つらつらふらふら日記

第1話 台風

　真夜中の風切り音に目が覚める。

　子供達は同じ方向を向いて寝て、手足の重なり方もそっくりで、そっと携帯で写真を撮る。時計は朝の４時、新規メッセージが１件、パート先の店長から

「本日閉店となりました、連絡が遅くなりすみません」

　今日、一日休みが確定する。

　なぜだか、体の奥底から元気が湧いてくる。微熱のズル休みに似た不思議な感覚だ。

　少しでもこの元気を有効活用しようと、足の踏み場もない散らかり尽くしたリビングをゆっくり音を立てず、忍者のように片付けていく、コップ、靴下等々拾っては片付ける。恐ろしいことに５人家族なのにコップは８個も出ているではありませんか、げに恐ろしや。

「痛っつ」

　さらには、マキビシのようにブロックあり、踏むとまあ皆を起こさぬように声を飲むのも一苦労である。

　綺麗なリビング、全ての床が見えるのは２週間ぶりであろうか。掃除機をかけたい衝動をグッとこらえて、今日の洗濯物を選別する。干せる洗濯物は浴室乾燥可能分のみ、最近の雨で肌着とタオルを最優先にしていたがそろそろ服も洗わねば、選抜した服をネットに入れ３時間後にセットする。

　普段は飲まぬコーヒーを入れてみる。ずいぶん昔、アイツに作ってもらったコーヒーの苦さが心の回復薬なのだ。だれの歌だったか、冷凍保存した暖かな気持ちを味わえるのだ。

　台所のキッチン台と食器棚や冷蔵庫に囲まれた、私の小さな城にこもる。インスタントコーヒーの香りに包まれながら吊戸棚に隠した秘密の書籍を楽しむ。

　子供のママだなと思う。

　コーヒーをすすりながら一息ついて、ポチポチと携帯をいじる。カードの利用歴と口座残高が現実を脳に刻みつける。あー、今日休んだ分どっかパート入りたい。と思いながら小腹が減るが、お腹のぷよぷよがお菓子を我慢させるのだ。大人ではない年を取ったのだ。

　今日のご飯の段取りを考えながら冷蔵庫を開ける。

　パートが休みなら、パート先のスーパーは当然休み、今日のご飯はあり合わせ。

　朝は、みんな大好きホットケーキに決定！

　パンなし、粉あり、卵なし、でもって牛乳もなし。ん－無計画！

　まあ、焼ければなんとかなるだろう。

　シロップはあるので何とかなる。冷蔵庫の奥底から発掘したバターも使い切ろう。

　どうせ子供はシロップで汚すのだ、着替えもせずにだらだらいこう。

　お昼は、いつか買った袋ラーメン＆ニンジン、玉ねぎ炒めに冷凍ブロッコリ添えの栄養あるやろセット。

　夜は、パート帰りの一人飯の友、冷凍食品シリーズからチャーハン＆唐揚げの最強タッグで今日をしのぐことが確定しました。

　最近子供達の食べる量が増えてきた。コメを多めに２合炊でタイマーセットして、昨日の夕飯の洗い物を完了させる。

　なんとか、ドラマ一本を早送りなしで見る時間を確保できた。

　イイね今期のドラマは非常にイイ。

　こうして充実した３時間ほどの、私だけの時間が終わる。