序章 最初で最後
永久にトモに
昔、古い魔法使いの集団がいました。
古い魔法使いたちは、悪いヒト達を全て消し去るために、大きな怪物をつくり出しました。
怪物は大きくて強く、そしてどんなに傷を負ってもたちどころに治してしまう為、誰も倒せない無敵の怪物となりました。
怪物は本当に強く、怪物をつくり出した魔法使い達にも怪物を制御が出来なくなってしまう程でした。
そんなある日、怪物の前に一人の青年が現れました。
その青年は、誰にも倒す事が出来ないと知られている怪物を前にしても、笑って怪物の相手をしました。そして魔法の言葉を唱えると、なんと怪物は一人の少女の姿へと変わりました。
実は怪物の正体は、魔法を掛けられた少女だったのです。
少女に掛けられた魔法を解いた青年は、少女と暮らす事を決めました。
突然の事に少女は戸惑いましたが、青年は強引に少女の手を引き、そして遠く離れた森の中の家で暮らし始めました。
青年は、家の中で家事をしたり、外に出かけて働いたりする合間、毎日少女に花や装飾品を贈りました。しかし、少女は青年に対していつも冷たく当たりました。
突然自分と暮らしたいと言い出した青年をずっと疑い、警戒していたからです。
その都度少女は青年に聞きました。
「何故私と暮らすの?」
その答えに、青年は答えます。
「君の事が知りたいから。」
その答えに、少女は納得しませんでした。
少女は魔法に掛けられたとはいえ、怪物となって多くのヒトの命を奪ってきたから、そんな自分のしてきた事を知りながらも、そんな自分に気に掛ける青年が、少女が信じられずにいました。
いつも少女は、青年の言葉に耳を傾けず、青年に冷たくします。それでも青年は、決して少女に強く当たる事も、叱りつけたりする事無く、少女に変わらずやさしく接しました。
そんな日々が続いた中、ある日青年は少女の為に誕生日の贈り物をしました。青年が少女に贈ったのは、花の髪飾りでした。
「君の髪の色に似合うと思って、作ったんだ。」
その言葉を聞いた少女は、贈られた髪飾りを床に叩き付け、走って家を出て行ってしまいました。
少女にとって、自分の髪の色はこの世で最も憎むべきものだったからです。
少女の髪の色は、少女の両親と同じ色でした。そして少女の親は、少女にいつも酷い仕打ちをしてきました。
お前は出来損ない。お前は役立たず。お前を必要とするヒトなどいない。
少女は両親や周りのヒト達から、そう言われ育ち、そして自分を含めた全てのものを憎むようになりました。
しかし、それは両親や周りのヒト、その正体である古い魔法使い達の策略でした。
古い魔法使い達は、怪物をつくり出す為の力として、『他者を憎しむ心』を利用したのです。そして少女が憎しみを抱けば抱くほどに、怪物としての力が強くなる呪いを少女自身に掛けたのでした。
少女は生まれたその時から、怪物をつくり出す為だけに利用された道具だったのです。
その事実を知ったのは、怪物へと変貌させる直前、少女を怪物に変える魔法を掛けようとする両親の口からでした。
だから少女は、全てが憎いのです。両親が、その仲間が、何も知らず平穏に暮らしヒト達が、そして自分自身が。
そんな少女に、追いかけて来た青年は声を掛けました。
「やっと見つけた。」
ずっと走り回り、泥だらけになりながら、青年は少女を探し回っていました。
そして見つかった少女は青年に言いました。
「どうして私を探したりしたの?私はあなたの事が嫌い。全部嫌い。だからいつもあなたに悪口を言った。冷たくした。贈った髪飾りだって壊した。誰かに好かれる様なところなんて一つも無い。
なのに、どうしてそんなになってまで私を探すの?」
少女は言いながら、顔を崩して涙を流しました。そして、そんな少女に向かって言いました。
「…特に理由は無いな!」
青年の答えに、少女は呆気にとられました。そして徐々に顔を赤くして怒りがわき上がって来ました。
青年の言葉に怒る少女に青年は続けました。
「自分は怪物でヒトが困っていると聞いて、怪物に会いに来たんだ。そしたら案の定、そこに困っているヒトがいたんだ。それが君だ。
君は怪物という存在にひどく怯えていた。そして助けを求めていた。だから助けたんだ。」
青年の言葉が理解出来ず、少女は言い返しました。
「怪物の正体は正体は私だ。私は困っていなかったし、助けだって求めていなかった。」
「いいや、君は助けを求めてた。」
少女が言い終える前に青年は少女の言葉を遮りつつも言葉を続けます。
「だって君は泣いていた。誰にも泣く事を止まられず、誰にも受け取められずにずっと君は耐えていた。
ヒトは誰だって自分の心が壊れる事を防ぐ、耐えれるだけの力を持っているけど、いつかは限界が来る。だから君は自分が来る前に、もう暴れる事もせずに動かずにいた。それは心の生存本能だ。君は耐えられなくなったから、ジッと動かずにいて誰かが来るのを待っていたんだ。
その証拠に、君は自分の手を取っただろう?」
そう言われ、少女は思い出しました。自分が、無意識に青年の手を取っていた事に。そして少女は気付きました。本当は自分は誰かに助けてほしかったのだと。
「君の髪、最初見た時から綺麗だと思ったんだ。他の誰でもない、君だけの色なんだ。だから君にこの髪飾りを贈るよ。」
そう言って差し出してきた青年の手には、少女が叩き付け壊れた筈のブローチがありました。それはまだヒビが残っていましたが、綺麗に修復されていました。
青年は髪飾りを少女の髪に
「うん!やっぱり似合うよ!」
青年の言葉に、少女はまた涙を流しました。それは悲しみから流れたものではない、暖かなものから流れた涙でした。
少女は、愛されることを望んでいました。しかし、両親からも、周りからも愛されたなかった少女は、愛されることを諦め、誰の言葉も信じられなくなりました。
でも、漸く青年の言葉を聞いて、青年の目を見て気付きました。
青年が自分を本当に想ってくれている事を、自分に嘘一つ無く言葉を贈ってくれる事を。それはかつて少女が欲した、そして諦めていた全てでした。
そうして少女は青年を信用し、漸く二人は心から穏やかな日々を過ごしました。しかし、少女にはたった一つ不安を抱いていました。
それは自分が怪物で会った時に命を奪ってしまったヒト達、そしてその家族、恋人、友人、多くのヒトの大切なヒト達の事でした。
もし自分がその怪物である事が世間に知られたら、もう今の様な生活は送れなくなる。ただそれだけでした。
しかし、少女にとって自分が怪物と気付かれる事はそれ程苦痛ではありませんでした。少女が気に掛けていたのは青年でした。
怪物であった自分と暮らした事で、周りから何か言われ、もしかすればこうして平穏に暮らす事が出来なくなるのではないかと思ったのです。
そうなれば、少女は自分から青年の元を離れるつもりでいた。そうすれば青年が酷い目に遭う事は無いと思ったからだ。
そう思っていたある日、朝早くから青年は少女を起こし、少女に語りかけた。
「何があっても、君を迎えに行くし一人にしない。だから、君も信じて笑って過ごしてほしい。」
突然青年がそんな事を言ってきた事に理解が出来ず、何があったのか聞こうとしたその時、家に何人もの人が押し寄せてきた。そしてそのヒト達は青年を目にして言った。
「お前を化け物の襲撃事件の首謀者として拘束する!」
最初、突然来たそのヒト達の言っている事が分からずにいたが、言われて黙っていた青年が大人しくそのヒト達の元へと行くのを見て、少女は察した。
青年は少女を守るために、自分が怪物を操り皆を襲ったと嘘をついたのだと。
少女は青年が嘘をついた事、自分がその怪物であることをそのヒト達に言おうとしましたが、何故か口は開けど声を出す事が出来ませんでした。後でそれが青年の魔法によるものだと気付きました。
結局少女は成す術も無く、青年はそのままそのヒト達に連れて行かれました。
そして青年は、怪物を操っただけでなく、少女を監禁しこき使っていたとして罪を背負い、少女達が来すむらから追放されたのでした。
少女に掛けられた魔法が解けて喋れる様になったのは、青年がむらを離れて数日経った日の事でした。
青年が生かされたまま、追放だけで済まされたのはむらの中を血が汚さない為と、むらを追い出されるのは、むらに住む者にとって死と同義だったからです。
少女は酷く絶望し、悲しみに暮れました。今すぐのでもむらを出て青年を追いかけたかったのですが、むらの外は危険な動物が多く棲むと言われ、むらの外に足を踏み出す事が出来ません。
怪物になった事が切っ掛けで、魔法を使う事を恐れる様になった少女にとって今の自分は何も出来ない無力な存在そのものでした。そんな少女はもう青年を見つける術は無いと思う
それから少女は悲しみのあまり、家から出る事がなくなりました。むらのヒトは青年に少女が酷い目に遭わされたせいだと思い、少女を気遣いましたが、少女は誰の言葉にも耳を傾けませんでした。
それから幾つもの月日が経ち、その度、少女は青年の言葉を思い出します。その日思い出したのは、青年が無実の罪で拘束される直前、少女に語り掛けた言葉でした。
何があっても、君を迎えに行くし一人にしない。だから、君も信じて笑って過ごしてほしい。
その言葉を思い出した少女は、少しずつですが元気を取り戻し、家の外に出る様になりました。
むらのヒトは、外に出る様になった少女を見て安心していました。そんなむらのヒトの心情など少女は気に留める事もせずにただ、青年の言葉を信じて待ちました。
最初に会った時から、青年は少女に嘘をつきませんでした。そして、いつ何時も少女を一人にはしませんでした。だから、少女は信じて待ちました。いつか罪が許され、青年が再びむらを訪れるその時を。
一年、五年、十年が経ちました。しかし青年は来ませんでした。それでも少女は青年を待ちましたが、日に日にある衝動が少女を襲いました。
衝動に駆られる少女は不安を増し、いつしか自分がもう青年と会えない気さえしました。
だから少女は、結婚し子どもを産みました。それは青年が自分に会いに来ると信じての行動でした。
いつか自分は『自分ではなくなる』という謎の直感で不安になった少女は、自分の血を残す為に子どもを産んで、その子どもに自分の代わりに青年と再会させようと思ったのです。
結婚した相手は、家に引きこもった自分を最後まで心配し、少女の身を案じた男でした。その相手となら変わらず平穏に過ごせると少女は思いました。
しかし、そんな事に意味が無いと分かっていました。もしかしたら青年の方が不慮の事故で既に亡くなっているかもしれないし、自分の直感は的外れなのかもしれない。それでも、何をせずには、自分自身の何かを残さずにがいわれませんでした。
それからまた月日が経ち、少女はある事に気付きました。
それは、自分の髪の色が徐々に濁ってきている事。そして髪の先端黒く染まってきている事に。
少女の種族は、皆とても色鮮やかな色をしており、少女の髪の色も青年に会った時、確かに色鮮やかだった筈。その黒く染まった髪を見て、そして少女は自分の身に何が起きているのか、気付いてしまいました。
少女に掛けられた呪いは、完全には解かれていなかったのです。そして、呪いが再び少女の体を蝕み、少女を怪物に変えようとしていたのです。
呪いが体を蝕み始めた為か、少女自身はその事を徐々に自覚していき、そして絶望しました。そしていつか感じた、自分はもうあの青年と会えないと言う直感は当たっていたのでした。
もう青年に会えなくなるばかりか、自分は自分でいられなくなってしまう。その時には自分は青年の事も、自分の事も全て忘れてまた多くのヒトを襲う本当の化け物になってしまうのだと。
「そんなのってないよ!」
少女は全てに絶望しました。
少女は全てを嫌い、怒り、憎んでいました。
そんな少女は、一人の青年と出会い、今まで嫌っていた、憎んでいた物がやっと好きになっていました。
それが全て無くなる。
たった一欠けらだけでも残そうとしたものでさえ打ち砕かれ、少女は打ちひしがれるしかありません。
黒は少女の種族にとって呪いの色。きっと髪の毛が全て黒く染まった時が、少女が完全な怪物へと姿を帰る時。そして少女が持つもの全てを失う時です。
夫と子どもを家に残し、少女は遠い場所で一人で過ごしました。そして遂に少女の髪が全て黒く染まり切ってしまいました。
少女はかつての自分の髪の色を、そして自分の髪に色をかつて好きだと言ってくれた青年を思い出しました。
そして静かに涙を流しました。
「一目だけでも、会いたかったな。」
そして少女の意識は消えたのでした。
それからどれだけの月日が経ったか、どこかの森の奥深くに、恐ろしい姿をした怪物が棲んでいるという話が流れた。
その怪物は、鋭い牙に爪を持ち、生き物の形容をしているのに、既存するどの生物にも似つかない姿をしており、その異様な姿に見たもの全てを
しかし、その容姿とは裏腹に怪物は誰も襲う事がありません。
ある者は好奇心から怪物を見に行き、そしてあまりの恐ろしい姿に怯えるも、怪我一つ負う事無く帰還した。
ある者は怪物を退治する為に対峙しますが、結局怪物は一歩も動く事無く、退治しに来たものは何もしてこない怪物に嫌気がさし、結局何もせずその場を立ち去りました。
誰も彼も怪物に対峙するも、誰も彼も何もしてこない怪物を目にして皆怪物の前から立ち去りました。
そうして何時しか怪物の存在は忘れ去られ、怪物が棲む森に誰も寄り付かなくありました。
更に月日が経ったある日、怪物の前に一人の老人が現れました。
老人は怪物に近付き、魔法に向かって手を伸ばしました。
老人を目にした怪物は、まるで今まで我慢し、抑え込んでいたものを解放するかのように動き出し、そして大きく口を開き、老人に食らいつき一飲みしてしまいました。
老人を一飲みした怪物は、
「…どうして!?」
怪物である少女は、自身に食べられた老人に聞きました。
老人の正体は、かつての青年でした。青年の種族であれば既に寿命が尽きている筈の歳ですが、老人もとい青年はたった一つの目的の為に生き、そして怪物の元へ来たのだと言いました。
「…君の呪いが完全に解けていないと気付いたのは、むらを出て暫くしてからだ。」
そこで、少女に掛けられた呪いを完全に解くための解呪の魔法を探しましたが、青年には魔法を見つけ出す事が出来ませんでした。更に呪いを解く魔法は無いと言う事実を知り、青年はどうすれば良いか考え、そして思いつきました。
無いのであれば、自分で魔法を作れば良い。
それから青年は長い時間を掛け、解呪の魔法の開発に専念しました。
本当に長い時間が掛かり、遂に解呪の魔法を開発した青年でしたが、なんと開発した解呪の魔法は、今の自分の力では使う事が出来ませんでした。
そして使うにはヒトの心、積み重ねたヒトの『正の感情』を多く集めなくてはいけませんでした。それは、本当に気が遠くなるほどに時間を掛ける必要があり、青年の種族の寿命では到底使う事の叶わないものでした。
だから青年は、魔法を今でなく遠い未来に賭ける事にしました。
青年もまた、少女の様に結婚し、そして生まれた子どもに自身が編み出した魔法を託したのです。そして青年自身はやっとの思いで少女の元を訪れたのでした。
青年は、自身に『毒』の魔法を仕込んでいました。傷を付けても直ぐに治してしまう怪物の体でも、内側からであれば倒す事が出来ると踏んだ青年の策は、見事怪物を討ち果たしました。しかしその手段も結果も、青年自身にとって苦渋の決断でした。
「君にこれ以上怪物としての苦しみを与えない為とは言え、サイゴは苦しい思いをさせてしまった。」
「…私だって。あなたを食いコロしてしまった。」
やっと再会した二人は、互いに血まみれになる程の、辛く苦しいとなってしまいました。
そして少女には、まだ悔いがありました。
それは、自身の呪いが『遺伝』するものだという事です。
「呪いが体を蝕む度に、呪いがどんなものか徐々に自覚していくの。その中で、私の呪いが私が生んだ子にうつってしまっている事を知ったの。
私はただ、自分の思いが、記憶が消えてなくなるのが怖かった!ただそれだけの理由で無責任にも子どもにそれらを押し付けようとした。
その結果が子どもにまで私と同じ苦しみを与える事になるなんて知らなかった!私は体だけではない、考えも心さえも怪物そのものだったんだ!こんなの、ヒトに愛される訳が無いんだ。」
自分がしでかした事全てに後悔し、最早泣く事さえ出来なくなった少女に、青年は会った時と変わらない声色で少女に語り掛けます。
「そんな事無い。君は怪物ではない。それは当たり前の事だ。ヒトであれば誰だって抱く思いだ。それを許さないというなら、ヒトは感情を持つ事など無かった。
自分がした事が許されぬものなら、背負っていくしかない。でも、君一人が抱く必要は無い。自分も一緒に君の背負うものを背負おう。そうする事位は赦されるはずだ。」
青年の言葉に少女は俯いていた頭を上げますが、それでも少女は張れない表情のままでした。
「でも子どもが…私の呪いのせいで。」
少女は自身が生み、そしてむらに残した子どもの行く末が気掛かりでした。
今は呪いが掛かっている事さえ気付かない程ですが、いつか少女の様に自身の呪いに自覚し出し、そして体にも変化が現れて、自信の出生や親である少女へ恨みを募らせる事になる。それが少女にとって恐ろしかった。
不安がる少女に向かって、青年は
「じゃあこう考えよう。
君の呪いも、その子どもの呪いも今は解けなくとも、何かの拍子に呪いが解かれるかもしれない。自分が解呪の魔法を編み出したのだって、本当に運が良い事だった。だからいつかその子どもにも運が舞い込むかもしれない。
それに直ぐじゃなくても、いつか自分が魔法を託した子どもと、君の子どもが巡り合う事があるかもしれない。その時には魔法の力が蓄えられて、呪いが解けるようになっているかもしれないって。」
そう青年は自身が立てた仮定を少女に聞かせます。それは少しでも少女を安心させたいが為の方便かもしれません。しかし、青年の言葉を聞いて少女は感じました。
青年が変わらず自身の事を想っている事、そして青年の言葉には確かな信頼がある事を。
俯いて暗い表情をしていた少女はもういませんでした。青年は再び言葉を口にします。
「いつかで良い。君が一生かけても許されない罪を背負ったとしても、君が恐れる事は無い。
もしかしたら、君の子孫が、君の生まれ変わりがいつかの時代に生まれ、そして自分の子孫か生まれ変わりが出会う時があるかもしれない。
君のその心が、血が子に残る様に、自分の記憶が、意思が続いてく。そうして自分達はこの世界が続く限り、この世界で生き続ける。永久とも言える時間と空間の中を在り続ける。
そしていつか出会ったその時は、もう一度自分は君を愛そう。そして君はもう一度愛されよう。」
青年の
互いに出会い別れた時と変わらぬ姿のままの姿を見て、また二人一緒に笑い合えた気がしたのでした。
もう君一人に、辛い思いはさせない。
自分が君の傍で、君の事を支えるよ。
その後、二人が離れ離れになる事はなくなりました。明るい世界で平凡に、そして平穏に共に過ごしました。
「なんだ?これ読めって?昨日何回も読んだだろ?」
「そう言うなって。子どもってのは、気に入ったものは飽きるまで遊び尽くすもんだからな。」
「そう言ったって、こんなのよくある昔話だろ?
ある日魔法を掛けられて怪物に変えられたお姫様がいて、どっからともなく現れた青年ってのがお姫様の魔法を解いてめでたしめでたし、って感じの話だろ?」
「…本当に情緒が無いなお前。良いから本くらい読んでやれ!ほら、この子も待ってるぞ。」
「ったく、言うだけ言って行きやがった。ホントに口のウルサイヤツだな……って分かった分かった!そう何度も言うなって。ホント、アサはこの絵本飽きねぇよな。ほら、ここ座れ。
えーっと…昔々、森の奥深くに恐ろしい怪物が―」
そして未来で、『二人』は出会ったのでした。
永久にトモに_とある異世界譚 humiya。 @yukimanjuu
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