第13話 4日目 - 4
モニターで状況を見ていた魎呼は、音を立てながらキャンディーをかじっていた。
明らかに苛立いているようだった。
戦いが少なかったり、戦いが気に入らなかった訳では無い。
四日目にして、参加者たちが初めて好戦的になっていたが、中心地から少しだけ離れた場所で問題行動……いや、参加者を殺しているので正確には問題行動ではない。
魎呼が苛ついている原因は、その集団だったことだ。
その集団は十人程だが、それを率いている参加者の存在が魎呼は気に入らなかった。
その参加者の名は”
蓮華を虐め、自殺に追い込んだ主犯格だ。
そして、魎呼が幽鬼に対して、最後まで実装を反対していたスキルを習得した参加者だ。
そのスキルは”フェロモン”だ。
前々回の勝利者は、このスキルを使って六日目に集めた参加者を一ヶ所に集めて火を放ち何十人という参加者を一気に殺した。
それで得られる駆逐数とポイントを一気に得た。
この時点で残っていた参加者は七人だったが、大量ポイントを得たことで一気にゲームバランスが崩れていた。
すでに調律者がゲーム調整をしようとしても、残り一日では何もできない状況に陥っていた。
最終日を待たずに決着が着いたと誰もが確信した。
瑠璃は自分が来る前の命乞いのような状況から考えれば、オファー組だろうと考える。
つまり、どんな願い一つだけ叶えられるということは無く、蓮華が死ぬ前の状況に戻るだけだ。
だが平凡な日常が戻れば、問題無い。
瑠璃は居の中の蛙なことに気付かず、自分は特権階級の選ばれた人間なのだと思っていたからだ。
今回、
自分以外は虫以下だという考えから、人を殺すことにも抵抗は無かった。
もっとも、蓮華に対しても死んでもおかしく無いような虐めを何度もしてきた。
指示していた瑠璃も、普通と言われる人間とは思考が違っていることに本人は気づいていない。
最初は女性と言う武器を使いながら近づき、【フェロモン】で弱い参加者を無防備状態で殺害した。
相手が瑠璃を格上だと思えば、【フェロモン】で洗脳に近い状態に出来ることを二人目を殺害する時に偶然知る。
三人目で実験をして確証を得た瑠璃は、強い参加者を自分の配下に置き、思いのまま操っていた。
しかし、三日目の夜に特別報酬のことを放送で知り、四日目にポイント二倍デーになると、自らの集団にいた使えなさそうなスキルの参加者を一気に殺した。
そして、駆逐十人目を達成して、特別報酬を得る。
その後、仲間に指示して参加者を連れて来させては殺して、駆逐数二十人目に近付こうとしていた。
貯まったポイントは全て『スキル強化』に使用したため、【フェロモン】の力は強力になっていた。
それこそ、瑠璃が「死ね」と言えば、喜んで死ぬ参加者がいるくらいだ。
余程の精神力か、女性に興味がない……下心が無い参加者でなければ、瑠璃相手に抵抗するのは難しい。
それに瑠璃と戦う前に、瑠璃を守る参加者たちがいる。
上手くスキルを使用して殺人をしているが、観戦している来賓者たちが望むような戦い方ではないだろうと、魎呼は危惧していた。
むしろ、どっちが勝つか分からない泥仕合のような方でも、瑠璃よりはマシだとさえ魎呼は思っていた。
このままではゲーム終了後に、良い評価を得られないのではないかと、魎呼は頭を抱えていた。
その時、時計のアラームが鳴る。
(はぁ~、もう放送時間か……)
面倒臭そうにアラームを消して、魎呼は夜の定期放送をする為の準備に取り掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます