第40話 ギルドのバニーの正体とは

目が覚めてから3日経ち、カインの調子は元通りになった。


「ようやく元気になったにゃ。カインが動けないから毎日毎日退屈だったにゃ。」


「ごめんごめん。ようやく調子も戻ったから今日から活動再開できそうだ。」


「じゃあバニーの所に報告に行くにゃ。」


「ああ。ダンジョンの魔石も売却しないといけないしな。バニーさんにはアイテムボックスの事も話さないとな。」


「たしかにそうにゃ。もしかしたら気づいてるかもしれにゃいけど、バニーにはカインから言った方がいいにゃ。」


「だよな。」


(とりあえずダンジョンの完全攻略はしたんだ。予定通り冒険者ランクをCにあげてもらうのが一つ。魔石を売って、帰還玉代の100万ガルをギルドに払うのが一つ。多分魔石を売ったお金は100万以上にはなるだろうから、残ったお金を寄付して新しい神の奇跡を開放するのが一つだな。)


そして準備をしたカインとラックはギルドへと向かった。


「バニーさん。お久しぶりです。体調が良くなったのでダンジョンの事報告に来ました。」


「お久しぶりです。カインさん。お待ちしてましたよ。他の人に聞かれちゃまずい話もあると思いますので個室で聞きますね。」


バニーさんの提案で、個室に移動する事になったカインとラック。案内された個室は大事な事を話すような豪華な個室だった。


「こんな豪華な個室じゃなくてもよかったんですが。」


「いいえ。今回のダンジョンの事はとても重要です。今後同じような事があれば死者が出るかもしれません。冒険者を守るのがギルドの役目ですから。」


(普通、こんな大事な話ってギルドマスターとかが出てくるんじゃないのか?ハゲでマッチョの厳つい男っていうのがギルドマスターのイメージなんだけど・・・)


「わかりました。でも話を聞くのはバニーさんだけでいいんですか?その上司の方とかはいなくて大丈夫なんですか?」


「あら?言ってなかったかしらこのオルスタインの街のギルドのギルドマスターは私よ。私が一番上なのよ。だから私が話しを聞いていれば問題ないわ。」


「えっ!?」


(はっ?今なんて言った?バニーさんがギルドマスター?マジで!?いやいや普通に受付にいたじゃん。)


「ふふふ。驚いてるわね。私が受付してたからわからなかった?受付が一番冒険者の事がわかるからね。何事も現場が一番よ。だから私も時々受付にいるのよ。」


(まじか!?でも時々って俺がギルドに行った時はだいたい受付にいるぞ?どういう事だ?)


「驚きました。そうなんですね。わかりました。それじゃあダンジョンの事を話します。」


それからカインは、地下30階でグリーンタートルゴブリン3体が出てきたこと。魔法を使って甲羅を脱ぐ前に3体を倒した事。甲羅を脱ぐ前に3体を倒すとワープゾーンが現れずに、エクストラステージになって、強制的に能力ランクAのゴブリンと戦闘になる事。エクストラステージの魔物は、魔法も剣も全く効かなくて魔力を全て出し切った魔法で相打ちだった事。そこで気絶してラックが帰還玉を使用した事を伝えた。


「なるほどね。やっぱりカイン君はすごいわね。あそこのゴブリンは連携を取ってくるからなかなか3体同時に倒すのは難しいのよ。しかも同時に相手しようとすると3体とも甲羅を脱いで強くなるし・・・。やっぱり私の目に狂いはなかったわね。」


「どういう事ですか?」


「カイン君は異空間収納のスキルを持ってるでしょ?それにラックちゃん。しゃべる黒猫は多分使い魔ね。あと魔法も多属性に適正がある。どう間違ってないでしょ?」


(やっぱりバニーさんは色々知ってたんだな。目を付けられてたって事か・・・)


「はい・・・」


「ふふふ。別に監視してた訳じゃないのよ。カイン君の神の祝福はアルファベット。神の奇跡をアルファベットの数だけ受けられるっていうモノでしょ。アルファベットの数っていうのがよくわからなかったから無能って呼ばれてたけど、私はそうは思わなかったわ。いつかきっとカイン君は有名になる。そう思ってずっと見てたの。元々あなたの両親とも仲がよかったしね。」


「父さんと母さんを知ってるんですか?」


「ええ友人よ。カイン君がギルドに登録に来た時は驚いたわ。周りから無能って呼ばれても毎日毎日ちゃんと依頼を受けに来て一人で生活してる。私が助けてもよかったんだけど、そうした所でなんの解決にもならないからね。ちゃんと努力して、今では周りの冒険者にも認められてる。さすがカイン君ね。だから約束通り、冒険者ランクもCに昇格してあげるわ。」


(そうか・・・俺は一人で生きてきたと思ってたけど、見守られてたんだな。)


「ありがとうございます。俺、冒険者ランクがCに上がったらこの街を出て世界を見てみようと思ってたんです。色んな世界を見て楽しく生きていければと思ってます。」


「冒険者はどこに行くのも自由よ。貴方が楽しく生きていれば死んだ両親もきっと喜ぶわ。カイン君ならきっとやっていけるわ。がんばって。」


その後、ダンジョンの情報の件と、魔石の売却でカインは金貨170枚を手に入れた。その内100枚は、予定通りギルドへ帰還玉の代金としてバニーに渡した。バニーは、いらないと言ったが、そういう訳にもいかなかったので押し付けた。


旅立つ前に挨拶する事を約束し、カインはギルドを出てメインイベントの教会へと向かうのだった。




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