おとぎ話
@botannokijo
第1話
玉手箱を開けた青年は老人に変わり…竹から光る姫が現れる…。不思議な話がもし本当にあったことだとしたら…。
29xx年 人々は皆一人一つ、才能を手にした。それは灰色の脳細胞であったり、30世紀最大の芸術家になりえる画才であったり…はたまた背中から羽が生えた者もいた。
突然何かわからないものが突然与えられ、当初社会は当然混乱したがすぐに人々は適応した。一年もすれば法律の整備や才能の研究が急ピッチで進められ、急激に社会は変化した。しかし、一部の人間たちが才能の事を理解しても大衆が普通の身体から大きく離れた外見を持つ者達のことを受け入れられるはずもなく、やがて一部の身体が変化する類いの才能を持った者達は差別を受けるようになり、それにともない才能を持たない者達への差別もじわじわと広がりを見せた。それも半世紀程前の…まだ人々が才能に適応できていなかった時の話で今は差別反対の運動が行われた影響で法改正が進み「異体能力者差別解消法」という法律もでき、段々とそれらの差別は取り除かれていった…というのが今私が死んだ目で受けている今日の公共の授業の内容である。
なぜ私が死んだ目で授業を受けているのかそれはそんな耳タコで聞いてきた話はもう飽き飽きだというのと、差別はまだ…あるということだ。皆表面上では才能の内容などその人の個性の一部でしかないと認識しているように見えるが、社会で生活を送る以上小さな差別というのはどうしても受ける。例え受ける側も与える側もさほど意識していなくとも…潜在的に、無意識的に、それがあるのだ。
――キーン コーン カーン コーン
どうやら授業は終わったようだった。
「では、今日はここまで」
「ありがとーございました~」
ザワザワ ザワザワ
「なぁ!今日暇?久しぶりにカラオケ行こーぜ!」
「ごめんなさい、今日も部活があって…」
「マジか~次はこいよー」
クラスメイトに話し掛けられるがカラオケの誘いは断る。今日も今日とて部活の練習があるのだ。…そろそろだろうか。
「先輩!!!!」
…!…来た
「おっまた来たのか~後輩ク~ン」
「うっす…失礼します!」
「あはは!また後輩君来てるよ~」
「毎日飽きないね~笑」
彼はメシア私の部活の後輩で、一年生。なぜか毎日私のところへ放課後やってくる。…そんなに私は信頼がないのだろうか?サボったことはあまりないのだが。
「今行くよ」
「早く行きましょ! メティス先輩!!」
「うん(笑)」
私の名前はメティス、この学校の吹奏楽部に所属している高校2年生だ。この学校の吹奏楽部は強豪でほぼ毎年世界吹奏楽大会に出場している。…だからそれ関連の才能持ちが当然多い、今目の前に居る彼もそう、当然私も…と言いたいところだが私は違う。私に音楽の…楽器の「才能」はない。
おとぎ話 @botannokijo
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