第39話 謀反(2)

 でも先ほど、僕が告げた通りで。


 ウォンはオークの男戦士最強を自負している男だから。


 僕の傾奇者、ヤンキーな奥さま達の攻撃も上手く交わし、避け──。


 ワン! ツー! と、あいつの重たく、硬い拳を繰りだしては強打──。


 そして蹴りを次から次へと入れていくから。


 僕の奥さま達の口から。


「きゃぁ~!」と絶叫が放たれて地面に倒れていくから。


 またこの場が、怨嗟が漏れる殺伐とした光景へと移り変わった。


 でも、周りの様子……。


 あの時の戦場の様子を注意深く窺っていたサラがまだ残っていたからね。


 サラはウォンが下を向き。


 また新たに地面に転がった奥さま達や僕のことを蹴り始めると。


 その隙を突き──。


 サラは素早くウォンの横っ腹を狙い蹴ると。


 今度はウォンの膝の関節を狙い、蹴りを入れる。


 だからウォンは「うがッ」と悲痛な声を漏らしつつ、自身の脇腹を押さえながら状態を崩すから。


 サラは状態の崩れたウォンの顔へと回し蹴りの大技を入れる。


 だからウォンの巨躯は数メールも後方へと。


 そのまま飛んでいき、地面にへたり込んだ状態で。


 ウォンは、「うぅ、ううう」と悲痛な声で呻るから。


 僕も、だけじゃないよね。


 あの場にいた者達が、サラがウォンを仕留めたとばかり思っていたよ。


 だってサラは、まだファイティングポーズをとることを辞めてはいない。


 戦意だって剥き出しの状態──。


 そう、自身の夫を侮り、愚弄をした男へと天誅──裁きを入れるつもりでいたから。


 ウォンが地面にへたり込み、呻る様子を凝視すれば。


 サラは再度ウォンへと詰め寄ろうとするけれど。


「サラー! ウォンとの争いはぁ! もう辞めなさい! これは酋長としの命令だから辞めなさい! そしてもウォンも! 他の者達も争うのは辞めなさい!」


 サラの勇んだ勢いと覇気をアイカのバカが状況をちゃんと把握していない。


 そう、ウォン自身は、まだ謀反をおこなうのを諦めてはいないのに。


 サラがウォンへの止めを刺すのを止めるから。


「何でアイカ姉は、ウォンを庇い、止めるの? あいつは健ちゃんに逆らい……だけじゃない。アイカ姉が何度もやめるようにと諫めたのに。ウルハやその他の娘達をなぶりものにするとか。健ちゃんのことを殴り、蹴りを続けたんだよ。それなのに何故アイカ姉は、サラ達を止めるの? それって絶対に可笑しいよ?」


 サラがアイカへと太々しい顔をしながら不満を漏らし、姉妹の口喧嘩が戦場でおこなわれた。


 まだ争いの方は終焉していないのにね。


「サラ、それでも辞めなさい……。後でわらわがウォンとも話しをするし、ウルハ達や家のひとともちゃんと話しをして、後に恨みが残らないようにするから。ねぇ、良いでしょう、サラ? お願いだから、わらわの意見を聞き入れてお願い……」と。


 アイカのバカがウォンへと情を入れたから。


 ウォンの奴はまた調子に乗る。


 あいつは痛みが和らぐと姉妹で口喧嘩をしているサラの背後へと慌て詰め寄りドン! だ。


 だから今度はサラの口から。


「きゃぁ、あああっ!」と絶叫が放たれた。



 ◇◇◇




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