第9話 ゲーム同好会






「ハルちゃんどこにいるんだよ」


「だから森の中だって」


「どこだよそれ」


「俺が聞きたいって!」


 高校生活も今日で3日目。クラスの雰囲気に慣れて、友達も出来始めた頃。一人でいるのは蛍井さんくらいだ。


 話しかけた方が良いのかとも思ったけど、抜け駆けするなみたいな男子連中の目線がちょっと怖い。


「フレンドなれないじゃん」


「それはすまんだけどさ〜、しょうがないじゃん」


  R2O内でのフレンド登録は直接会わなければ出来ない仕様になっており、俺は誰かに見つけてもらうか、現在地がどこかを知らない限り一生ぼっちになってしまう。


「またゲームの話〜?」


「マドちゃんは始めたの?」


「ゲーム機は買ったよ〜。後は届くのを待つだけ〜」


「サポートしろよヤッさん」


「任せろって」


  R2O人気は止まる事を知らない。毎日大勢の新規プレイヤーが増えて街が賑わってるらしい。俺のいる森には誰一人と来てないけど。


 あの後も師匠との修行は続いている。

 【剣】と【短剣】スキルも、師匠との実践稽古でレベル上がってしまった。


 他にも狩りのための【罠設置】や【隠密】の使い方、強敵からの逃げ方など様々な分野を教えてもらうことができ、スキルレベルが満遍なく上がっている。


「このあと5限と6限使って部活動勧誘会だろ? 俺はもう決めてるけど、二人はどうするよ」


「私は〜、色々見て回ろうかな〜」


「俺は帰って R2Oしたいし幽霊部員できるとこ探す」


「さいてー」


「うっせ!」


 実はホタルさんと会話するのが楽しみになってるって言うのは、俺だけの秘密だ。


…………

………

……


「結局ヤッさんとマドちゃんが一緒に行動して、俺は一人っていういつものパターンね」


 中学時代から3人で仲が良かったが、どうやらヤッさんはマドちゃんが好きだし、マドちゃんもヤッさんが好きだ。


 たぶんね? マドちゃんに関してはわかんねーや。


 運動部は校庭、文化部は体育館に分かれて部活勧誘をしているようで、校庭を見ると、ボールやユニフォームを持った先輩たちが大きな声で勧誘している。


 体育館の方では部ごとに机と椅子が置かれており、それぞれ来てくれたら人に部活の説明をしているって感じ。


「帰って R2Oやりてぇ。師匠との修行も楽しみだし、ホタルさんとも……」


「ホタルさんともなんだい!?」


「うわぁ!?」


 突然背後から声をかけられ、俺は飛び跳ねてしまう。まだ心臓がバクバクと激しく鳴っている。


「あ驚かせちゃった? なんか R2Oって聞こえてさ! やってるの?」


「はい、やってますけど……」


 上履きの色を見て2年の先輩だということがわかった。ショートの髪型は快活そうな印象で、小柄ながらも胸を張っているからか、存在感が大きい。


「じゃあゲーム同好会へ来たれり!」


「ゲーム同好会って部活ありましたっけ」


 部活の一覧が載っている冊子を広げるが、そこには書かれていない。途端に怪しくなってきた。


「同好会だからね、部活勧誘会には参加してないよ」


「ほう?」


 どうやら部活だけでなく、部員が四人以下で活動している同好会なるものがあるらしい。


 ゲーム同好会以外にも、吹奏楽部に部員を取られてしまっているジャズ同好会など、結構あるらしい。


「でもゲーム同好会って結構人集まりそうですけどね。すぐに部活になりそう」


「ふっふっふ、ゲーム同好会は招待制にしてるんだよ、私はあえて同好会に留めているのだ……」


「な、なぜ?」


「部活勧誘会に参加せず、密かに活動しているミステリアスな感じ、かっこいいだろう!」


「うわしょうもねぇ! でも確かにわかる!」


 男の子は隠された組織とか、意図的に表舞台に立たないとか、そう言ったのが大好きなのだ。


「それに活動費で最新VR機も購入できたし、部活で R2O、出来るぜ?」


「入ります!」


「よーし、ではついて来たまえ! 私の名前は新星あかね。君は?」


「俺は柊木春馬です」


 そんな会話をしながら部室、もとい同好会室の前に着く。


「実はもう一人一年生が入ってくれる事になってね。仲良くしてくれ!」


「あ、はいもちろんです」


 ガラガラっと引き戸が開け放たれた先にいたのは、ゲーミングチェアに綺麗な姿勢で座る蛍井さんだった。


 


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