第52話 鎮静(1)

「ウォン! ぶっ殺してやるー!!」


 ウルハは怒声を吐きつつ、ウォンへと猪突猛進したらしい。


 でも最初の一振りは、ウォンに避けられたらしいけれど。


 二発目は、ウォン胸を掠めたらしいから。


「チッ!」と。


 ウォンの口から舌打ちが漏れたらしい。


「ウルハ! もう辞めてぇ! もう争わないでぇ! お願いだからぁ~! わらわの目の前でこれ以上、死人を出さないでぇ~! お願いだから~!」


 アイカの奴は、僕の時と一緒で懲りずに、ウォンを大刀で切り刻んでやろうとしているウルハを止めたらしい。


 でもアイカが、ウルハが剣を振るうのを止めても、僕が生き返る訳でもない。


 それに先ほどアイカの奴が、やっと僕の妻らしく、しおらしく、他人の男のために命乞いをしてみたら。


 僕があっさりと死んでしまったので。


「ウルハ! アイカ姉の言うことなんて聞かなくてもいいよ! アイカ姉の言うことを健ちゃんは夫らしく素直に聞き入れて、ウォンに殺されてしまったのだから。ウォンには気が抜かない方がいいよ」と。


 サラはウルハに低い声音……。


 そうサラはウォンだけではなく。


 姉のアイカに対しても憎悪を募らせていると言った姿勢を見せたらしいよ。


 だからサラの口から。


「ファイアーボブ!」と。


 無詠唱で魔法攻撃が発動され、直ぐにウォンの腕へと直撃──!


「うわぁ、あああっ! いてぇ、えええっ! あちぃー!」


 ウォンは悲痛な顔をしつつ叫びながら。


 火の付いた自身の腕を慌てて振り、消火に当たる。


 でも魔法の火は安易に消えないから。


 ウォンの奴は慌てて地面へと転がり、クルクルと転がりつつ。


 自身の腕についた火を絶叫を吐きつつ、消し始める。


 だからウルハの足蹴りがウォン身体へと直撃したらしいから。


 アイカの顔色が一気に変わり。




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