墓地々々でんな
第120話 第12R最終、我々は追い詰められた・・・だが、こんな死線幾度となく、我々は切り抜けてきたのだ。我々は自分達のお金と予想を寄せ集めて立ち向かう!そう、全てを取り返すっ、総力戦だ!!
第120話 第12R最終、我々は追い詰められた・・・だが、こんな死線幾度となく、我々は切り抜けてきたのだ。我々は自分達のお金と予想を寄せ集めて立ち向かう!そう、全てを取り返すっ、総力戦だ!!
全ての闘いが終わった。
かのように見えたが、人生含めて、そう簡単ではない。
2人の妖怪が物言わぬ肉塊と変わったが、舞台上にはまだ4人の妖怪が善朗の戦いを眺めていた。そして、その4人以外にも、もう一人・・・。
「お前たちっ!何をボサッと見ておるのだっ!!あんな大技そう何度も出せるわけがないっ、今のうちに一気に畳み掛けんかっ!!!」
舞台上の4人の妖怪にそう怒鳴ったのは他でもない。アリーナの特等席から全てを見下ろしていたぬらりひょんだった。
「分かっているっ!そう慌てるなっ!!」
ぬらりひょんの怒鳴り声にそう答えたのは岩の巨躯の妖怪エンコウだった。
エンコウがぬらりひょんに怒鳴り返した隣で、鳥の妖怪イレトがエンコウに近付く。
「どうするのだ、エンコウ・・・さすがに我ら4人で掛かれば、倒せるか?」
イレトはそうエンコウに必要以上に小さな声で今後の事を尋ねた。
「チッ、あんなガキに4人がかりはシャクだが、ぬらりの旦那がお冠だっ・・・さっさと片付けるぞっ。」
エンコウはぬらりひょんから善朗に視線を移した状態で、そうイレトに答えた。
そして、エンコウは大きく息を吸い込むと、
「よく聞け、悪霊共っ!お前たちの数を見ろっ、俺達の姿を見ろっ!今、戦ってる羽虫共をよお~く見ろっ・・・でしゃばった二人が倒したのは妖怪に成り立ての出来損ないだっ・・・そして、見てみろっ・・・羽虫共は隅で縮こまって震えてるだろうがっ!でしゃばったガキ共は俺達が八つ裂きにしてやるっ・・・お前たちは羽虫共をしゃぶりつくせえええええっ!!」
エンコウは裏霊界中に響くとも錯覚させるほどの大きな声で、会場にいる全悪霊怨霊にそう知らしめる。すると、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
会場にいた悪霊怨霊達はこれ以上ない鼓舞を受けて、一気に沸き立ち沸騰した。
会場が善朗の起こした刃の津波よりも大きなウネリを起こすと、それに圧される様に悪霊怨霊達が一点を目掛けて動き出す。
もちろん、それは曹兵衛達、霊界の猛者達が方陣をひいた場所だった。
万とも言えるその群集はモノも考えない、ただただ感情に任せた突撃をその場に放つ。
「ふっふっふっふっ、ゴミ共もこうすれば多少は使える。」
エンコウは自分が扇動した群衆を見ながら、そうせせら笑う。
「おい、エンコウ・・・手練れの一人はともかく、もう一人の方には誰が行くんだ?」
エンコウの笑顔に水を差すように、そう話したのは木の妖怪カイジュ。
「くっくっくっくっ・・・なぁ~に、心配することはない・・・俺達が動けば、ああいうやつは自然と動く。」
エンコウはカイジュの問いに、この後に起こる事を察するかのように、そう答えた。
エンコウはチラリと賢太の方に視線を送る。
「行くぞっ!」
賢太の方に行くのかと思いきや、エンコウは視線をサッと善朗の方に戻して、善朗の方へと動き出した。その時だった。
〔ドンッ!!!〕
エンコウの横顔を殴り倒さんばかりに一閃が放たれた。しかし、エンコウはそれを予期していたかのように左手一本で軽々とそれを受け止める。そのエンコウが受け止めた相手の右拳の先に居たのは、そう賢太その人だった。
賢太はギラギラした眼光をエンコウに向けて、裂けんばかりに口角を上げ、エンコウを射抜く。
「おっさん、俺だけ仲間外れにすんなやっ・・・おっさんぐらい俺と遊ぼうやぁ~・・・。」
賢太は相手を見定めて、喰らいつくと宣言するかのように、そうエンコウに迫る。
「バカがっ・・・お前の思考など、猪のようだぞっ。」
エンコウはそういうと賢太の右拳を握りこんだ自分の左手に力を込める。
〔ビュンッ!〕
賢太はエンコウが自分の右拳を握り潰さんと左手に力を入れた瞬間に、右拳を回転させて、エンコウの左手首を掴む。そして、そこを支点に右足をエンコウへと導いた。しかし、その攻撃もエンコウの想定内なのか、自分の左手首を掴んでいた賢太の右手を強引に外して、上体を沈めてかわす。
舞台上から我先にと、善朗に向けて抜け出したのは鳥の妖怪イレトだった。
「ケケケケケケッ!」
イレトは鋭い自分の右足のカギツメを善朗に向けて、突き出しながら距離を詰める。
先鋒として、善朗に突っ込んだイレトの背後にもう一つの影あり、
「シャハアアアアアアアアッ!」
イレトを壁にして、その後ろから迫ったのは水の妖怪ロオフ。全身が水のロオフはその軟体を存分に活かして、イレトにまとわりつき、善朗が射程に入ると、イレトの影から襲い掛かる。
善朗を攻め立てた二人の妖怪から距離を取るものあり、
「ヒャハアアアアアアアアッ!!!」
少し距離を取って、善朗を攻撃してきたのは木の妖怪カイジュ。カイジュはある程度距離を詰めるとそこで立ち止まり、地中を使って先回りさせていた自身の木の根を善朗の後方から襲い掛からせて、裏をかく。
そんな三位一体ともいえる、妖怪らしからぬチームプレイが善朗を襲う。
しかし、そんな危機迫る状況の中も、
「・・・・・・。」
善朗は黙ったまま、相手を視界に収めて、左手で大前を納める鞘を持ち、大前の柄に右手をソッと添えているだけだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
雪崩を打って、曹兵衛達に迫ってくる悪霊共の雄叫びが、その場に居た全員の鼓膜を破らんとまずは襲い掛かってくる。しかし、それをけん制するものあり、
〔シャンッ!〕
雪崩津波となって、襲いかかってこようとする悪霊達の目前に突然無数の糸が広がり、大きな網目で出来たドームを作り出した。そんな芸当ができるのは、もちろん曹兵衛以外には居ない。
曹兵衛は相手の出方を自分の思い通りに操作しようと、まずは糸で悪霊達をけん制したのだ。
「みなさんっ!絶対に一人で戦ってはいけませんっ・・・5人一組で背中を守りあいながら、その輪を全体に広げて下さいっ・・・必ず帰れますっ!一緒に帰りましょうっ!!」
曹兵衛は続いて、圧倒的劣勢に置かれた仲間達の背中を押す様にそう大きな声で指示を出す。
「おうっ!!!!!!」
その場に居るのは霊界の猛者。猛者達は、これまでいくつもの死線を越えてきた
しかし、誰もが心の奥底、頭の片隅で感じざるを得なかった。
圧倒的物量による蹂躙。
逃れる事の出来ない絶望。
だが、その場に居る全員の心はたった一つだった。
自分が死すとも、一人でも多くの者が家族の元へ帰れる様に・・・。
そんな思いが神に届くかのようにその場に居た献身的な者達へと光が注ぐ。
「エイッ!」
方陣の一番奥に控えていた乃華が気合を入れると同時に印を結ぶと、乃華を中心に光がその場を大きく包み込んだ。
「ナッ?!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!」
「アチャアアアアアアアアアアアッ!!!」
乃華が放ったその光に触れた曹兵衛の糸の結界をくぐり抜けてきた悪霊の一部が突然悲鳴を上げたかと思うと、のた打ち回る。
ある者は触れただけで滅消され、
ある者は全身を焼かれるような激痛に襲われ、その場に倒れこみ転げ回る。
なんともないようにみえた者も、その光の中では虚脱感にサイなまされた。
乃華が起こした現象に悪霊達は勢いを削がれて、乃華に視線が釘付けになる。そして、曹兵衛達も例外ではなかった。
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