第56話 謀反の終焉(2)
「ウォン、覚悟!」と。
ウルハから受け取った大刀を振り上げ、天空へと掲げたエリエだったらしい。
だから当の本人であるウォンも。
「ッ……」
死を覚悟したらしい。
でもさ、エリエは、僕の仇をとるために大刀を土壇場で振り下ろせなかったらしい。
アイツ、アイカの奴が。
「エリエ、お願い辞めて! ウォンを殺さないでお願いだから……」と。
再度エリエにウォンの命乞いをしたらしいから。
それもアイカはなりふり構わず。
「エリエ、お願い。お姉ちゃんの大事な物をもうこれ以上殺さないでお願いよ……」と。
「エリエー! お姉ちゃん! 健太も死んでぇっ! ウォンまで失ったらぁっ! 気が振れてぇっ! 可笑しくなるかもしれないー! だから今回はお姉ちゃんの顔に免じて許してよ、ウォンの事をお願いだから……。頼むから……。一生のお願いだから……。頼む! 頼むよ! エリエ! お願いだから……。うわぁ~、うわぁ~、ん。あぁ~、ん」と。
アイカの奴は僕が死んだからもういいや?
地球人じゃないから、喪に服さなくてもいいし、遺骨さえいらないや、とでも思ったのかな?
それともあの時のアイカは本当に気が振れたのかな?
その辺りは僕は死んでいたからわからないけれど。
アイカの奴は自身の本音を、あの集落の大半の者達がいる中で。
アイツは気が振れたように泣きながら、何度も土下座──。
プライドの高いアイツが何度も地面に頭を当てながらエリエに嘆願をしたらしいよ。
僕の時にはアイツ、虐めた奴等やウォンに対して、泣きながら叫び、地面に頭を当てつつ命乞い……嘆願すらしてくれなかったのに。
ウォンが死ぬとなったら、形振り構わずしたらしいから。
アイカもウォンもマジで気持ち悪いと言うか?
あの集落の人間関係が、マジで嗚咽を吐きそうなぐらい僕は気持ち悪いのと。
お前等が僕の意思とは無関係に日本から召喚したんだろうがぁ!
それにアイカ!
僕のことがいらないならば、何故シルフィーから奪った?
もしかしてウォンがシルフィーへと言い寄り、夜這いをかけたのが気に入らないから。
シルフィーへの当てつけで僕を寝取ったのか?
まあ、今更どうでもいいことだけれど。
僕はあのまま集落にいたらウォンとアイカに殺されそうだから。
今二人から逃走を図っている訳だから、どうでもいいよ。
まあ、他の奥さま達には悪いと思うけれど。
あの時にプラウムの言葉を聞き、ウォンをしとめなかった、エリエやその他の者達も悪いのだから致し方がない。
僕はアイカを含めて奥さま達のことを心から信用はしていないからね、と。
また僕の愚痴が長くなってごめんなさい。
また話しを元に戻すけれど。
ウォンが生きているということだから。
アイカの気が振れたように泣きながらの、ウォンの助命嘆願をエリエは聞き入れることになる。
更にあの阿保が、騒動の最中に。
のこのこと戦場に現れたみたいだから。
◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます