幼なじみの小太郎君が、今日も私の眼鏡を外す

Bu-cha

1

1

「これ・・・全部面接するんですか?」




私のデスクの前で、中途採用担当者の男の人が驚いた声を上げた。

私のデスクの上には大量の履歴書と職務経歴書があるから。




「はい・・・。ごめんなさい・・・。

私は・・・お会いしないと分からないので・・・。」




「・・・あ、すみません!

驚いただけで!!

もしかして、応募者全員と面接するんですか?」




そんな当たり前のことを聞かれ、頷く。




「ごめんなさい・・・。

私は、お会いしないと分からないので・・・。」




そして、両手に持った履歴書と職務経歴書の束・・・束どころか鈍器にもなりそうなくらいの重みの物を、男の人に渡す。





「日程調整はやってくださると聞いていますので・・・お願い出来ますか・・・?」




「はい・・・。

1人につき30分くらいですか?」




「1人10分もあれば・・・。

なので15分間隔で入れてください・・・。」




「・・・分かりました。」




「夜や土日にしか来られない方もいらっしゃるので、全て対応します・・・。」





男の人が驚いた顔で私を見ているので、慌てて下を向く。





「本当に大丈夫ですか・・・?

部長からは、派遣の方なので無理させないようにと言われていて・・・。」




「・・・無理ですか?

全然無理していませんので、ごめんなさい・・・。

うちの会社では、これが当たり前だったので・・・。」




「・・・ブラックですね。

だから、急成長出来ている企業なんでしょうね。」





こんな大企業中の大企業、藤岡ホールディングスに就職出来た男の人がそんなことを言ってくれる。





「うちの人事部のことも、よろしくお願いします。」






そう言って、派遣の私にも頭を下げた・・・。






私みたいな女に・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る