第34話 さあダンジョンを攻略しよう

新しい神の奇跡を開放させた翌日、カイン達はギルドへと来ていた。


「本当にダンジョンを完全攻略しに行くんですか?」


「はい。バニーさんは言ってくれましたよね。あのダンジョンを完全攻略できればCランクに昇格できるって。」


「それは言ったけど・・・」


カインがいつもいっている緑亀のダンジョンを完全攻略する場合、Cランク冒険者が4人から5人が必要だ。Cランク冒険者の平均の能力値はC~Dだ。カインの今の実力はBに近いCなので、実際はBランク冒険者ぐらいの実力がある。だが、カインはまだ12歳の子供だ。カインが15歳を超えて成人していたなら、すでに冒険者ランクはCになっていただろう。


カインが未だにDランク冒険者なのは、ギルドの配慮があった。子供がCランク冒険者になれば実力を疑う者や不正を疑う者が出てくるし、変に絡まれる事もあるだろう。それを危惧してギルドはカインの冒険者ランクを上げていなかったのだ。


バニーは、カインに緑亀のダンジョンをソロで完全攻略するほどの力があるならCランクに昇格させてもいいわよ。とカインに伝えていた。だがバニーは、そんな事は絶対不可能だと思って言っていたのだが・・・。


「俺はその為に、地道に力を磨いてきた。バニーさんも知ってると思うけど、もう昔の無能のカインじゃない。剣も魔法も使える。きっと大丈夫だよ。」


「・・・は~。わかったわ。だけど無理はしちゃダメよ。前も言ったけど命は一つしかないの。死んだら終わりなんだからね。ラックちゃん。カインが無茶しそうな時は噛みついてでも止めてね。」


「にゃー。」


バニーの言葉にラックが返事する。


「あっそうだ!ちょっと待っててねカイン君。」


バニーは、何かを思い出したのか、受付から離れていった。そうしてしばらくすると、手に野球ボールぐらいの玉を持って戻ってきた。


「おまたせ。カイン君。ダンジョンに行くならこれを持って行って。」


「これは?」


「帰還玉と呼ばれるマジックアイテムよ。これを使えばダンジョンから瞬時に地上まで戻れるわ。」


(帰還アイテムだ。そんなモノがあるんだな。初めて知った。これがあればダンジョン攻略がかなり安全になるな。だけど、何で今までそんなすごいアイテムの存在に気付かなかったんだ。他の冒険者だって知ってるはずなのに。)


「色々考えてるみたいだけど、この帰還玉はダンジョンからごくまれにドロップするレアアイテムなの。普通に買おうとすれば金貨100枚はくだらないわ。」


「金貨100枚!?」


「ええ。だけどそれ程の価値があるのよ。カイン君ならわかるでしょ。」


「はい。」


(まじか・・・たしかにこれはレアアイテムだ。もし売ってるのを知ってたら無理してでも買ったはずだ。それだけの価値がある。でも帰還玉なんて見た事もないぞ?市場には出回ってないのか?俺なら・・・。そうか。俺ならダンジョンでドロップしたとしたら金貨100枚でも売らない。ダンジョンでの安全度が格段に上がるんだ。自分に持っておくな。なるほど。そういう事か。でもそんな高価なモノさすがに・・・)


「カイン君にはこれを持って行ってほしいの。カイン君の顔を見ればどう思ってるかわかるわ。だけど、カイン君は完全攻略を目指してるんでしょ。ならこれは貸すだけよ。完全攻略して帰ってきたら返して頂戴。それなら簡単でしょ。」


「バニーさん・・・」


(なるほど。さすがバニーさん。これなら断れないな。それに、使う事がないように立ち回ればいいんだ。俺ならできるはずだ。)


「わかりました。必ず完全攻略して戻ってきます。帰還玉ありがとうございます。」


(まあ完全攻略しに行くって言っても地下20階のボスを倒せば地上にも戻れる。攻略するまでここに帰ってこないって訳じゃないんだ。バニーさんには、都度報告をしながら情報も提供してもらおう。)


ギルドで、緑亀ダンジョンを攻略する事を伝えたカインは、ダンジョンから一瞬で戻る事ができる帰還玉を受付嬢のバニーから預かった。そしてそのまま、ダンジョンへと向かった。


(そういやこの帰還玉があれば、昨日開放した神の奇跡Iの『天空の城ラ君』の魔法も最悪使えるかもしれないな。気絶したらラックにこのアイテムを使ってもらえば、ダンジョンから脱出できるかも。できれば使いたくはないが、もしもの時は、金貨100枚借金してでも使おう。金は後からいくらでも稼げるけど、死んでしまっちゃ元も子もないもんな。それにダンジョンからドロップか・・・。2年ぐらいダンジョンに通ってるけど見た事ないし、ドロップするのはかなり珍しいって事だろうな。)


「良いモノもらったにゃ。これでダンジョンでも安心にゃ。」


「そうは言うけど、金貨100枚だぞ。気軽に使えないだろ。」


「カインなら金貨100枚ぐらいすぐに稼げるにゃ。安全には変えられないにゃ。」


「まあそりゃそうだけど・・・」


(とりあえず、いつでも使えるように金貨100枚は貯金しておくか。魔法書と寄付に使わなかったからたしかに金貨100枚なら1カ月もダンジョンに行けば貯めれる。それかダンジョンドロップを狙うか。1個は持っておきたいもんな。)


「とりあえず地下20階のボスを倒すぞ。地下15階までは行った事あるけど、それ以降はまだ行った事ないんだ。集中するぞ。」


「アタシとカインなら余裕にゃ。よし行くにゃ。」


カインとラックはいつもの緑の亀の元へ向かうのだった。



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