第12話 姫野さんは真の天才クレーンゲーマー

「———これ、やろ」


 取り敢えずゲーセンを楽しむ事となった俺達は、最初に前回の教訓など全くなかったかの様にクレーンゲームをやることになった。

 姫野芽衣は殆どゲーセンに行ったことがないのか、心なしか目がキラキラ輝いている。


「うわぁ……これが噂に聞くクレーンゲームですか……! は、初めてちゃんと見ました……!」

「姫野さんはあまりゲーセン行かないの?」

「そう、ですね……家があまり裕福ではないので……」


 そうなのか……見た感じそんな風には全く見えないので、てっきりゲームに興味がないのかと……。


 柚も少し驚いているらしく、動きが止まっていたが、直ぐに再び動き出し、ドンッと自分の胸を叩いた。

 それと同時にそこそこある胸が『ぷるんっ』と言う効果音が付きそうなほど揺れ、辺りの男子の視線が吸い寄せられる。

 勿論俺も例外なく。


 しかし、そんな視線など全く気にした様子もなく柚は言う。


「ん、任せろ。お金は私とえーたが払う」

「別にいいんだけどさ? 何なら美少女と遊ぶのに金払うのなんて当たり前だから別にいいんだけどさ。せめて俺に確認取ろう?」


 俺もしがない高校生。

 常に金欠状態なんですわ。

 まぁでも学年の二大美少女と遊ぶのにお金を払うのはやぶさかではない。


「ん、お金、払って」

「よし来た! 俺の月7000円のお小遣いが火を吹くぜ!」

「ん、2人で、めいにゲームの楽しさを叩き込む」

「あ、あのっ! そんな……悪いですよっ。こうしてストーカー探しに付き合ってもらえているだけで私は十分です……!」


 両手をブンブン振って遠慮する姫野芽衣。

 俺と柚はお互いに顔を見合わせると……取り敢えず無視して話を進めることにした。


「ん、これやる」


 柚が指差すはクレーンゲームと言うより、紐でぶら下がっている札を先端が二股になっているアームで挟んで落とすやつだ。

 普通のクレーンゲームよりも良いものが沢山入っているが……普通のクレーンゲームより遥かに難しい。


「お前馬鹿だろ。こんなの取れるわけないじゃんか」

「ふっ、やるのは私じゃない。めい」

「ええっ!?」

「もっと馬鹿だろ。こんなの初心者がやって出来るものじゃないだろ」

「ん、狙うは掃除機。めいが取ればあげる」

「そ、そんな……わ、分かりました……やってみますっ!」


 押しの強い柚に根負けした姫野芽衣が、両手を胸の前で握りしめて意気込む。

 その瞬間に柚よりも巨大な胸部装甲おっぱいが両腕に挟まれ、再び男性陣(勿論俺も)の視線が集中する。


 しかし……初めてのクレーンゲーム&人のお金と言うことで、極限に集中しているためか全く気にした様子もない。

 

 まぁだが、幾ら集中した所で1発で取れるはずなど———


「———と、取れました……!」

「取れるんかーい。凄いな姫野さん」

「ん、予想通り」


 いや、俺これで高額景品が取れるの初めて見るんだけど。

 しかも、それを1発で取ったの初見プレイヤーだよ?

 

 俺がめちゃくちゃ驚いていると、いつの間にか柚が店員を呼んできており、姫野芽衣が申し訳なさそうにしながらも、少し嬉しそうに受け取った。


「ん、約束通り、あげる」

「ほ、本当に貰っても宜しいのですか……?」

「ん、家に同じのあるから要らない」

「あ、ありがとうございます……! 家のはもう壊れていて困っていたんです……!」


 何度も何度もお礼を言いながら頭を下げる姫野芽衣に、柚は鼻高々と言った風に調子に乗っていた。


「ん、次は私。絶対に取る」

 

 そう言って意気揚々とゲーミングPC用のキーボードを取ろうとして何度も失敗する柚が姫野芽衣に泣き付くのを見ながらふと思った。


 …………俺ら、目的忘れて楽しんでない?

 

 何て考えが頭を過ったが、滅多に———いや、金輪際ないかもしれない美少女2人とのこの時間を今は楽しむことにした。









「あ、アイツ……じゃ、邪魔だなぁ……」


 俺達をジッと見つめる視線に全く気が付かないまま。


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 人気が出れば1日2話上がるかも。 

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