ふふふ

梅林 冬実

ふふふ

日が沈んで夜の帳がおり

1日の終わりに

思い巡らせていると

ふと耳に届く虫の声


りりりり・・・


日中はまだこんなに暑いのに

自然とはなんと律儀なのであろう

送り火を焚いたのは昨日だというに


この夏あらゆる人々の元に

何が生まれ何が途絶え

何を知り何に目覚め

何を好きになり何を嫌いになり

何を始め何を諦めたのか


数えきれない「何か」は確かに存在して

人々はその数えきれない「何か」を携え

或いは手放し 次の季節を迎える


虫の声が夜に融和する

静かだが明瞭に聞こえるそれは

新たな時期の幕開けを告げる

四季を司る主が遣わした

神聖な音色なのやも知れぬ


そんなことを考える小夜

ふふふと漏れるのは含み笑い

冬から春 春から夏と過ぎ

もう秋を迎えるのかという

聊かの驚きと同量の幸福感


明日もきっと暑い

けれど恐らく

明日の夜も りりりり・・・と鳴く

虫の声が聞けることだろう


明日の夜

その声に耳を傾けながら

私は何に思い耽るのだろう

りりりり・・・と鳴く

虫の声に


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふふふ 梅林 冬実 @umemomosakura333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る