電気仕掛けの遊園地

@o714

書きかけの地図


 すぐ近くの棚は数週間放っておいた郵便受けの中そのもの


 山積みのパンフレット なんと見事な地図だろう!


 園全体をありえない場所から見下ろす構図


 注釈の潰れたような小ささこそ


 計算ずくみの視線誘導




 棚の隣の段ボールをそっと開く


 行き先の宛名はスペイン城


 中から飛び出すのは完成された肢体


 頭の上辺じょうへんからつまの先まで人工物


 ここまでぼくらとほんの違いもない




 球体関節の手足は手袋とストッキングで守られ


 ちらと肌から覗いた彼女の半生を示すただ一つの落書き 

 

 『スペイン城より』


 なんとなく悔しくなって ぼくは少しだけ書き加える


 するとあれだけ完全だった彼女のバランスは傾ぎ


 雑多なパンフレットのようになった

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

電気仕掛けの遊園地 @o714

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る