1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。チートを得る為に必要なのは金!?今日も女神様に貢ぐ為に俺は金を稼ぐ!
ベルピー
第一章 金貨一枚から変わる俺の異世界生活
第1話 『無能の祝福』カイン
「おい無能。さっさと荷物を運べよ。」
「わかってるよ。」
「おせぇんだよ!!ほらっ」
冒険者に後ろから蹴られて盛大にこけるカイン。
「はははは。無能はやっぱり無能だな。俺達の大事な荷物なんだ。落とさずちゃんとついて来いよ。」
カイン・・・この名前は街に住む人はみんなが知っていた。この世界の住民は5歳で神の祝福と呼ばれる儀式を行い、神様から何かしらのギフトを授かる事になっている。
よくある祝福は、『知』、『数』、『武』、『魔』などの1文字の祝福だ。『知』なら知性を与えられる。『知』は一番オーソドックスな祝福で農民や村民などに多い。『数』は商人などが多いだろう。『武』や『魔』は名の通り、戦う祝福だ。冒険者に多い祝福だ。
神の祝福は文字数が多ければそれだけ強い祝福となる。例えば『魔』、『魔法』、『魔法士』、『大魔法士』、『極大魔法士』、という具合だ。基本は街の教会で神様に祈りを捧げて祝福を得るのだが、教会にいけないからと言って祝福を受けれないかというとそうではない。
教会に行かなくても、5歳の最終日、6歳になる前に自動で祝福は得られるようになっている。
そんな中、カインは『アルファベット』という7文字の祝福を得ていた。7文字の祝福はカインのみならず周りの人間からも多いに喜ばれた。もちろんカインの両親も多いに喜んだ。
だが・・・
アルファベットの意味すらこの世界の住民には全くわからなかった。強くなるのかと言えばそうでもなく、魔法がすごいのかといえばそうでもない。では頭が良いのかといえばそうでもなかった。
日に日に、7文字の祝福が重荷になっていき、気づいた時にはカインの両親は病死しカインは10歳になっていた。カインは生計を立てる為に冒険者となったが、カインのできる事は、『街の清掃』や『荷物運び』、『薬草採取』や『冒険者の荷物持ち』ぐらいだった。
『魔物討伐』のような冒険者の花形依頼はカインにはとてもじゃないができなかった。Eランク冒険者のカインの能力値は全てEで最低だったからだ。誰でも倒せると言われている最弱の魔物、スライムやホーンラビットにすら下手すれば死ぬレベルだったのだ。
そんな依頼しかできないカインだが、生きていく為には依頼を受けてお金を稼ぐしかない。ありがたい事に住む所は両親が残してくれたので泊まる事にお金がかかる事はない。
だが、カインが一日冒険者の依頼を受けて手にするお金は銀貨1枚~2枚が限界だった。それは1日の食事代に消えていくのだ。
今日は、ダンジョンに行くCランク冒険者の荷物持ちの依頼を受けていた。荷物持ちとは言えダンジョンは危険が多い。だが逆にカインにとっては大きな収入が見込める。リスクが高い程報酬は高いものだ。
7文字祝福で街の人達から名を覚えられ、成果が全くでない事で更に有名になったカインは、周りの冒険者からも無能と呼ばれていた。カインも悔しい思いをしているが、悔しく思っても腹は減るのだ。どんな状況でも歯を食いしばって、泥をすすってでもお金を稼がなければならなかった。
(クソ!!僕だってがんばってるだ。荷物持ちだって必死にがんばってるんだ。なんで僕ばっかりひどい目に会うんだ・・・いや我慢だ。我慢。毎日耐えてきただろ。今日の依頼は銀貨3枚。いつもの依頼よりも破格に報酬が高い。耐えきれば肉が食べれるかもしれない。固いパンとスープのご飯じゃなくて、肉だ。肉、肉、肉、・・・よし!!がんばるぞ。)
得られる報酬の事を考えてカインは重い荷物を持って必死に冒険者の後をついて行った。
(僕もいつかは、こんな冒険者になれるんだろうか。ダンジョンで魔物を倒して、宝箱を見つけたり。仲間と一緒に冒険したり・・・)
そんな事を考えながら、カインは前で魔物と戦う冒険者達を見ていた。すると・・・
(あれ?あれはなんだ?)
ダンジョンの壁際に土にまみれていたが一部光ってるモノを見つけたのだ。カインは荷物を持ちながらそれに近づいて土をはらう。するとそこには・・・
(金貨だ!!!これ金貨だ。初めてみたけどまちがいない。金貨!?どうしよ?伝えないといけないかな?伝えないといけないよな・・・でも・・・)
ダンジョン内で見つけたモノは基本的に見つけた者が所有する事ができる。魔物を倒して得られるモノは魔物を倒した者のモノだ。だが、この場合は見つけたのはカインだ。当然カインに所有権があるのだが・・・
(いや伝えたらきっと取られる。まちがいない。なら・・・)
カインは拾った金貨をそっとポケットにしまった。冒険者達は魔物に夢中なので、カインの行動には気づいていなかった。
(やった!やった!このまま帰れば一気に豪華なご飯が食べれるぞ。)
「おい。無能!!なにモタモタしてるんだ。早く魔石を拾ってついてこい」
「は、はい。」
(よしよし気づかれてない。ふふふ。今は無能と呼ばれても何も思わないな。は~。お金の力って絶大だな。)
ただでさえ重い荷物に、魔石が加わり更に重くなったが、カインの心は今日の晩御飯で頭がいっぱいだった。
ヘトヘトになりながらも、荷物持ちの依頼を終えたカインは、冒険者ギルドで依頼の報告をし、報酬の銀貨3枚をもらう。久しぶりの重労働で頭が回らなくなっていたカインは、いつものように食事の前に教会にお祈りをしに行った。
普段のカインは、当然寄付などしない。そんなお金は持っていないからだ。神様の前で今日の無事を報告し、食事に行くのが毎日のルーティーンだったが、今日のカインはお金を持っており、頭が回っていなかったのかポケットに入っている硬貨を1枚寄付箱の中に放り投げた。
「あっ!?」
気付いた時には遅かった。カインの手から離れた硬貨は金色だった。そう、カインはボーっとしていて、銀貨を寄付するつもりが間違って金貨を寄付してしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます