寝取られの素晴らしさを普及するべく、登録者100万人NTR系Vtuber『NTR大好き大明神』として降臨したものの、俺の配信にいつも邪魔しにくる純愛系ヤンデレVtuberが正論かましてきてウザすぎる件
くろねこどらごん
前編
例え大衆の面前であろうと、迷うことなくそう告白できるくらい、俺
そう、愛している。大好きです。今度は嘘じゃないっす。
俺は寝取られが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで堪らないのだ。
寝取られという人類が生んだ究極にして至高の性癖に一生を捧げることを、俺は人生の序盤である十代前半のうちに早々と決めていたのである。
そのことに後悔はない。むしろ誇らしさすらあったが、ひとつだけ問題があった。
「寝取られを嫌うやつが、この世界には多すぎる……」
そう、世間では寝取られに対する風当たりが非常に強いのだ。
恋人を他人に奪われることの素晴らしさを理解できない人間が、この世界では大多数を占めている。
純愛と寝取られ。どちらが好きかのアンケートを以前SNSで試しにやってみたことがあるが、結果は純愛が圧倒的な票数を獲得し幕を閉じた。
あの日は悔しさのあまり、一睡も出来なかったことをよく覚えている。
あの悔しさは、きっと一生忘れないだろう。同時に、俺は誓った。
―――寝取られを、この狂った世界に普及してみせると。
純愛という普通すぎるほど普通なジャンルが、この世の理として存在し、支配している。
そんなの、許せなかった。俺は大よりも、小を救う人間でありたい。
そう――俺は自分が正しいと思った義を貫く、正義の味方になると決めたのだ。
無理だというやつもいるだろう。馬鹿なんじゃないかと呆れるやつもいるかもしれない。
だが、俺の寝取られへの情熱は本物だった。
毛嫌いされている寝取られという性癖を、メジャージャンルへと押し上げる。
それこそが俺の使命であり、生まれてきた意味だと、信じて疑わなかったのだ。
さて、そうと決めたものの、どうやって寝取られの輪を広めるか。それが問題だ。
言葉で説くのは、まず却下。試しに両親に寝取られの良さを小一時間ばかり語ってみたのだが、お袋には泣かれ、親父にはぶん殴られるという散々な結果に終わったからだ。
肉親でこれなのだから、赤の他人に布教するのは相当厳しいに違いない。
そもそも俺は声には自身があったが容姿がいいわけではなかった。
中肉中背のモブ顔男子であり、どこにでもいるただのフツメンだ。
これでは説得力など欠片もない。話を聞いてすらもらえないだろう。
せめてもっと顔が良ければな……そう考えていると、ひとりの女の子の顔が、頭の中に浮かんでくる。
その子は
表情の変化に乏しく、なにを考えているかもよく分からないところのあるやつだが、俺の性癖と好みに完全に一致する、まごうことなくストライクゾーンど真ん中にいる存在。
仮に彼女にして寝取られるとしたら燐子がいいとは、常々思っていたものだ。
さて話を戻すが、なんでここで燐子の顔が浮かんだかというと、あいつの容姿の良さなら話を聞いてもらえるのではと思ったからだ。
辛気臭いおっさん教師より、若い新人の女教師のほうが人気があるのは当たり前のことだからな。
誰だって話を聞くなら顔がいいやつのほうがいいに決まってる。
「とはいえ燐子に頼むわけにはいかないよな……」
長い付き合いだ。無口ではあるが、あいつの性癖がどノーマルであることくらい把握している。
馬鹿正直に「俺の代わりにNTR布教配信してくれない?」なんて言ったら、ドン引きされるだろうこと請け合いだろう。
もう二度と話しかけてもらえない可能性だってある。そんなリスクは犯したくない。
じゃあどうする? どうすればいい?
どうすれば俺は、寝取られを純愛などという間違った概念が支配する世界に普及することが出来るんだ?
悩んで悩んで悩んで……悩むことに飽きたので、俺はティッシュを手に取った。
「とりあえずスッキリするか」
考えていてもわからんものはわからん。俺は
右手に
「さーて、今日はどれにしよっかなー♪ やっぱりここは最近ハマってるあのドSVtuberの囁き罵声NTRASMRを……ハッ!!!」
その時、俺の脳内を電流がほと走る。
「Vtuber……その手があったか!!!」
そうだ、顔がフツメンなら、二次元で補えばいいだけじゃないか!
なんでこんな簡単なことに気付かなかったのか。思わず自分を罵りたくなる衝動を押さえ込み、俺は机へと向かい、タブレットを取り出した。
善は急げだ。まずはキャラをデザインしなくてはいけない。
外注するのがベストなのかもしれないが、幸いなことに、俺は絵が得意だ。
自分のガワとなるVtuberを描くことくらいはできるはず。いや、待てよ……。
「そうだ。どうせならイラストも書こう! NTRイラストで小遣いを稼ぎ、その軍資金で最高のVtuberを作るんだ! NTR系Vtuberに、俺はなる!!!」
ひとつの気付きをきっかけに、湯水のようにアイデアが湧いてくる。まさに天啓を得た気分だ。
己の進むべき道がハッキリと見えた今、もはや迷いはない。
俺は全力で寝取られの使徒として、大いなる旅路を突っ走るのであった。
天啓に従った結果、一年が過ぎた。
中学三年生。寝取られへの執念からか、俺の画力はこの一年でメキメキと向上していた。
ネットに投稿したイラストも、最近では高評価を貰えるようになっている。
ファンサイトも開設したが、入金してくれるうえ、毎回応援してくれる人もいた。有難いことだ。
まぁ中には「寝取られなんてダメ。幼馴染の寝取られは解釈違い。イチャラブしながら朝チュンシチュエーションこそが至高。それを描いて」と要求してくる人もいたけれど、無理なのでスルーされてもらってる。
イチャラブなど、俺の寝取られ道からは外れているからな。
俺は寝取られのために絵を描くのだ。そして寝取られイラストで稼いだ金をもとに、最高のNTR系Vtuberを生み出す。この計画に狂いはない。
純愛を憎む全ての人達のために、俺は高校生になっても寝取られを描き続ける覚悟を改めて固めた。
描き始めて二年目。
高校生になった俺の画力は、ますます上がっていた。
それもこれも、全ては寝取られへの愛故だろう。
肥大化する寝取られ欲求に合わせるかのように、筆のスピードも上がっており、最近はイラストだけでなく、漫画も投稿するようになっていた。
そのおかげか、ファンも増え続けており、高校生になってから始めたSNSのフォロワー数も、気付けば10万人を超えていた。同時にファンサイトに入る金額も、莫大なものになってきている。
時は来たれりだ。
俺はここ二年で温めていた最高のデザインをもとに、Vtuberを作成した。
わずか二年でここまで稼げるとは思ってなかったが、これはもう神が俺に寝取られの王となれと告げているに違いない。ならば、俺はそれに従うのみ。
いつも見てくれている古参のフォロワーさんの中には、「幼馴染の寝取られは解釈違い。幼馴染とイチャイチャを描くべき。そして裸ワイシャツで朝チュンして」と毎回言ってくる人がいたが、幼馴染とは、寝取られるために存在しているのだ。
そんな戯言を聞く気などサラサラない。
「さぁ、始めようか。今日から、俺がお前のマスターだ」
画面の向こうに存在するアバターへと語りかける。
さぁ、始めよう。俺の
そして、現在高校二年生。
漫画家としてプロデビューも果たし、忙しい日々が続いている。初の単行本は飛ぶように売れ、一年も経たずに人気漫画の仲間入りをすることができていた。
同時に、俺がVtuberになって一年が過ぎている。
そのチャンネル登録数は100万を超えており、俺は数多くの信者……もとい、ファンの獲得に成功していた。
今もその登録数は伸び続けている。今日も俺のもとに彼らは集うことだろう。
そう、この
N T R 大 好 き 大 明 神 の も と に
◇◇◇
『
『
配信開始まであと1分。
俺が準備を終え、パソコンの前に座った時には、登場を待ちかねたリスナーによる多数のコメントが、既に書き込まれているところだった。
「フッ、今日も寝取られの風が吹いておる……またヘタレ彼氏が、恋人をチャラ男に寝取られたのだろう。良い一日になりそうだな。フフフ……」
『DMJキタ━(゚∀゚)━!』
『神降臨!』
『寝取られの風とか意味☆不明!』
『相変わらず頭おかしいですね』
『お前の良い一日どうなってんだよ』
登場の挨拶を口にすると、一気にコメントが増えていく。
今日も我が『NTR奪われ絶頂絶叫大明神☆チャンネル』は大盛況のようでなによりだ。
「そんなに慌てずとも、このNTR大好き大明神は逃げはせぬ。我の降臨前から待機している早漏なお主らに、今日も寝取られの素晴らしさを教授してやろうで
『草ァッ!』
『相変わらずダジャレのセンスなさすぎワロリンティーヌwwwww』
『開幕から下ネタとか、今日も飛ばしてやがるぜ!』
『いつも思うが、こんなことやってて担当さんから怒られないの? 大明神の書いてるラブコメ、バリバリの純愛ものじゃん』
ちなみに漫画家であることは公言してたりする。
これも登録数を稼ぐためであり、寝取られを普及するためだ。オレワルクナイ。
「フッ、当然ブチギレられてるが無視しておる。なんなら今も勝手に配信するなとマジギレL○NEが止まらないが、所詮は彼氏もいないアラサーのエセロリの戯言よ。文句があるなら我に寝取られシチュエーションを提供すべく、彼氏を作ってから出直してこいというものだ」
『クズ発言乙wwwww』
『なんでコイツからあんないいラブコメ生まれてんだよ。世界のバグだろ』
『おいコラこのクソクズ漫画家! 人のプライバシー話してんじゃねぇッスよ! あとラブコメ作者にあるまじき発言するんじゃねェー! 電話でろッス! さもないと殺すぞテメェー!!!』
『あ、担当さん来てるじゃん。乙ー』
『合法ロリって存在するのか。でもアラサーかぁ。うん、やっぱいいです』
『BBAはノーサンキュー。世界の常識ネ』
『うるさいッス! こっちは仕事が忙しいだけで作ろうと思えばいつでも作れるンスよ! あとBBA言ったやつも殺すッスッス!!!』
『大事なことなので二度言いました』
『めっちゃキレてるやん。高齢期かな?』
『恋人いないやつって皆そう言うのよね。かくいう俺も童貞だ』
『いつものッスが取れてるとかほんとにブチギレてるやんけ』
ふむ、イレギュラーの登場こそあったが、そろそろ頃合いだろう。
俺は鳴り続けるスマホを無視し一度咳払いすると、マイク越しに声を張り上げた。
「さて、それでは本日のお題に入ろうか。今日はいま話題のNTRゲー『僕が望まない瞬間』を実況プレイしていこうと思うのでよろしく頼む」
『キター!』
『今日も大明神の寝取られトーク、楽しみにしてるぜ!』
『実況すんな! 原稿描け! あと電話でろッスー!』
「うるさい編集さんは置いといて話を続けるが、このゲームは超絶ヘタレ主人公が記憶を失っている間に幼馴染のヒロインたちが次々と寝取られ、そのたびに絶望を繰り返していくストーリーらしい。オラ、ワクワクすっぞ! 純愛ルートもあるようだが、そんなもんは勿論スルーしていくので皆で一緒に脳破壊されよ……」
「待った」
いい流れのまま実況プレイに突入しようとしたところで、突如横やりが入る。
「む、お前は……」
「寝取られなんてさせない。特に幼馴染の寝取られは必ず阻止する」
淡々とした、だけど確かな強い意志を秘めた口調で、そいつは宣言する。
「この私……NTRぶっ
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