カタコト留学生女子がニートの俺を全肯定してくれる。~なお文化の違いにつきスキンシップあり~

或木あんた

第1話 「ニート」


//扉が豪快に開く音



「――師匠! ただいま、デス!!」


「……Оh、どうしたんデスか師匠、変な顔して?? Ahー、急にドア開けたから、驚きマシタか?」


「……え?? ナンデ毎日、俺の部屋に帰ってくるかって? ……YES、それはモチロン、師匠がNEET(めっちゃ発音いい)だからデス。ワタシ、NEETとても憧れマース。……だからアナタはNEETの師匠なのデース!」

 


「驚かせてしまい、ゴメンなさいデス! デモ、こないだ師匠のパパに言われたのデス。『ホームステイ中は、師匠の部屋にいつでも自由に出入りしていい』ト」



//ボフッと、ベッドに座り込む音。


「師匠ー、今日もワタシにNEET! 教えてくださいッ!」


「……? その前に質問デスか? もちろんデス! ふふ、なんでも聞いてください」


「……名前? エミリア・テイト、デス。エミリーと呼んでください。年齢は17で。いわゆるJKというヤツデスネー☆」


「……国? UK、イギリスのロンドンから来マシタ。ニホンのアニメが大好きで、将来は日本語の通訳になりたいのデース!」


「……? 何カップ? ……ええと、スミマセン、どういう意味デスか?」


//近づくような、ベッドの衣擦れの音。


「……? 師匠、わかりませんデシタ。もう一度言ってクダサイ。……? どうしてそんなに顔が赤くなっていマスか? 師匠、意味がわからないデース」


「……もういい、って、……変な師匠デスネ」


「……なら、次はワタシから質問、いいデスか?」 


「…………」


「……し、師匠……」//急にもじもじと緊張したような息遣い。



「………師匠は、その……………イギリス人は好き、デスか?」



「……日本の男性、ワタシはとても好きデス。優しくて礼儀正しい人が多くて、皆さんとてもステキだと思いマス」


「…………」


「…………師匠は、どうデスか?」//恥ずかしそうな口調。



「……イギリスの女の子、……魅力的……デスか?」



「…………ええと」


「……やっぱり、魅力ナイ……デスか?」//しゅんとした口調で。


「……!」


「…………ッ、本当デスか? ………ッ」// 心底嬉しそうな声音と息遣いで。


//2人がベッドに倒れこむ音。ギュッと抱きつく衣擦れの音。


「――アリガトウゴザイマスッ。 ……ワタシ、とても嬉しいデス!」


「……一般的? ……NO、そんなの、関係ありマセン。……それに『一般的』でもそれは脈アリということデス。それだけでも充分デース! フフ☆」


「NO。離れたくありませんッ。……それだけ嬉しいのデス。……? そういう問題じゃない? 他に何の問題がありマスか? あ、もう……師匠~~冷たいデスー」


//ベッドが軋む音。声が至近距離から遠ざかる。



◇◇◇



「……ところで師匠、NEETについて、ワタシ、聞きたいことがありマス!」



「……NEETは、いつも、何をしていマスか?」



//少しの間。


「……エ? 何もしていないのデスか? それはニホン特有の『エンリョ』デスか? ……違う? よくわからないデス、詳しく教えてクダサイ!」


「……エンリョじゃなく、ホントに何もしない、デスか。……何もしないコトをスル? ……WоW、……NEET、奥が深いデス! 肩肘ハラズに、寝転がってボーっとする、デスか。……わかりマシタ。……では、師匠、一緒に何もしないコトをしましょう!」



//ボフッと、2人がベッドに倒れこむ音。




「…………」//息遣い




「……n……」//ウキウキな音声




「…………」//息遣い




「…………h……」//ウキウキな音声




「…………nん? どうしたのデスか師匠、真っ赤になってッ? エ? 気まずくて恥ずかしい? もしかして師匠、これがあの有名な、ジャパニーズ、ヒトミシリ、というヤツデスか!? ……WOW、ホントにアニメみたい!」



「……NО、別にバカにしてません。……ただ、照れる師匠をみていると……」



「…………ッ」//照れるような息遣い。



「……あの……えと……、なんというか、…………sо cute……」//恥ずかしさを堪えつつ絞り出した声。



「……n、……s、師匠、あまり見つめないでクダサイ。……そんなに見つめられると、こっちまで恥ずかしくなってきマス……」


「…………ッ」//照れて目を逸らす音声。


「……n……もうッ」//少しはにかむ声。



「……umm~~、師匠~~、イジワルしないでクダサイ……ッ」




 ◇◇◇




「……んむう……何もしないコトをする、ムズカシイデス……」


「……質問? 何デスか?」


「……どうしてNEETになりたいのか、デスか?」


「…………」


「………実はずっと、憧れていマシタ。……ニホンのアニメに出てくるNEETは、ミンナ面白い人ばかりデスし。……それに……」


「――女の子にすごくモテマス!」


「……? ……イエイエ、ワタシ別に、YURIではないデス」


「……え? それにモテるのはアニメの中だけ? 現実は甘くナイ……そう…デスね。たしかに、ソウかもしれマセン……でも」


「…………」



「…………甘くないセカイで、今日もちゃんと生きてマス。……それだけで、じゅうぶんかっこいいコトだとワタシは思いマス……」//優しく呟くような声。



「……だから、ワタシ、……NEET、好きデスッ」


「……師匠。……師匠は、NEET、好きデスか?」


「……わからない、デスか? せっかくNEETなのに、なんかもったいないデス。……そうだ」


//腕に抱き着く音。息遣いと衣擦れの音。


「……師匠、やっぱりワタシ、一緒にここでNEET生活をしマスッ」


「……NO、ほかの誰かじゃダメなのデス。……ワタシは……その……」//もじもじした様子。


「……師匠が……いいデス……」



「単にホームステイ先というだけでなく、何日か顔を合わせて、……ワタシ……やっぱりそう思ったのデス……。……なので……」


「……どうしても師匠にNEETのこと、好きになってほしいデス。NO、ゼッタイさせてみせマス……だから……」


「…………」//緊張した息遣い。


「……ダメ、ですか? ……師匠?」


「…………」


「…………」


「……ッ!」//驚きと喜びの声。


「……ホントウに? ……ッ、師匠~~、嬉しいデスッ!」


「……エ? 抱き着くな、デスか? NO! ワタシ、ニホンゴ、わかりマセーン……! ……エヘヘ」



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