第5話 疾風怒濤の朝、昼、晩

 アイツは居ない。

 返ってくるのは夜勤明けの11時、半分死体で帰ってくる。

 

 私は、朝5時に起きる、地獄の幕開けだ。


 まず、米炊きと前日のツケの洗い物をしながら時間配分と段取りを構築する。


 髪のボサつきはゴム留め、顔は眉毛のみ描き込んで最低限の装備で戦う。


 一番下、送迎バスなし送り届け必須、要お弁当、遠足バスあり、酔い止めを飲まさねば。


 真ん中、着替えと朝食は自立行動を期待し、最悪兄にヘルプを頼む。


 一番上、真ん中の子の鉛筆を削る、ゴミ捨てと、真ん中の小学校への引率を託す。自分のことは自分で出来る。忘れ物は多いけど、フォロー出来ずに申し訳ない。


 洗濯、幼稚園カバンとお手紙チェック、ランドセルをほぼ仕上げる。

 

 6時を回った頃から私好みの音楽がスタートし、7時の子供の起床に合わせて戦隊もののテーマが流れる。


 そのタイミングで子供を起こす……起きない。服を取っては投げつけて、再度起こす。携帯では店長が20分でいいから早く来れる?ときたが、返事も打たずに作業をこなす。オール冷凍食品おかずのお弁当が完成する。

 一番上が朝食準備の主担者だ。私の分も含めたトーストと牛乳、ヨーグルトを手配する。で、わずかに残った昨日の残り物のシチューで朝食が完成だ。


 こんな時に限って、蜂蜜を塗りたくったトーストをひっくり返して、泣いて騒ぐ、一番下。

 真ん中が靴下で床の汚れを塗り広げる。一番上が怒鳴って全員泣かす。

 阿鼻叫喚の世界の中、靴下を履かせ替え、濡れた雑巾で掃除する。

 浴室乾燥からシャツと私の制服を準備するしてると、一番上が、泣いてる真ん中の手を引くずるように学校に連れていく。

「行ってきます」

「いってらっしゃい、ゴミは?」

「ムリ」

 

 まー、しゃーない。私が単独でゴミを捨てに行こうとすると、一番下が、何も言わずに手を私に伸ばすしてくる。

 蜂蜜で手がベトベトして気持ち悪いのは分かっているが。

「何したいねん?喋らなわからんで」

 と言葉で殴りつけては家を出て、冷たい空気に触れると同時にで反省する。


 家に戻るといやいや病で泣きじゃくっている。もう年長さんだというのに……

 ため息、飲み込み気合でラストスパート。

 意地でも、「拭いて」と一声ママにお願いさせてから、濡らしたタオルで顔と手をぬぐう。

 襟と靴下ピンとして、酔い止め舐めさせ自転車でゴーゴーゴー!


 予定通りの5分前行動にねじ込むように自転車を滑り込ませ、疾風はやてのごとくパート先へ、電動自転車のモーターが唸らない領域まで立ち漕ぎ加速し車道を走る。


 パート先に25分前に到着し、店長に連絡できずにすみません。と一声かけてどこの手伝いができるのか確認しては突撃する。

 いつもより客が多い忙しい時に限って、研修がある。そこもまた地獄なのは別の話。


 バタバタする中、店長が休憩時間にジュースをおごってくれる。

 一息ついて、引継ぎ完了まで走り切る。


 家に帰れば、眠るアイツと、ゲームをしている上と真ん中。


 宿題したか確認し、したと答える2人だが、大体何か忘れてる。

 冷蔵庫を開け、水を飲み一瞬で晩御飯を決定する。

 そして冷蔵庫写メである。これにより卵買い忘れ率は1%以下となった。

 上着を竜巻のように羽織り、

 「嘘ついてたら今日ゲームなしやからね!」

 と捨て台詞をはいて家を発つ。


 預かり保育は定額で一度預ければ19時までは料金は同じ、だらだら買い物し気持ちを充電する。子ども会行事でもらったマックカードで遅い昼ご飯を摂る。


 幼稚園で一番下を回収し、買い物荷物で重くなった電動自転車がモーターを唸らせる。

 息が白い、星が見え、スーパーのイルミネーションに感動している一番下、いつかは、どぶ川に一輪花が見えれば綺麗だねと言っていた、白の心を愛しく思う。


 家に帰れば、お腹減ったの大合唱、ゴミ箱のバナナの皮とあいまって、全員ゴリラである。

 今日は、ハイパースピード飯、きつねうどん(マジで揚げのみ)&冷凍食品唐揚げ&ブロッコリ。冷凍ご飯は納豆キムチとともに並べ立て、その他冷蔵庫の在庫整理はアイツに依頼する、9割は闇のお好み焼きが冷凍保存されることになる。

 ここまでで、本日の任務の80%完了する。


 一番上にお風呂を洗わせ、真ん中の宿題が出来ていないとこを見つけてゲームを取り上げる。

 一番下は一人遊びだ。愛情注げず申し訳ない。たまに飛んでくる、預かり保育の話に返事をする。今日は遠足のはずなのに、こちらから聞かないと一切話題に上がらないのをいつも不思議に思う。

 アイツは仕事の準備に取り掛かっている。

 

 風呂で子供たちをイモを洗うように素早く美しくしては追い出して、

「自分で体拭きや」とお願いする。

 頭や、お尻の少し上が、一番上の子も含めてしっかり拭けてないのでワシワシする。

 アイツはパジャマを床暖房の上で準備してくれてる。一番上に服着せをお願いし、私は再度湯舟に浸かりストレッチ、歳を重ねると体のメンテも大切だ。

 頭を洗って乾かして、寝支度、歯磨き、顔パックをする。


 アイツに「いってらっしゃい」を言えなかった、ちょと寂しい。

 

 歯を磨く磨く磨く。

 掃除機は一番上、私は洗い物、真ん中と下はおもちゃ箱になんでかんでも投げ入れる。

 好きなテレビを1つ見せてる間にランドセルと幼稚園カバンを整えて、布団を引いて、洗濯を予約しながら、急ぐやつは浴室乾燥する。

 わずかでも目を離すと、一番上はゲームをしている。

 ビーズクッションで寝てる、真ん中と、一番下を、上の子と一緒に運んで眠る。


 おやすみと言ったかどうかも分からぬままに、次の朝が来る。

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