第109話 帝都のギルドマスター

帝都に着いて、ギルドに入るとそこはよく見る光景が広がっていた。


「なんかギルドに来ると落ち着くな。」


「あっそれアタシも思ったにゃ。」


カインとラックがそう思ったのも無理もないだろう。ギルドに入ると、正面には壁一面に貼られた依頼書があり、その前には依頼を吟味する冒険者達。そして左側には綺麗な受付嬢が並ぶ受付とニヤニヤしながら話をする冒険者達。右側には酒場がありワイワイ叫ぶ冒険者達。いつもの見慣れた光景だったからだ。


「これが落ち着くんですか?うるさいだけに見えますけど・・・」


ジェーンがむさ苦しい大勢の男のワイワイガヤガヤ騒がしい集団を前に当然の事を口にした。


「どこのギルドもこんな感じだったからな。あ~ギルドはやっぱり変わらないなって思ってな。とりあえずギルドマスターに会いに行けばいいんだろ?ジェーンの名前を出せば向こうもわかるのか?」


「はい。そうだと思います。」


カイン達は、賑やかなギルド内を歩きジェーンの名前を出してギルドマスターが来るのを待った。そして・・・


「「「「!?」」」」


「バニーがどうしてここにいるにゃ?」


カイン達の目の前に現れたのは、王都のギルドマスターのバニーだった。


「バニーさん?」


「貴方達が姉さんが言ってた子達ね。間違うのも無理はないわ。私はバニー姉さんの妹のモリーよ。よろしくね。とりあえず立ち話も何だし座って話をしましょ。」


(バニーさんの妹・・・いやいや似すぎだろ。双子かってぐらい一緒だぞ?それに王都のギルドマスターと帝都のギルドマスターが姉妹って普通に大丈夫なのか?ギルドの権力集中しすぎじゃね?)


カイン達の前に現れたのは、王都のギルドマスターであるバニーと瓜二つのモリーという女だった。見た目しゃべり方ともにバニーとそっくりで、二人が並べばどちらがどっちかわからないだろうとカイン達は思っていた。


「さて、まずは長旅ご苦労様。姉さんから状況は聞いてるわ。一応学校にはアルプス王国の王女様が留学する事で話を付けてるわ。寮も手配済みだし、家も借りてるから安心してね。あっこれがカギね。」


「話し方から声までバニーと全く一緒にゃ?本当に妹にゃ?バニーにしか見えないにゃ。」


「あまり一緒にいる事がないからよくわからないけど、知ってる人はたしかに姉妹じゃなくて双子でしょ。とはよく言われるわね。」


「モリーさん。諸々の手配ありがとうございます。」


「気にしなくていいわ。王国が混乱するとギルドも困るしね。それに私と姉さんは、貴方の母親にとてもお世話になったの。ジョゼフィーヌの事はとても残念だったわ。だけど安心して。ここまで王国の手は伸びてこない。しっかり勉強するといいわ。護衛も姉さん期待の冒険者らしいしね。」


「俺達の事も聞いてるんですか?」


(バニーさん・・・どこまで俺達の事を話してるんだ?能力の事とかも話してるのか?いや・・・信用できるならそれはそれでありがたいか。こっちで協力してくれる人がいるのは、俺としても助かる。)


「気にかけてるって事ぐらいね。まあ姉さんが気に掛けるってよっぽどの事だから何かあるんだろうけどね。」


「アタシとカインは一流の冒険者にゃ。こっちでバンバン依頼も受けるから期待するにゃ。」


「うんうん。カイン君とラックちゃんもよろしくね。」


「その反応・・・バニーと全く一緒にゃ。」


「ああ。」


帝都のギルドでギルドマスターのモリーから家の鍵を預かったカイン達は、その後しばらく雑談をしながら帝都の事を教えてもらい、借りている家に向かった。


「大きな家にゃ。」


帝都の中心からは少し離れるが、学校に行くにもギルドに行くにも不便にならない距離にその家はあった。それを見たカインは、ラックと同じように大きい。と思った。王都で借りていた家よりも少しだけ大きな家で、十分な庭も家の前に広がっていた。帝都で生活するには十分すぎる家を手に入れたのだった。


「さっそく家の中を見てみるにゃ。気になるのはお風呂とベッドにゃ。」


鍵を開けると、ラックは走って家の中に入って行った。


「ラックはいつも元気ですね。」


「ああ。でもまああれがラックだからな。俺としては助かってるよ。」


「本当にそうですね。ラックがいるだけで明るくなりますもんね。」


「ああ。」


「私達も家の中を見てみましょうか?王都の家から持ってきたモノも設置しないといけませんし。」


「そうだな。これだけ広かったら持ってきた荷物は全部置けそうだ。それに必要なモノは買い出しに行かないとな。ジェーン達は明日から早速学校だろ?」


「ええ。寮の方も見てみないといけないから、色々と忙しいと思うわ。」


「俺で良ければ持ち運びなんかも手伝うから言ってくれよ。」


「それは助かるわ。カインのアイテムボックスがあれば少しは楽できそうね。」


カインは、ジェーンとメアリーにアイテムボックスの事を伝えていた。王都の家の中にあったものは、今は全てカインのアイテムボックスの中に入っている。それ程容量のあるアイテムボックスは見た事も聞いた事もないらしく、ジェーンとメアリーはとても驚いていた。


「カイン、ジェーン、メアリー!早く来るにゃ。この家のお風呂すっごく大きいにゃ!」


こうして、無事に帝国に着いたカイン達の帝都での生活が始まるのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る