唸る風 熱を帯び

梅林 冬実

唸る風 熱を帯び

どこからやってきたのか

尋ねても答えないから

お前と同じに胡坐をかき

俺もお前を見据えてやる


唸る風は地球儀の向こう

誰も知らない草原を駆け巡り

大空に胸を張って

居丈高に笑って見せる

俺はそれが気に入らない

空の偉大さをお前は知らぬのだ

変幻自在に姿かたちを変え

どこにでも吹き抜けられるお前自身を

過信しているだけなのだ


俺は空の優しさを知っている

空の雄大さを知っている

お前なんかに見向きすることは恐らくない

空は何でも許すし何でもお見通しだ

お前の体がいつか熱を帯び

狂ったようにあちこちを駆けずり

助けてと悲鳴を上げても

既にお前がこの世界から遠く離れた場所にいて

お前の叫びなど

誰にも聞こえなくなっていることを

空は知っているのだ


愚かな挑発は止めることだ

空は偉大だ お前はちっぽけだ

空はお前を抱けるが

お前は空に届かない

お前よりよほどちっぽけな俺が

地上からお前の振舞いを見て

呆れて言うのだから間違いない


お前は唸っていればいい

風としてとどまることを知ないまま

どこかへ吹き抜けていけ

きっとそれが最大にして唯一の

お前の幸せなのだよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

唸る風 熱を帯び 梅林 冬実 @umemomosakura333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る