出したというのであれば何も問題はない。


「ごめんね、サーシャ。驚かせて」


「だ、大丈夫、です……あ、あれだけの人生を……」


「……あまり同情されるのも嫌なんだけど。別にそこまでの話じゃないもの」


 周りから見れば悲惨的かもしれないが、別にそこまで悲劇的だったわけじゃない。

 確かに悲しかったが、所詮はそれだけ。


「はぁー、貴方の感情の希薄さはちょっと怖いの域よ。もうちょっと感情を表に出しなさいよ」


「別に仕事に必要ないし」


「……貴方のワーカーホリックをなんとかしたいわ」


「むぅ。僕だってちゃんと感情くらいあるんだよ?美味しいもの食べたら美味しいって思うし、痛かったら痛いって思うし、きれいなものを見たら感動するし、人への好き嫌いもある。他の人と同じような感情を僕はちゃんと持っているんだよ?でも、それをわざわざ表に出す必要ないじゃん?無駄じゃん?僕は何もおかしくないと思うんだよね」

 

 自身の感情を優先したって仕事じゃあまり意味はないだろう。

 感情の優先順位など最底辺に近くあるべきだろう、普通は。


「自分の感情ってそんな軽視出来るものじゃないんだよ?貴方は自身の感情を表現するのが下手すぎなのよ」


「表現の仕方も教わってないしね!」


「……ッ」


 僕がガイア姐さんと軽い雑談を交わしたところ。


「……ノーンくん」


 急にサーシャへと僕は優しく抱きつかれる。


「ん?どうしたの」


「私はノーン君のことが好きです」


「ん?ありがとう」


「貴方は決してひとりじゃないんです」


「……えっと、で、なんで僕は抱きつかれているの?捕縛?」


「人の愛情表現の一つにぎゅっと抱きしめるというものがあるのです。温かいでしょう?」


「……まぁ、うん。確かに暖かくはあるけど」


 僕はサーシャはの言葉に頷く……確かに、サーシャの体温はかなり暖かく、その熱が己の方にまで伝わっていた。


「この温かさを忘れないでほしいんです」


「……確かに、温かいね」

 

 不思議と嫌な気のしない、体の内側から熱くなってくるような温かさに、サーシャへと暫くの間、僕は体を預けるのだった。

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