第7話 ゴブリン降臨
学校から帰ってきて早速ログイン。持ち物は枝が数本と石が数個。不恰好なヤリが一本にグリーンリザードの肉と骨、皮だ。
グリーンリザードを倒した後、その場でログアウトしようとしたのをホタルさんが『セーフゾーン行きましょう!』とコメントしてくれたおかげで、何とか小屋でログアウト出来た。
「……ホタルさんはいないか。まあ昨日が特別だったって事で」
鑑定のレベルも上がったので、もう一度グリーンリザードを鑑定してみる。
【グリーンリザードの肉】
筋肉質なグリーンリザードの肉。調理可能。
【グリーンリザードの骨】
太く頑丈なグリーンリザードの骨。加工可能。
【グリーンリザードの皮】
伸縮性のあるグリーンリザードの皮。加工可能。
どう加工するのかは分からないが、使い道があるとわかれば十分だ。骨と皮は残して、肉は焼いて食べてみようか。
外から手頃な大きさの石を持ってきて、木の枝で作った焚き火の上に置く。小屋の中だが、天井には大きな穴が空いており、地面も土で覆われているので燃え広がる心配もないだろう。
たぶん。
「料理スペース確保しないとだなぁ」
十分に熱された石の上にグリーンリザードの肉を乗せる。
じゅわ〜と良い音がして、食欲をそそる匂いがお腹が空かせてくる。
木の棒で裏返すと、焼き目のついた美味しそうなステーキみたいだ。
「うわぁ絶対美味いやん! 調味料ないのもったいねぇ〜」
良い感じに焼けたので、清水の魔法で炎を消し、木工スキルで作った箸を手に持つ。この時に木工のレベルも上がった。
「いただきます」
【ホタルが視聴を開始しました】
グリーンリザードのステーキ肉に噛みついた瞬間、ホタルさんが配信を見に来てくれた。
『え、美味しそう!』
「んぐ、昨日のグリーンリザードの肉です。調味料がないからあれだけど、美味しいっす」
『良いなぁ……』
羨ましそうにしているホタルさんを横目に、ゲーム内で初めての食事を満喫したのであった。
…………
………
……
「よし、探索に行こう」
『今日も食糧探しですか?』
「うん。食糧探しつつ、ここの近くの地形とか環境とかをついでに調べようかな」
『頑張ってください』
「頑張る」
隠密スキルの【小音足】で気配を隠しつつ進んでいく。前回グリーンリザードと遭遇した場所を越えると、木の密集具合が減ったのか、少し明るくなった。
またしばらく進むと、開けた場所が目に入ってくる。太陽の光を浴びるその場所には、切り株の上に座る人影が見えた。
「人?」
『こう言う時こそ鑑定です!』
ホタルさんに言われて鑑定スキルを発動させる。距離が遠いからか、発動しなかったので、もう少し近づいてみると、文字が表示された。
【ゴブリン(覚醒者)】
ゴブリンって事はモンスターか。でも覚醒者って何だろう。通常個体よりも強いって認識で良いのかな。
「覚醒者って何かわかる?」
『わからないです。調べてきますか?』
「隠れているつもりか?」
声が聞こえた!? いや結構な距離があるし小声で喋ってたはず。
「出て来い、不安がっている」
流暢に喋るゴブリンに従い、草木から出てゴブリンのいる広場まで歩いていく。隠密スキルのレベルが低いと、こうやって見つかる事もあるのか……。
『何かフラグが立ったのかな……』
ホタルさんは一人で考察している。確かに普通のモンスターなら見つかった時点で敵対されるだろうし、何かクエストが発生した可能性があるな。
「ほう、ヒト族か。こんな場所にいるとは珍しい。君たち、安心しなさい怖くないよ」
ゴブリンは俺には見えない誰かに話しかけると、腰掛けていた切り株から立ち、近づいてくる。
どうやらここら周辺が明るくなっていたのは、このゴブリンが間伐をしていたからなのかもしれない。
「おぬし、名前は」
「えっと、ドーンです」
「ドーン、おぬしはその装備でここまで来たのか?」
怪訝そうな表情で俺を物色する。隠者装備が何か不自然なのだろうか。
「えっと、何かおかしいですか?」
「オレも鑑定持ちだ。装備は一級品だが、レベルとスキルが見合ってねぇ。そんなんじゃここには辿り着けんだろ」
『このゴブリンは多分NPCです。街中の住人とかと同じ類の。敵対しないよう会話してください』
ホタルのコメントに小さく頷き、嘘をついてバレるよりかは本当の事を言おうと考える。
俺はゴブリンにどうやってここに来たか分からないことと、ここに来る前に起こった事を話した。
『え、何ですかそれ……』
「あーなるほど、確かに【堕とされし者】と【魅入られし者】の称号があるな」
「はい……」
「おぬし、鍛えてやろう」
「え?」
「この森でおぬしは生態系の底辺に限りなく近い。オレが鍛えてやっても良い、どうする?」
『修行パートですね!?』
俺もホタルさんと同じ考えをしていた。これは修行パート。ここからこの森での生き抜き方を学び、強くなるフラグ!
「お願いします!」
「ああ、まかせんさい」
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