第30話 妻ではなく、酋長として(2)

 先ほども告げた通りで、僕のことで不満を抱いている者達と。


 何かしら密約したのだろうと思う。


 アイツは血の繋がりを気持ち悪いくらい大事にしているからね。


 自身の失態も笑って誤魔化すことすらしないで。


「それでもわらわはウルハ達の件も、あいつらと一緒のように素知らぬ振りをしてやっただろう。だからそれで良いだろう、ウルハ?」


 アイカはウルハに告げると。


「ほら、皆、話しは終わったから。とっとこの場から解散しろ」と。


 自身の手を振り、ジェスチャーしながら告げた。


「はぁ~、何がこれで良いだぁっ! アイカー! 家のひとがあいつ等にどんな目に遭っていたか、あんたは知らないから。そんな平素を装うことができるんだよ! いい加減にしろぉっ!」


 先ほどから地面で横たわり、泣いている僕のことを無視続けるアイカだから。


 ウルハがアイカの様子を見て納得をする訳ではなく。


 あいつは呻り、吠え始める。


「アイカ姉ー! ウルハの言う通りだよ! 健ちゃんに対してあいつらは大変に酷いこと。健ちゃんの心に傷を残すことをしたのだから、ちゃんと罰してよね。集落から追放をするとかさ」と。


 ウルハに続きサラがアイカへと不満を告げた。


「そうだ! そうだ!」


「ウルハやサラの言う通りだ!」


「家のひとは、この集落の男王なのに、こいつらは楯突いたんだ! それなのに罰せられないのは可笑しいよ!」


「本当だ! この娘の言う通りだ! 男王に楯突き、乱暴を働いた上に、罰せられないなんて話は、どう考えても可笑しいよ、長?」


「そうだ! そうだ!」


「この娘の言う通りだ!」


「こいつらをちゃんと罰しろ! 酋長!」と。


 ウルハとサラの不満に続くように。


 他の奥さま達も、男王である僕の楯突き、暴力を振るったのだから罰しろと騒ぎ始めるから。


 この場がザワザワと騒めき始める。


 それでもアイカはウルハやサラ、その他の者達の意見も聞き入れず。


「最初に男達に手を出したのは、ウルハ達だと聞いているぞ。もしも彼等を罰するならば。この争いを起こしたウルハ達も罰せねばならぬようになる。だから今回は喧嘩両成敗だ。それで良いだろう、お互い共?」


 アイカは僕の気持ちを無視した喧嘩両成敗──寛大な大岡裁きをして魅せた。


 まあ、ここまではアイツも上手くことを運んだと思うよ。


 確かに男達の件をアイカに報告──相談をする前に。


 ウルハ達は殴りかかってしまった訳だからね。


 ウルハ達も「チッ!」と舌打ちをする悪態や。


「クソ~」


「歯痒いなぁ」と。


 アイカに悪態をつくだけだった。


 でもさ、アイカは、乙女ゲームの悪役令嬢みたいなところがあるからね。


 この後の措置を間違える失態を犯してしまう。



 ◇◇◇







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