第8話 二大美少女 in My classroom
柚に弁当を作ることになり、その後の授業で女子達に死ぬほど痛い視線を浴びに浴びまくった次の日。
「「「「「「「…………」」」」」」」
なるべく教室に居たくなかったので遅刻5分前に来たのだが……教室が南極並みに冷え切っていた。
まぁ南極に行ったことないから分からないが……兎に角物凄く静まり返っている。
怖いくらいに。
「な、なぁ———」
「ごめん話しかけないでくれ俺が視線に刺される」
「視線に刺される!? どう言う状態!?」
近くの男子に話しかけたのだが、思いもよらぬ返答が帰ってきたので、思わずツッコむ。
それと同時にクラスの全員の視線が———あの男子(田中君)の言う通り刺さった。
吐血しそうだよ……特に女子達からの怨嗟の視線が痛い。
男子もそんな女子に竦み上がっている様で、軽く震えていた。
「うーん……見事に注目の的になっちゃったな。流石俺。どんな時でも目立つおと———ごめんなさい」
俺は調子に乗るのをやめて視線から逃れる様に自分の席にそそくさと座る。
しかし未だ数多の視線が寄せられており、正直物凄く怖くて気まずいので、先程、柚から来たお怒りL◯NEを返していこうと思う。
《ゆす:何で来なかったの?》
《ゆず:ボッチ登校だった》
《ゆず:(怒りの猫スタンプ)》
ああ……何故か無性に癒されるのは俺だけだろうか?
流石美少女。文面だけで可愛いを表現するとは……お主中々やるのう。
《えいた:すまん。普通にクラスに居たくないから出来るだけ遅く出てた》
《ゆず:今学校?》
《ゆず:何時?》
《えいた:8時20分に出た》
因みに俺の家から学校までは約15分。
だから8時10分に起きても間に合う。
我ながら家に近い高校に入ってよかったと思ってるよ。
《ゆず:じゃあ明日からその時間に行く》
《えいた:別に一緒に行かなくても良くないか?》
《ゆず:やだ》
《ゆず:1人暇。私も一緒に行く》
《えいた:まぁ柚がいいなら別にいいが》
《ゆず:じゃあそれでよろ》
《ゆず:(前足を上げる猫)》
柚の奴……何で俺と一緒に行こうとするのだろうか?
ゲーム仲間だから……いや弁当か。
そう思うと、幾ら振られた相手とは言え、少し嬉しいな。
俺は鞄にある弁当をいつ渡すか考えながら……スマホをポケットに仕舞うと机に伏して、担任が来るまでひたすらに突き刺さる視線に耐えることにした。
余談だが、いつも五月蝿い我がクラスがあまりに静かだったので、担任が驚いて腰を抜かしていた。
———昼休憩。
「……」
「「……」」
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
現在俺達の教室を、今日一の静寂が支配していた。
しかし、朝の殺伐とした雰囲気とは違い、クラスの皆は物凄く気まずそうに口を閉ざしている。
その中心に居るのは学年で1位、2位を争う美少女である姶良柚と姫野芽衣。
そして———非常に残念で遺憾ながら、この俺である。
何故こうなったのか。
その原因は、数分前に遡る。
———数分前。
4時間目の授業が終わり、急いで弁当を鞄から取り出し、一応財布とスマホをポケットにいれてから教室を出る為に扉を開ける。
すると———
「———用が無いなら……おっす、えーた」
「え、えっと……少し佐々木君に用事がありまして……あ、さ、佐々木君っ!」
「…………すぅぅ———俺は佐々木瑛太ではありません人違いですではさよなら」
先程の授業が終わるのが遅かったせいか、扉の前に何故か柚だけでなく、あの学年のマドンナである姫野芽衣も居た。
しかも心なしか雰囲気悪い。
俺の脳が関わらないのが正解だと言う結論を出したので即座に扉を閉める。
だが———もう手遅れ。
既にクラスの全生徒から視線が集まっていた。
男子からは尊敬、女子からは侮蔑。
更に最悪なことに、閉めたはずの扉が開き……不機嫌そうな柚とオロオロしている姫野芽衣の姿がクラスの全員に見える様に現れた。
何なら柚はまるで我が教室とでも言うかの如く入ってくると同時に手を出して言う。
「———弁当、プリーズ。あと、L◯NE、無視するな」
え、とスマホを確認すると、数件L◯NEが来ていた。
柚の言葉と共に一層鋭くなる視線。
男子からの視線も尊敬から嫉妬に変化。
更にトドメとばかりに少し遅れて姫野芽衣も居心地悪そうに、遠慮がちに口を開く。
「……さ、佐々木君に少々用事があるのですが……」
クラス全員の嫉妬と侮蔑の視線が俺の身体をズタズタに引き裂いた。
———今すぐ早退していいかな?
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人気が出れば1日2話上がるかも。
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