第94話 亀一郎の黒亀ダンジョン

「ふ~やっと解放されたな。」


「バニーもしつこいにゃ。」


新しく借りた家について根掘り葉掘り聞かれたカイン達は、ギルドを出て黒亀ダンジョンへと向かっていた。


「ギルドで大分時間を取られたな。今日は日帰りの予定にしてたけど、ダンジョン内で泊まるか?食料なんかはアイテムボックスに入ってるし。」


「わかったにゃ。アタシは大丈夫にゃ。この四日間は必死に稼ぐにゃ。どうせ買うなら大きなベッドが欲しいにゃ。」


「なるほど。たしかにな。そうだな~。稼いだお金の半分は家に使うか。残り半分は神様へ寄付するのでどうだ?」


「それは名案にゃ。ちなみに次の神の開放に必要な金額はいくらにゃ?」


「金貨170枚ぐらいだな。ブラックダイヤは金貨10枚からって言ってたから、30個ぐらい取れればいけるかな。」


(四日間で1個か2個しか見つからないブラックダイヤモンドを30個か・・・実際にダンジョンに行ってみないとわからないけど、普通に考えれば無謀も良い所だよな。)


そんな事を話しながら進んで行くと、目の前に大きな亀が姿を現した。


「甲羅が真っ黒にゃ。あれが黒亀ダンジョンにゃ?」


「ああ。やっぱ甲羅の色でダンジョンがわかるのはわかりやすいよな。それに・・・甲羅を掃除してる人がいるのもよくある光景だな。」


カインは目の前に見える大きな亀を鑑定した。


名前:ジョン・亀一郎

この世界にダンッとそびえ立つ巨大なジョン・亀一郎は、中に入ると別の空間へと飛ばされる。そこは、魔物が現れ、宝箱という名の素敵アイテムが入ってる箱が現れるアトラクション施設。ジョン・亀一郎は、その名の通り長男だ。皆が略してダンジョンと呼ぶこの亀の経済効果はとてつもない。これは内緒だが、甲羅を掃除してもドロップ率は上がらない。しかし、綺麗好きなジョン兄弟はその事を誰にも伝えない。


(説明はだいたい他のダンジョンと一緒だな。ブラックダイヤモンドの事もわかるかと思ったけど、さすがにそれは出てこないか・・・まあそれはダンジョンに入ればわかるか。)


カインとラックの二人は、黒亀ダンジョンを眺めて、そして中へと入った。


「ダンジョンの中は他と一緒にゃ。」


「ああ。まずは下に行く階段を探すか。それとブラックダイヤモンドがある場所は壁が光ってるってバニーさんが言ってたから壁は注意して見てくれ。」


「わかったにゃ。」


(ダンジョンに来るのも久しぶりだな。緑亀ダンジョンに青亀ダンジョンときて黒亀ダンジョンか~。身代わりの指輪を手に入れる為には、いつかは来ると思ってた場所だ。今回は攻略はしないけど、どんな感じか見ておくのは今後の参考になる。それにブラックダイヤで稼ぐ事が出来れば、寄付も生活も安定する。気合入れないと。)


黒亀ダンジョンに入り、地下2階を探してダンジョンを進むカインとラック。いまだ攻略されていないダンジョンといえど、地下1階に出る魔物はスライムやスモールラビットなどの弱い魔物ばかりなので、ストレスなくドンドンダンジョン内を進んで行く。


すると・・・


「カイン。あれを見るにゃ。壁が光ってるにゃ。」


ラックの指さした方を見ると、ダンジョンの壁がうっすらと光っていた。


「たしかに光ってるな。これがバニーさんの言ってたブラックダイヤがあるかもしれない場所か。」


「カイン。早く錬金術でブラックダイヤを取り出すにゃ。」


「待て待て。今からするから落ち着けって。」


カインは、光る壁に手を当てて錬金術を使った。すると・・・


「何も出てこないにゃ。」


「え~っと・・・ブラックダイヤが分からないから分離が使えなかった・・・黒いダイヤをイメージしてみたんだけど無理みたいだ。一度現物を見れば、それを分離で取り出す事はできると思うんだけど・・・」


「どういう事にゃ?」


「俺の錬金術って素材を分離するんだけど、何を分離するのかわかってないと、ちゃんと発動しないんだ。たとえばこの壁がどういう素材でできてるのか何種類の素材がこの壁にはあるのか?俺が分離で取り出せるのは、わかってる素材だけなんだ。例えば・・・」


カインは、再度壁に手を当てて錬金術を発動した。すると、壁からビー玉程の鉄の塊が現れた。


「今のは分離で鉄を取り出したんだ。この壁には鉄が含まれてたから取り出せたって感じだな。」


「という事はどういう事にゃ?」


「一度自力でブラックダイヤを見つけないと錬金術は使えないって事だな・・・」


「まじかにゃーー!!」


「ゴメン。そこまで深く考えてなかった。」


(こんな事ならギルドでバニーさんに実物を見せてもらうんだったな。今ならまだ地下1階だしギルドに戻る事もできるけど・・・)


「一度ギルドに戻るか?バニーさんならブラックダイヤを見せてくれると思うけど?」


「しょうがないにゃ。頑張って壁を掘るにゃ。ツルハシも持ってきたし丁度良いにゃ。一つ見つけるまでは自力でがんばるにゃ。」


ラックはそう言うと、自前のマジックバッグからツルハシを取り出した。


「カインも一緒に掘るにゃ。」


「うん。」


カインもアイテムボックスからツルハシを取り出し、ラックの横に並んで壁を掘っていく。


ブラックダイヤを求めて、カインとラックはその後、1時間みっちりとダンジョンの壁を掘り続けるのだった。







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