百姓ときどき冒険者~テンプレ異世界転生者がスタートラインでしくじった物語
森山沼島
Level 0.0 異世界転生者、しくじる
聞いて驚け?
実は、俺は――異世界転生者なんだ。
…………。
まあこの程度じゃあ「あ? それがなにか?」と言われるのは俺も想定済みだ。
何せ、俺が元居た世界において、ラノベ作品の普及によって星の数ほどの異世界へと我らが世界の有象無象共が転生…もしくは転移しているのは周知の事実だからな。
誰もがこの程度のネタ振りで「な、なんだって!?」といった良いリアクションをしてくれない時代になったのだ。
そうさ、全部がネット社会が悪いのさ!(※責任転嫁)
…そのネットに転生前はドップリと依存していた俺にとっちゃあ、えらいブーメランなんですけどね(笑)
俺も多分に漏れず、早々に自分の人生をセミリタイア……絶賛ニートしてて親兄弟を泣かせてたからなあ~。
…だが、結局は俺がこの異世界へと転生することに関しては、俺がマイホームで何故に孤独死した――とか、穀潰しの抜け殻を発見したマイファミリーはどんな反応をしたとか。
そして、一番重要な“なんで俺が選ばれたの?”とかの当然なクエスチョンをいわゆる神空間で聞いても、『詳細は一切教えらません』との女神様の御言葉でな?
心残りがあるとすれば、俺の秘密が詰まりに詰まった愛PCのHDDに自ら引導を渡せなかった事と…最後まで親に迷惑を掛けっぱなしにしてしまったことだろうなぁ…。
すまん、マイ・ファザー、マザー、ブラザー、シスター…あっと、あとリトルシスター&リトルシスターの彼ピッピ君…。
初の顔合わせでDQNとか言っちゃってゴメンね?
将来は介護士になりたいとか照れながら言う君は、俺なんぞよりもずっと立派な若者だったよ。
ちょっとだけブラコンだけど…妹の事をよろしくお願いします。
おっと暗くなっちまったな。折角、異世界転生できたっつーのに嫌になっちまうぜ。
さて、以上のような些末な理由から――俺は今度こそ生まれ変わった異世界で力の限り生きてやる!
そう思ったね。
そうさ、何てったってこの異世界ガーヴァキヤリテは剣と魔法の世界なんだからっ!
もう何か色々とテンプレが過ぎるが…コレはコレで大いに良いっ!
――いや、むしろ文明圏がバリバリ中世レベルなのに魔法が無いとかだったらテンションだだ下がりになって俺のか細い豆腐マインドが完全に死ぬ自信がある。
当然、俺が生まれ変わった出力先の村の外にも昼間っから当然だろ?くらいの勢いでモンスターの類が闊歩している物騒な世界なんですけどね。何か問題ある?
だが、諸君。
安心し給えよ?
俺は転生時に女神様からもはやこの手の異世界転生ものには
てか無かったらこんな魔法はあるけど電気もガスもネットも無ぇ世界に絶望するしかなかろうですよ。
悩んだ挙句、俺が転生の女神様から頂いたチートスキルは……<全魔法>。
この世界の全ての魔法が使えるようになるんだ、そのまんまだな。
でも、間違いなくこりゃチートだろ?
が。問題はこの世界はゲームに例えると
つまり、HPを消費して魔法を使う…一種の奇をてらった戦闘システムを取り入れたRPGみたいだな。
ぶっちゃけ、古参の人を対象に言えば●ナスとか、●ナスⅡとか。
そいで、それにプラスして“魔石”が必要とされる。
それも各魔法の属性とレベルに対応したヤツね……。
正直、ここまで魔法使うのが手間だと、このチートスキル…損した気分になるよな?
だがそこは豪運の俺。今世からは豪運ったら豪運。
俺は例外的に魔石無しで各魔法が使えちゃうってわけですよ。
ぶっちゃけ最強――と言いたいが、件のチートスキルから俺の肉体への特別は補整は無い模様な上に、結局は魔法の発動自体は魔石分として体力も倍使うので素の体力勝負となっちまうんだけどな…。
また、俺の頭に転生直後、全部の魔法リストがインストールされてる訳じゃないから、これもまた一から習得して覚えてくしかない。
俺の魔法の習得方法は大きく分けて二つだ。
一つ、魔法を教えて貰う。
正確には買う、が正解だな。
魔法は普通に売られているらしい。
噂じゃ法外な額で闇屋ならぬ“闇魔法使い”の不法な横流しとかもあるっぽい。
魔法自体が魔石を用いた特殊技術だし、一定レベル以上の魔法は秘術扱いもされていると俺の村に来た行商人や冒険者からそう聞いたよ。
正しい手順を一応簡潔に説明しとこうか。
1.先ず、魔法名・必要な魔石・消費HPを教えて貰う。
あんまりこの世界だと一般的じゃないが、一応はステータスという概念自体は認知されている。
恐らく魔法とかアイテムの類であろう何らしかの方法で個人のステータスを確認できるらしいからな。
ただ、それでも普通はレベルとHPとMP(俺には無いけど、実は持ってる奴…厳密には種族かね?はMPも普通に持ってるんだわw)くらいしか確認できないんだと。
2.次に実際に教えて貰う魔法を使って貰い、その直後に魔法使用者と接触することで両者の間に一種の魔力同期のようなものが発生させることで魔法を覚える
魔法のレベルが高いと覚えられるまでこの作業を繰り返す必要もあるらしい。ただし、例外も存在する。
3.最後に魔法の属性適性が教える側と適合しているか。
各魔法には属性があって、扱える適性を持ってない者は結局は不適合属性の魔法は覚えられない。
また、レベルが足りなくてもダメ。
俺はこの方法で善意の冒険者から低位の魔法を幾つか教えて貰えた。
相手は俺が実際に使えるなどとは毛ほども思っていなかったらしく、質の悪いエールに酔った勢いで片手間に教えた俺が速攻で使って見せた事に驚愕していやがったよ。
余りのショックで見事に色々と嘔吐していたぜ…盛大にな…。
そんで俺には魔法の才能が有りそうだからってんで、冒険者ギルド本部がある王都に試しに行ってみろとか言われたっけ。
王国中の魔法使いが集まる魔法大学なるものがあるらしいが、そこに厄介になるのは…とんでもなく金が掛かりそうなので、俺には当分縁はなさそうだがなあ。
二つ目、もう一つの方法が――ラーニング。
…格好良く言えばこうだ。
ぶっちゃけ、俺が直に魔法の対象になることで習得する方法だな。
多分、コレは魔法に関するチートスキルを持つ俺だけが可能な型破りな手段だ。
狙って覚えたい魔法が回復系だとか補助系なら問題は無いんだ…。
百歩譲って毒とかの状態異常も何とか――ただし、ダメージを直接受ける系は死を覚悟する必要がある。
俺だってそら将来のチート無双冒険者として個人的にも結構頑張って鍛えちゃいるが…それでも常人の域でしかないからな。
しかも、現状――標準装備も布の服に棍棒とか、だ。
流石に村の武器庫から勝手に槍だら楯だら革鎧なりを糧となる獲物とか外敵であるモンスターを狩る以外の理由で失敬すれば大目玉を喰らっちまうからな。
村にあるこういった物々しい装備とかの備蓄は村の私物じゃなくて領主のものでもあるらしい。
許可無く使うわけにはいかないのは仕方ない。
それでも親から押し付けられた畑仕事をサボって村を抜け出してまで、適当なモンスター相手に必死でレベル上げに俺は勤しんできた。
その甲斐あって一応は攻撃系とバフ・デバフ系を幾つか習得できたしな。
不満があれば回復系が無いことか…こんな辺境じゃあそもそも貴重な治癒魔法の使い手が訪れる事自体が珍しいからな。
それさえ手に入れば――魔石を必要としない俺は半ば半永久的に持続して魔法を使える可能性があるんだが…そこは仕方ないと思って、王都に着いてから治癒魔法の伝手を探そう。
――そう、王都だ。
俺は昨日で遂にこの世界での成人である十五を迎えたってわけだ!
昨夜は村で成人祝いに当たるキャンプファイヤーのような催しで俺は村人全体から祝われてさ、ちょっと前世の記憶も合わせた意味合いで泣きそうになっちまった…。
そうだよな、前世合わせたら俺…余裕でアラフォーだし。
だが、感傷に浸っている場合ではない。
俺は今日、村の悪童から一端の男として王都へと旅立つ。
そして、伝説を作る…っ!
え? そらそうだろぉ~? こちとらチート持ちですよ?
俺は更に使える魔法を増やし、その魔法で無双してこの異世界の歴史に名を刻んでやるのだ…!
そしてそしてっ!
冒険者として荒稼ぎし、金銀財宝の山に埋もれ――いや、ここは城だろ!?
一国一城の主なんて男のロマンとしては及第点だ。
あ。
でも、王様とかにはなりたくないな…。
俺、政治スキルなんてゼロだし。
しかしぃ~王様かぁ……金と権力に物をいわせて美少女奴隷買って……ハーレムとか?
……これまたテンプレって感じだが大いに結構っ!
「…クラウス」
「リュカ」
俺がひとり上の空で拳を握りしめ、見送りしてくれている村の衆を半ば無視してまでブツブツと未来予想図を描くことに夢中になっていた。
だが、とある少女の声で我に返る。
彼女は俺の幼馴染みである村の少女、リュカ。
いや、正確には俺の村の住民ではない。
俺が生まれ育った村…リバーサイドは厳しい風土を持つサンドロック男爵領に流れる貴重な水源である川とその畔に茂る雑木林を挟んで左右東西に分かれている小さな村だ。
村の人口も五十人程度しか居ないから、全員が顔見知り以上の仲間みたいなもんだ。
だが、リュカはリバーサイドの住民ではない。
俺の家とは川向うにある東村にも彼女の家はなかった。
サンドロック男爵領には領主屋敷の他に全部で五つの村がある。
各村とは無駄に距離があり、俺は十五年の異世界人生で義姉が嫁いだ時に初めて別の村に行ったことしかないくらいだからな…。
つまり、彼女はそのどこぞの村の住民となることになるだろう。
何故か俺から家を聞いてもはぐらかされるし、事情を知っている大人も俺の問いを半ば無視する始末だ。
まあ、別に村八分とか仲間外れにされたり、村人達から冷たくされることもないから特に問題ないんだがな…一種のアンタッチャブルな案件であると俺と同世代は何となく察していた。
――リュカが潤んだ瞳で俺の手を握って……そっと、その手を離した。
そんな彼女の仕草に…ぶっちゃけ村を出立する決意が鈍る。
なんせ前世は全くと言っていいほど俺は女っ気がなかったからな…。
だがここは歯を食いしばって耐えねばなるまい。
俺の異世界サクセスストーリーの為に…!
俺はリュカ達に背を向けて数歩、王都へと伸びる街道を目指して歩を進めた…。
――思い返せば、その時だったなあ~…。
背後から急にリュカが嗚咽しているらしき声が聞こえたのは…。
俺が咄嗟に慌てて振り向くと、彼女は慌てた様子の村の女達に支えれていて――自分の
まあ…なんだな?
こうして、俺はこれからの異世界人生における岐路というか…スタートラインで大きくしくじったわけだ。
……いや、自業自得でしかないんだけども。
ん?
何でしくじったんだって?
あー…その…何と言ったらいいのかね。
…………。
正直に言うとリュカの
**後書き**
リハビリの一環として新拙作wを書いていこうかと思います<(_ _)>
テーマはチートスキルを与えられ、これからだ!…というタイミングで予期せぬトラブルから運命の岐路に立たされた異世界転生者が如何様に運命に翻弄されていくのか?です(笑)
基本はコメディ作品としてライトに読んで頂ける作品にしていければ良いかと…(^_^;)
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