「失恋したらラブコメ主人公になった件」

ぽこちん侍

第1話

 我々の17年間は序章に過ぎなかったのだ。

 おそらく僕は彼女にとって最も親しい男の子で、彼女は僕にとって最も親しい女の子だった。しかし、我々は幼なじみであり恋人ではない。それどころか友人かどうかさえ怪しい。

 昼休みの体育館裏で昼食を共にとる仲――それが我々の関係だ。

 それ以外の時間を過ごすことはないし、なにより互いには恋人がいる。



 ―――恋人がいる。

 これについて語ろう。

 先に恋人が出来たのは彼女だった。といっても、それは先週のことで昔からいたわけではない(男女の仲を邪魔するほど僕は無粋ではない)。そしてどう言うことかその3日後、僕にも恋人ができたのだ。

 シンクロニシティーとでも言うのだろうか?

 いや、数日のずれがあるから違うか。

 でもまあ、我々はそれなりに似たもの同士なのだ。



 以上が僕―牧島修と新山葉月の近況だ。

 幼なじみに恋人ができ、僕にも恋人ができた。

 ハッピーではないか。

 ハッピーなはずなのだ。

 ハッピーと考えるべきなのだ。

 正直に言おう。

 僕は新山葉月が好きだった。

 かなり前から――おそらく誰よりも早く。

 しかし、その恋は成就することはなかった。

 つまり、僕は失恋をしたのだ。

 

 


 


 

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