第1話 僕の口の中で動く物は何だ?

「うご、うご。うぐっ、ぐぐぐっ」


 まあ、あの日! あの時の僕はね、自分の口から声にならない言葉を漏らしてしまったのだ。


 だって僕が目覚めると、自分の口の中に異物が混入していたのだ。


 だから僕は声にならない言葉を漏らしつつも、自分の口内……己の舌を使用しながら抗い。


『な、何、これは? この柔らかいものは?』と悩み、困惑すれば。

『僕の口の中で柔らかい物は激しく動き、舌に絡んでくるけれど。これは一体何? 何だろうか~~~? 誰か教えてくれよ~~~? おねがいだよ~~~? 頼むよ~~~!』


 僕は一息つけば直ぐにわかりそうなことを目覚めたばかりで意識も朦朧としていたこともあり。本当に馬鹿らしい絶叫を声にならないのに上げた記憶がある。


 でも、まあ、仕方がないよね?


 だって僕は塾の帰りに自分の愛車の自転車──健太Jr号のペダルを勢いよく蹴り、回しながら自宅へと向け、帰宅の最中に。


「あら~、健太~。大きくなったわね~。お姉ちゃん嬉しいわ~、おいで~!」


 まあ、僕の空耳かも知れないけれど。僕が異世界へと強制転移をされる前に、若い女性が微笑みながらの台詞が耳へと聞こえてきたような気がした?


 だから僕は『あれ?』と思い。愛車、健太Jr号のペダルを勢い良く回す行為をやめて立ち止まり。

 僕は辺りをキョロキョロと見渡しながら確認をとるのだが。声の主さまは見当たらない。


「帰ろうか……」


 僕は独り言を呟けば気持ち悪いので、慌てて愛車健太Jr号のペダルを勢い良く回し。その場から逃げるように帰宅の途についた。


 でも僕はどうやら女神さまに狙われているみたいだから、逃げることもできず。直ぐに僕の頭上……。


 そう天空からね、雷さまなのか? 女神さまなのかは? 僕自身もいまだにわからないけれど。

 天空で雷が『ピカー!』と光れば。

 その後は落雷と言う奴が僕の頭上へと、異世界ファンタジーの物語らしく冗談のように落ちてきた。


 だから僕の身体はビリビリと痺れるから。


「うわぁあああっ!」とセオリー通りに絶叫を上げ。


 その後は意識が遠のき、他界をしたと思っていた僕が目を覚ませばこの通りで……。


 僕の唇に何かしら柔らかい物が触れ、口内では柔らかい物が右往左往と凶悪に暴れ回っている状態だったから。

 あの日の僕は自身の瞼を恐る恐ると開け、女神さまからの贈り物……。


 そう僕が異世界転移をして女神さまからセオリー通り頂いた強力なアイテム……大変に高貴で高価な物を見て驚愕──!


 その後驚嘆もしたのだった。


 

 ◇◇◇




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