第17話 僕への虐めの始まり(1)

「健太、今日も頼むぞ!」


 いつもアイカさんの言葉から始まっていた。


 僕の主夫業洗濯……。


 その後はエリエさんやプラウムさん、サラちゃん──。


 僕の奥さま達から。


「がんばれ!」


「頑張って!」


「健ちゃん、ファイト!」と、労いの言葉をもらい洗濯場へと向かう。


「あなた~、今日もお疲れさま~」


 移動の最中にシルフィーの家へと寄り。


 あいつから熱い口づけをもらいつつ、洗濯物を受け取り。


 僕は自身の顔を『でっ、へっ、へへっ』と緩ませながら、また洗い場へと移動──。


 すると田舎の畦道と余り変わらない道を閉鎖──。


 僕の行く手を阻むヤンキーな御姉さま達が多々……。


 傾いた、奇抜な化粧さえ落とせば。


 みなさん、アイカさんの従姉達であるから。


 ウルハさんを筆頭に、他のお姉さん達も粒ぞろいの美人さま達ばかり。


 そんな御姉さまや彼女達から。


「ほら、あんた。今日もうちのも汚れ物も頼むよ」


 ウルハさんがいつもの調子で強引に篭へと洗濯物を入れれば。


「はい、あんた。うちのもね」


「健ちゃん、私もの」


「うちのも健ちゃん、汚れ物入れたから、頼むね」と。


 僕が抱える洗濯篭の中へと次から次へと。


 自身の洗濯物を入れてくるから。


 僕が抱える洗濯篭は、あっ! と言う間に。


 女性の下着や衣服で一杯になる。


 だから僕は篭の中を覗いていつも。


「はぁ~」と溜息を漏らしていたよ。


 でッ、漏らし終えれば。


 僕自身も、致し方がないと諦め。


「それじゃ、みんな、いってくるね」、


「頑張ってきます」と告げる。


 するとウルハさんやヤンキーのお姉さん達は、僕の許へと慌てて集い。


 チュ! チュ! ブチュ~! と。


 キス! 接吻と言う奴を。


 僕の顔や身体にしてくれていたから。


「でっ、へっ、へへっ」と。


 思春期の僕はその都度。


 自身の眼尻と口の端を下げ。


 鼻の下を伸ばしつつ。


 フラフラと歩きながら洗濯場へと向かっていた。


 ここまでの道のりの間……。


 至るところで、色々な人達から。


 そう、僕の産まれ故郷の日本でお馴染の、異世界ライフらしいハーレム仕様のモテ期の様子を見られているとも知らずに。


 一人でフラフラとまた歩き始めるのだよ。


 まあ、最初の僕はね。


 シルフィーも含めてだが、ウルハさん達、ヤンキーの御姉さま達から。


 僕自身が抱える洗濯篭へと、彼女達の汚れ物で一杯にされる度に。


『何で僕が、自身の家族以外の女性ひと達の洗濯物を洗わないといけない訳?』、


『これって絶対に可笑しいよね?』、


『もしかして、僕は苛めに遭っているのかな?』と思いつつ。


 不満ばかりを漏らしながら歩いていた。


 だってこの頃の僕は、集落内の決めごと政でね。


 女性の汚れ物を洗い、返却をすると婚姻関係が成立すると言うことをまだ知らない。


 だから僕は独り言で不満ばかりを漏らしつつ、歩いていた気がする。


 ウルハさん達、ヤンキーの御姉さま達が。


 夫である僕を苛めるはずなどないのにさ。


 不満ばかりをブツブツ言いながら洗濯場へと向かい。


 洗濯を終え。


 ウルハさん達に洗い終えた洗濯物を渡すと。


 シルフィーと一緒で。


『あんた~、愛している~』


『健ちゃん~、大好き~』


『あんた~、チュを一杯してあげるね~』


『うちは健ちゃんを優しく可愛がってあげるから~』と。


 ウルハさん達、ヤンキーの御姉さま達は。


 洗濯を終えた僕のことを黄色い声を漏らしつつ、魅惑的に労り、労ってくれた。


 だから最初の二、三日は、大変に不快な顔をしていた僕ではあったが。


 毎日オークの麗しい女性達から愛情を一杯もらえるとわかれば。


 段々と、その気、やる気が湧いてきて、自分で進んで洗濯を受け取っていた気がするよ。


 集落の人達に沢山見られていると言うことは?


 アイカさんやエリエさん、プラウムさんにサラちゃん等の耳に入っている。


 特にアイカはあの集落の酋長だから、オークの若い男性達からも。


 僕のことを何とかして欲しい。


 このままだと、自分達の許へと嫁がきてくれないとか。


 自分の嫁を寝取られてしまうから。


 ハーレム王化している僕のことを諫め、止めて欲しいとか、言っていたのか?


 僕自身もどんな陰口を、あいつ等に言われていたかまでは。


 アイカに尋ねたことがないから。


 僕自身もよくはわからない。


 でもさ、僕は、あっさりと自身の嫁──アイカを他人に寝取られたから。


 あいつ、アイカの奴は僕に対して、かなりの不満を抱えていたことは間違いないと思うと。


 僕が説明をしたところで、話しを過去の回想シーンへと戻すけれど。


 まあ、集落内の女性達を僕に全部奪われてしまうのでは? と。


 嫉妬心のために可笑しなことを妄想していた彼等だから。


【亭主元気で、留守がいい】仕様……。


 最初の頃は、洗濯物の量が多いいからと。


 暇な御姉さま達は、僕の洗濯の付き添い。


 汚れ物を洗うのを手伝ってくれていた。


 でも、数日経てば。


 基本オーク種族の夫婦は、男性が主夫業をするのが当たり前だから。


 誰も同行してくれなくなり。


 僕は一人寂しく、おじいさんは川へと洗濯へと向かうようになる。


「おっ! きたきた! チビがきた!」


「クソチビがきた!」


「歯痒いチビがきた!」


「殴ってやりたい程憎い、チビがきた!」と。


 だから、その他にも、色々な悪態が僕の耳へと聞こえくるようになる。



 ◇◇◇




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