第59話 強力な助っ人
”とりあえず、仲間たちが捕らえられている北の尖塔の様子を見てくる。この際だから、奴らの救出作戦を王女と二人でたててくる”
サライ村の宿営地には、クーデター軍、ゴットフリー、タルク、ラピスが勢ぞろいしていたが、タルクはスカーの言葉を思い出し、
「あのお姫さんと、クーデターの首謀者のスカーを一緒に王宮へ向かわすなんて、やっちまって良かったのか」
困惑した顔つきでそう言った。
クーデター軍のメンバーたちは、とりあえず待機せよという、スカーの指示で、それぞれのテントへ戻っていった。
残されたタルク、ラピス、そしてゴットフリーの3人は、今の状況について話し合う……とはいっても、話しているのはほとんどがタルクとラピスで、ゴットフリーは海岸付近の岩場に腰掛け、二人の会話にはさほど興味がないように、ぼんやりと海を見つめていた。
タルクがラピスに言う。
「スカーの仲間たちが、掛けられる
「2日後の建国記念祭の午前。ちょうど、引き潮から満ち潮に変わる時間帯に行われる。だから、明日中にはどうしても彼らを救出したいんだ」
「でも、王女をクーデター軍に引き込むなんて、やっぱり無謀じゃなかったのか。いくら、ソード・リリーの決意が固いといっても、自分の国が倒れてゆく手助けを最後までやり遂げれるのか。もし、心変わりでもされたら、それこそ俺たちは根こそぎ近衛兵にやられちまうぞ」
すると、ゴットフリーがやっと重い口を開いた。
「闇にまぎれて、
すると、タルクが首を傾げて言った。
「霧花って、レインボーヘブンの欠片“夜風”のことか。あのサライ村のレストランでウェイトレスをやってた美人だろ? お前は知らなかったかも知れないが、
だが、ゴットフリーは、その問いに淡々とした声で答えた。
「王女が我々に害をなすと思えば、容赦はしない。なんだかんだといっても、あれは“闇の住民”だからな」
そんな二人の会話にラピスは苦笑する。
ふぅん、霧花ってやっぱり美人なんだ。
でも、容赦しないのは、我々にというより、ゴットフリーに害がありそうな場合にだろ?
にしても、“闇の住民”か……
すると突然、タルクが大声をあげた。
「まあ、スカーが帰ってくるまで、我々には打つ手もないし、ここらでどうだ。酒でも飲んで待っていようや!」
ばんっと、どこからか持ってきた樽酒をみんなの前に引き出してくる。
「酒って? 冗談じゃないよ。お前、怪我に響くぞ! それにゴットフリーだって体調万全ってわけじゃないんだろ」
迷うこともなく、タルクは元気な側の手でむずと酒樽をもちあげると、どくどくと杯に酒をそそぐ。そして、にやりと笑ってゴットフリーとラピスに、それを突き出した。
「酒でも飲んでいないと、こんなもやもやした気持ちは晴れないぜ。大丈夫だ。俺たち、ガルフ島警護隊にとっては酒なんて水と同じだ!」
なっ! と嬉しげにゴットフリーの顔を見るタルク。
「お前、この酒樽どこから持ってきた?」
「スカーのテントから拝借してきた。ほら、飲め飲め! 酒なんて随分飲んでないような気がするぜ」
タルクの勢いにゴットフリーは、苦笑いしながらも、すすめられるままに酒杯を口にする。もともと、嫌いな方ではないので、強く拒む理由が何もなかったのだ。
「ほら、ラピスも!」
ラピスは慌てふためいて言う。
「俺はまだ17歳だぞ。未成年に酒をすすめていいのかよ! それに医者がいざという時に酔っ払ってちゃ話にならないだろ」
「堅いこと言うなよ。ゴットフリーだって、まだ19だ。それでも、もうザルだ」
大声でまくしたてて、タルクが笑う。
何? ゴットフリーって、まだ19歳だったのか? 海千山千を通り抜けてきた感じなのに、俺と2つしか違わないのか
「そうだよ。ラピス、私なんか10歳の時から飲んでるのに」
そばで聞こえた少女の声。さすがにこれだけは、許せない。
「ココっ、お前まで飲むな!」
ゴットフリーの横にちょこんと座って、酒杯に手を伸ばそうとするココ。一体、いつからそこにいたのか、すっかり場に溶け込んでしまっている。血相変えて、ココから杯を取り上げたラピスを、タルクが笑う。
「お前、いける口か? さすが、サライ村の泥棒娘。でも、子供は寝てる時間だろ。おまけに酒まで飲んでちゃお巡りさんにしょっぴかれるぞ」
「みんなが、うるさすぎて、目なんか覚めちゃったよ。そうだ……今、急に思い出した」
ココはゴットフリーをぎらりと睨みつけてこう言った。
「よくも私を騙してくれたわね」
「何のことだ?」
一瞬、間をあけたから、ゴットフリーは人の悪い笑みを浮かべた。
「しらばっくれないで! 喉が渇いたなんて、私を騙して外へ出て行ったじゃないの」
少しの畏れも感じないのか、悪態をつきながらゴットフリーにまくしたてるココの態度にラピスは、かなり驚かされた。
もう一人、助っ人を見つけた。いや、容赦がない分、ココはジャンより強いかも……特に、対ゴットフリーに関しては。
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