せっかく森へ行ったのに、魔物を1体も倒さずに帰ってきたカインは翌日、昨日の事を相談する為、朝からギルドに来ていた。

「バニーさん。ちょっと森に出てくる魔物について教えてほしいんですけどいいですか？」

「カイン君。森に行ったんですか？冒険者ランクもDになったし、草原を卒業したんですね。」

「はい。昨日ちょっと森を下見に行ったんですけど、草原と比べてかなり多くの魔物がいますよね？ゴブリンなんかは複数で行動してるのを見たんですけど、皆さんどうやって討伐してるんですか？」

「そうですね。基本的にDランクになった冒険者ならゴブリンは倒せると思います。それなりの防具を身に着けてるでしょうから攻撃を受けてもそれなりに戦えます。ですがカイン君の言うように魔物が複数いれば話は別です。だいたいは4人から5人でパーティを組んでる冒険者が多いので、隊列を組んで対処するのが普通ですね。」

「やっぱりソロなら難しいですか？」

「カイン君は魔法も使えるじゃないですか。遠くから魔法を使えばゴブリンクラスなら一撃で倒せると思いますよ。あっでもカイン君は火属性の適正でしたね。森はちょっと相性が悪いかもしれませんね。」

その後、バニーに色々アドバイスをもらった。

「ありがとうございます。ちょっと考えてみます。」

（とりあえずゴブリンは単体でも行動しているってわかっただけでも収穫だな。あと、ゴブリンは初級魔法で一撃っていうのも知る事ができた。距離を取れば3体でも魔法で対処できそうだな。回復ポーションは準備したんだ。勇気を出して挑むしかないよな。）

ギルドを後にしたカインは、森へとリベンジに向かった。

（ゴブリンを倒す為には、レベルを上げるか、神の奇跡でチートをもらう必要がある。レベルを上げる為には魔物を倒さないといけないし、神の奇跡を開放する為にはお金を稼がないといけないからやっぱり魔物を倒さないといけない。堂々巡りだな。なんにしても能力はDになったんだ。バニーさんも言ってたじゃないか。普通に倒せるって自信を持てカイン。俺はやればできる子って親にも言われただろ。）

森へ入ったカインは、昨日と同じように森の中を歩いて行く。すると早速ゴブリンを発見した。

「2体のゴブリンか・・・ふー、やるしかないな。もうちょっと距離を取るか。そういえば魔法の射程距離は調べてなかったな。あまり遠すぎるときっと途中で消えちゃうよな。あ～どれぐらいの距離まで使えるのか試しておけばよかった。いや今更そんな事いっても遅い。ゴブリンにウインドボールを使う。使ったらすぐに連発だ。ゴブリンにあたったかどうかを確認してたら遅いかもしれない。とりあえず、ウインドボール、ウインドボール、ウインドボールだ。よし！」

両手で頬をパチンと叩いて気合を入れたカインはウインドボールの詠唱をした。

「自由に流れる風よ。我の元へ集え。そして目の前の敵を切り裂け。ウインドボール。」

狙いは片方のゴブリン。カインは手のひらをゴブリンに向けて、ウインドボールの魔法を使った。

「確認は後だ。もういっちょ行くぞ。」

連続で同じ詠唱をして、ウインドボールを発動するカイン。対象はもう1体のゴブリンだ。先ほど放ったウインドボールがゴブリンに命中し、グギャっと声が聞こえるが関係ない。すかさず2発目のウインドボールを放つ。

「これでどうだ！！」

カインの放った魔法は2発ともゴブリンに命中した。距離が遠いので死んだかどうかわからないカインは、しばらく魔法を使う体制のまま、ゴブリンを見続けた。

（やったか？こっちに向かって来ないって事は倒したって事だよな？討伐証明の耳を取りに行って大丈夫だよな？いやもう少し様子を見るか。魔法を使ったから他の魔物が近づいてくるかもしれない。）

ゴブリンを倒したのに、慎重に慎重を重ねその場から動かないカイン。ゴブリンを倒した後も5分程その場、魔法を放つ体制のままゴブリンを見続けた。

「ふ～。大丈夫みたいだ。魔物が寄ってくる感じはないな。ゴブリンを確認しに行くか。」

ゴブリンの元まで行き、死んでいる事を確認すると、討伐証明の耳を切り取った。

「耳を切り取るの気持ち悪いな。ホーンラビットを解体する時は何とも思わなかったけど、人型の魔物はやっぱりちょっとやりづらいな。戦いなんて無縁の場所にいたから当たり前なんだろうけど、慣れるのは時間がかかるかもな。そういえば、耳を切り取ったゴブリンってこのまま放置でいいのか？土に埋めたり火で燃やしたりしないと魔物が寄ってきちゃうんじゃないか？その辺聞いてなかったな。しょうがないとりあえずアイテムボックスに入れて帰りに草原で燃やすとするか。」

初級魔法一撃でゴブリンを倒せる事がわかったので、オークやウルフ、ボアなどは相手にせずにひたすらゴブリンを風魔法で倒して行った。

結果・・・

10体のゴブリンを倒す事に成功したのだった。

「とりあえず、1体銀貨3枚だったよな。10体で金貨3枚。上出来だな。とりあえず今日は金貨3枚を寄付して神の奇跡を開放させておくか。チートが増えれば、今以上にお金が稼げるもんな。」

アイテムボックスにいれたゴブリンの死骸を草原で燃やしたカインは、新しい神の奇跡に期待を膨らませて街へと戻るのだった。