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「飯田さん。」




人事部長の男性が私を呼んだので、ヒヤリングシートとペンを持ってデスクまで歩く。




「無理はしないでくださいね?

副社長からは、派遣社員というか大切なお客様だと聞いていますので。」




こんな大企業中の大企業で人事部長をしているような方が、私なんかにそんなことを言ってくれる。




「私は・・・庶民なので、そんな・・・お客様というわけには・・・。

あの、弊社の社長からは・・・“ガンガンやってこい”と言われておりますので・・・。」




私がそう答えると、人事部長が笑った。




「僕もお会いしたよ。

勢いのある社長さんだよね。」




「勢い、ですか・・・?」




「あれ、勢いないかな・・・?」




「全然ありません、ごめんなさい・・・。」




「そうかな!?勢い凄いあったけど!!」




うちの会社の社長を思い浮かべながら、答える。




「勢いはありませんけど、努力家ではあると思います・・・。」




「努力であそこまで会社を盛り上げてるのか~。

あの社長さんに合うような人を、御社では採用してるの?」




「・・・もっと、難しい要望を出されています。

良い冒険者で、良い演奏者になるような人と言われていて・・・。」




「それは・・・大変な採用だね。

どんな基準で選んでるの?」




それを聞かれ、何も答えられなくなる・・・。




「ごめんなさい・・・上手く説明出来ません・・・。」




「そうか・・・。

でも、御社9年目に入ったのに・・・誰も辞めてないんだよね?

300名くらいの社員だっけ?」

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