異世界転生させたいなら俺を癒やしてからにして貰おう。

溶くアメンドウ

第1話 邂逅

「(威厳のある女性の反響した声が脳に直接響く)目覚めたか…選ばれし勇者よ。お前にはこれから暗黒騎士達に支配された世界・ギルストナトラーシャを救いに転生して…(一瞬間を空けて岸○露伴風に)『だが断る』…だと?」


「(フランクな女性の声になって)ま、まあそう無碍にするもんでもないって? 神様に恩を売っておけるよー?? 次の転生とかめっちゃ優遇しちゃいますけどね〜〜?? え、姿も見せない自称神様なんて不埒な奴に手を貸す気はない?…(呟く様に)あれ? 日本の若者は皆ノリノリで転生してくれるんだけど…おかしいなぁ」


(手を叩く小気味良い音が辺りに響く)


「(頭上から先程の女性の声)ゴホン、改めて。私が神だ、えっへん。(間の抜けた声で)ゔぇ!? よくも運命的に結ばれた幼馴染との結婚式中にシャンデリアが落ちて来て死ぬなんて死に方を…って? (あわあわとひとりごちる)あれ、なんかおかしくね? (気さくな感じで)ちょっと私の膝枕のままで待っててね!」


(ゲームの設定画面を操作している時の様なサウンドが流れていく)


「(聞こえるか聞こえないかの声量で)えっと…生命認証システム…Sの…2000番台の…んんん…あれ? …2000年代の若者なのにタグが…年齢が85…85!? …ふむふむ…」


(設定画面を閉じたような音が響き、神の深呼吸する息の音が耳元でする)


「(愛嬌全開)ごめん〜間違えて殺しちゃった⭐︎」


「(カワイイ声で)イタイイタイ!! ほっぺ引っ張るなー!!」


「(如何にも神様然とした凛とした声音に変わって)申し訳ない事をしてしまったな、人の子よ。今回の転生は完全に此方の手違いによるものだ、本当に申し訳ない」


「分かる。元の世界に戻してやりたいのは此方としても同じなのだが…(フランクな声に戻る)神の世界のルール的にダメなんだよね⭐︎」


(激しい衣擦れの音)


「イデデデデ!? ほっへほれふ〜…お、落ち着いて下さい。私を倒したところで第二第三の神が現れて…じゃないくてね?」


「(再び凛とした声音に戻って)此方に非があるのは全面的に認めた上で図々しいのは承知だが、ルールで貴方様には異世界転生して貰わなければなりません」


「そこで! 特例的にチート能力を5つ差し上げるのでどうか転生を…(またも間抜けな声で)へ? そんなもん要らないから俺の幸せの絶頂からどん底へ落とされて傷ついた心を癒せ…って」


「(若干震え声で)そんなんでいいんすか!?」

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