砂夜の少年騎士団(ヴァル・グランツ)の復活
倉村 観
プロローグ エピソード0
プロローグ 天炎霊化のアイ その1
7月31 日 午前2時30分
『佐奈橋 重自(サナハシ ジュウジ)』
は、丑三つ時を過ぎたこの時間にもかかわらず、 四輪駆動のゴツい愛車で暗い峠を駆け抜けていた。
重苦しく金属音を鳴らす相棒の鳴き声と共に
僕もまた重苦しいため息を、漏らした。理由は二つあった。
一つはシンプルにかれこれ5時間もヒトの野暮用の手伝いで運転をさせられていることに心底疲れたから。
二つ目は同乗者の事だ。 ジュウジは自分の他に現在、後部座席に一人だけある女性をのせている。 そもそもこの女性の頼みで車を走らせているのだ。
名前は 篠原 ミナミ 彼女は相当な美女だが、その美貌の特徴的は非常に丁寧に手入れされている滑らかで輝かしい銀髪や抜群のスタイルなど、誰でも見ればひと目でいかにも気を使って作り上げ、そして維持していることがわかるようなものだった。
そのため、彼女自身は常に呑気に気の抜けた非常に温和な性格をしているものの、彼女と何かしらで関わり合いいになった事もない人間は勝手に彼女が厳格かつプライド高い性格と勘違いし、なおかつ彼女には何処が近づきづらい雰囲気もあったため周囲は特に異性、つまりは男性からは敬遠されており、また彼女自身もその事を全く気にせず、積極的に人と関わろうとはしないため、新年度からこの半年間同じゼミ生の人間でも、彼女と会話もしたことがない人間はジュウジを含め、少なくなかった。
一方ジュウジには3年付き合っている野々原 キリミという彼女がいる。
彼女は特段嫉妬深い性格ではないのだが、5つ年の離れた妹がいる、この妹、カオリちゃんは、これまた、近年稀に見る絶世の美女で、その妹と昔から比肩されて生きてきたせいで、特別同性の美人が大の嫌いだった。 つまりはジュウジは今、自分が置かれている状況を彼女にもしバレたら、なんて頭がよぎるだけで、頬を膨らませた彼女の顔が目に浮かび、ため息が出るのだ。
「あの…ごめんなさい…。 その…私冷静じゃなくて…。」
ミナミはジュウジのため息を聞いて、言葉を漏らした。
「無理言ったのは…わかってる…けど…どうしても…」
「いいですよ。 そのことについては…僕も納得して付き合ったんだ…それはいいにしても…ほんとに貴方の地図合ってるんですか?」
ジュウジはナナカの言葉を遮り、カーナビを指さしながら、怪訝な顔で尋ねた。 カーナビに写っていたのは現在地表すピンとその背景には道や建物といった地図的な表記はなく、ただシンプルに一面真っ青であった。
「ナビ…これ…日本海?…ナビはこの通りバグってる…貴方の持っているその地図だけがだけが頼りです。 まぁまず第一目的地を検索しても、引っかからなかった時点ではなからアテになんてならなかったけど」
ミナミはそれを聞いて、一旦カバンにしまった地図を探しもう一度開いた。その様子をジュウジはその様子をルームミラーでなんとなく眺めていたが、彼女がカバンを開いた時に一瞬だけ光った地図とは違うナカミを見逃さず、驚愕した。
「あってます このまま直進で…キャッ!!」
ミナミが口を開いたと同時にキキーと金切り音を鳴らし車は急停車した、ミナミはシートベルトをしていたものの、あまりの衝撃に前方の座席に頭軽く打った。
「いてて……どうしたんですか?」
彼女の問いかけにジュウジは低い声で言葉を発する。
「………このまま進む前に一つだけ教えて…君はどうして…その…『リュウナキ村』に行きたいの?」
押し黙ったミナミをルームミラー越しに見て振り向き更にジュウジは真剣な表情で言葉を続けた。
「そのカバンのナカミ…見えちゃったんだ…蒼色に光る…大きな…ナイフ…料理用のサイズじゃ無い…今まで話したこともない僕を頼りにするほど…どうしても…急ぎのようがあるとするなら…僕は君の目的は最悪なものだと想像してるんだ……だから話し…」
ジュウジの言葉が終わるより先にミナミがカバンに入っていたナイフを素早くジュウジの喉仏に突きつけて言った。
「正解よ」
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