第86話 世話焼きのアルバス

王都のギルドに入るとアルバスという名の冒険者に声を掛けられたカインとラックだったが、「子供は家帰って母ちゃんのおっぱいでも吸ってな」みたいなテンプレイベントは起きずに、ただ普通に世話好きのおっさんだった。親しみもこめておっちゃんと呼ぶことにしたカインとラックは、併設している酒場でアルバスと話しをしていた。


「なるほどな。まあカインとラックの言うようにここなら他の場所以上に稼げるだろう。ダンジョン、魔物の討伐に護衛依頼、採取依頼に学生の家庭教師なんて依頼まであるからな。」


「やっぱりダンジョンがあるにゃ。カインダンジョンは絶対行くにゃ。」


「そう焦るなよラック。アルバスさんに今の内に色々聞いておこうぜ。」


「たしかにそうにゃ。おっちゃんはダンジョンを攻略してるのかにゃ?」


「いや俺はダンジョンは攻略してねぇな。俺は基本的にソロでやってるんだ。まあ臨時でパーティを組む事は多いが大抵はダンジョンに行っても途中で帰る事が多いな。」


「ダンジョンの難易度が高いんですか?」


「まあそれもあるが、俺は斥候なんだ。罠とかマッピングとかは得意だが、戦闘はあんまりなんだ。だからまあ呼ばれればパーティを組むが、あまり深いところまではいかねぇな。行っても地下40階までだな。」


「ここのダンジョンの最下層は地下40階よりも下なんですか?」


「アタシ達はシフォンで青亀ダンジョンを攻略してきたにゃ。そこは地下40階までにしかなかったにゃ。」


「お前達青亀ダンジョンを攻略したのか・・・そりゃすげぇな。それならCランクっていうのも納得だな。ラック、王都には2種類のダンジョンがある。一つは黒亀ダンジョン。ここは最下層は地下100階だと言われているが、いまだ攻略した者がいないから本当に100階まであるのかはわかったねぇ。もう一つが黄亀ダンジョンだ。こっちは地下50階まである。」


(やっぱり王都に黄亀ダンジョンはあったか・・・亀三郎だったっけ?たしかスラ林太郎っていうのがエクストラステージで出てくるってスケ美さんが言ってたよな。基本はスライムメインのダンジョンなんだろうか?それに黒亀か・・・亀一郎ダンジョンだな・・・すぐには無理だけど、身代わりの指輪を手に入れる為にはその内攻略したいダンジョンだ。)


「二つもあるにゃ!?すごいにゃ。カイン。一度行ってみたいにゃ。」


「そうだな。王都にはしばらくいるつもりだから、機会を見て一度行ってみよう。」


「良ければ俺が案内してもいいぞ。」


「おっちゃん太っ腹にゃ。料理も奢ってくれてダンジョンも案内してくれるなんて。」


(たしかにアルバスさんの提案はありがたいな。王都のダンジョンは青亀ダンジョンと違って罠が見えづらいだろうから、アルバスさんのような斥候職はきっと人気なんだろう。俺の場合鑑定で罠を見つけれるかもしれないけど、常時発動するのは疲れる。見分け方みたいなのを教えてもらえればピンポイントで鑑定はできるから助かるかもな。)


「俺も暇じゃないからいつでもって訳じゃないけどな。」


「それでも助かるにゃ。」


そうして、カインとラックがアルバスと王都の事を色々聞いていると・・・


「おいおいアルバスよ~。ついに子守まで始めたのか?」


そう言って、薄気味悪い笑顔を浮かべた男達がカイン達に近づいて来た。


「ルマンド・・・」


「何にゃ?おっちゃんは今、アタシ達と話してるにゃ。邪魔するにゃらどっか行けにゃ。」


「そうですね。アルバスさんは俺達に王都の事をやさしく教えてくれてるんです。貴方方はお呼びじゃないですよ。」


(なんだこいつ等?アルバスさんを軽蔑するような目で見て。俺達に親切にしてくれてるのになんかむかつくなぁ。)


「ああん。威勢の良いのはけっこうだが、お前達に冒険者は早すぎだぜ。家帰って母ちゃんのおっぱいでも飲んでろよ。」


ルマンドはそう言うと、一緒に来ていた男2人が笑い出した。


「やめろルマンド!」


「アルバスもアルバスだぜ。そんなガキにかまってるからいつまでたってもCランクのままなんだ。俺達のパーティに入ればすぐにでもBランクになれるっていうのによ。」


「その話は断ったはずだ。」


「お前に断る権利なんかねぇだろ!」


ルマンドは酔ってるのか、アルバスの言葉に切れて、持っていた酒をアルバスにぶっかけた。


「何するにゃ!」


(結局異世界テンプレは発動するのか・・・ルマンドとか言ったか?鑑定してみると、たしかにアルバスさんよりかは強いかもしれないけど、俺とラックなら問題なく対応できるな。ならここはアルバスさんの為、やるしかないっしょ。)


「やめてください。どういった理由があるのか知りませんが、俺達の邪魔しないでください。大人しく引かないなら痛い目見るのは貴方方ですよ?」


「何!このガキ調子乗ってんじゃねけぞ。」


ルマンドはカインに殴りかかる。だが、カインはそんなルマンドの拳をよけて、逆にルマンドの頭にチョップをかました。


「これ以上暴れるなら相手になりますけどいいんですか?恥かくは貴方ですよ?いやもうかいてるか。」


「このガキー!」


ルマンドが顔を真っ赤にしてカインに再度殴りかかろうとした時、


「こらっ!!ギルド内で何してるの!!」


大きな声がギルド中に響いた。そしてギルド中がその声にし~んとなった後に酒場内に先ほど大声を出した女性が歩いてきた。


「「えっ!?」」


歩いてきた人物を見てカインとラックは驚いた。なぜなら、歩いてきたのは、オルスタインのギルドでお世話になったオルスタインギルドのギルドマスター、バニーだったからだ。

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