うたかたの夢

凰 百花

序章



 魔が差す、という言葉がある。


心の弱さのすきを魔物につけ込まれたかのように、善人であっても悪事に手を染めてしまうことを指す言葉であるという。

人の心の弱さ、迷いをさすのだという。


だが、本当に人だけの問題なのだろうか。ほんの少しの出来心に、なぜ魔という言葉を当てたのか。

人の心に本当に魔の物が訪れる時があるのを、知っていたからではないのだろうか。


彼らがするりと隣に忍び寄ることを。

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