中途半端な僕たち

第一章

ふと耳元を掠った雨音。儚げて、まるで1人で泣いているみたいなそんな雨。嫌な予感がして、勢いよく窓に手をつく。

「時雨…」

窓ガラスはとても冷たい。外で警報音が鳴り響く。窓ガラスから警報音の振動や冷たさが手のひらに伝わり、身体がどんどん冷えきっていく。自身の青ざめていく感覚に怯えながら、慌てて玄関に急ぐ。そして靴を履くこともままならず、転ぶみたいに、外に飛び出した。傘を持って走る。走る。目的に一直線に。不気味な警報音に押されるように、ただ走る。

―――

息を吐く間も無く、崩れた石垣からよじ登る。目的地、病院に到着だ。小さな町の頼りの病院。昔からよく知っている場所だ。高い石垣に囲まれた建物。入り口は黄色のテープが張り巡らされ、立ち入り禁止となっている。仕方がないので、崩れた部分の石垣から石を取り、一階の窓ガラスを割って、そこから入る。嫌に静まり返った院内。もうみんな避難したのだろうか。ふと気配を感じて傘を振る。遠くで雨の滴る音がする。

階段を登って登って、とある病室を目指す。後ちょっと。もつれるみたいな足取りでたどり着いた先のドアを力一杯スライドする。

「いない…」

中には、誰もいなかった。バウンドしたドアが後ろで勝手に閉まっていく。ベッドのシーツはぐちゃぐちゃで、破れた上着が一枚だけ。病室の入って真っ直ぐ見た位置にあった窓の外から、細くて弱々しい雨が室内に降り注いでいる。そうか。全てを理解したように窓に近づく。

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