第一章 ①はじまりの宇和島
小春日和の瀬戸内海の反射光が
急斜面の砂利道を軽トラックが行き来する。積み上げられた石垣、南向きの段々畑には柔らかなみかんがたわわに実る。市街地を見下ろす鬼ヶ城山の山頂は、もうすぐ雪化粧をするだろう。
新暦・十一月。
となれば、出雲のほかは神々不在の『
人間はこの七日間に今後の運命が決することを知らない。『
『知らぬ者(
『知る者(
谷風吹くみかん畑。
男の荒い息遣いが
幼女の意識は
幼女は脱力して息絶え絶えになっていた。ただうわの空に澄んだ青い空を見つめていた。おぼろげな視線の先に
真珠色龍神は空上静止した。たちまちに黒雲を呼び寄せると
ピカァッ! バリッ、バリバリバリッ……!
キラリ、
ジュウウウゥゥ……ッ!
真珠色龍神は
真珠色龍神は後ろ髪をひかれて小さく
興奮状態だった男はハッとして我に返った。落雷の衝撃で理性を取り戻したのだ。
「
首筋が焼かれたように熱くて痛い。まるで
みかん畑の固い土には小さな幼女が泥だらけで横たわっている。冷たい雨に濡れて、衣服は大量の血液と男の精液が染み込んで薄汚れている。それはさながら、ごみ置き場に捨て置かれた『ボロ人形』のようだ。
「ヤバい……、死んだ、か?」
幼女の指先が動いた。かすかに
男の心は『自己保身』に支配された。
「マズい、マズい、マズい…………」
幼女を置き去りにして急な斜面を駆け降りる。恐怖に足が震える。転びそうになりながら全速力で走った。農道に停めたシルバーのワゴン車の運転席に乗り込む。キキキイィッ! タイヤを鳴らして急発進させた。アクセルを踏み込んでエンジンをうならせて砂利道を走り抜ける。
猛スピードで逃げ去る車の騒音は雷鳴に打ち消されていた。
天空を突き抜けた遥か高い場所。
或る『
あの若い男の首筋に焼き付けられたのは『
幼女の未來を演算する。
彼は即座にアップデート(修正)する。そうして、新たなコンストラクト(構築)を開始した。
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