第18話 新入部員

季節は穏やかに過ぎていき、大塚と佐藤は三年生になった。

土屋もあおいも二年生になりいよいよと4月を迎えようとしている。

堤に何度正式に部活にしてくれと頼んでも承諾はされなかった。当たり前だ。


というわけで、個人で勧誘することにした。

今回は一人じゃないし笑われても怖くない。

あおいは見られたくないのか石のように部室から動かなかった。


看板を各持って教師のいない所で勧誘をする。

しかし佐藤も入ってきたので部室も手一杯になってきた。


これ以上増やしてもいいものか。しかし女子が増えてほしい。

あおいはマネージャーとして機能していない。

そもそもムッツリのマネージャーって何するべきなのかしら。

サッカーとか野球部ならタオル持ってきたり水分補給させたり…。

ムッツリは?ティッシュの差し入れ?赤と白のあれ補給?


女子に積極的に声をかける。

皆眉間に皺を寄せ、足早に立ち去っていく。

すごすごと集まっていくと佐藤の所に人だかりができている。


佐藤は女子からも男子からも大人気である。

佐藤はひとりの女子の手を引っ張って連れてきた。

「大塚、この子どお?」

スカートはひざ下まで伸び、セミロングで前髪が延び顔が見えない。


「えー…うんまぁいいけど…」

「おいどんも別に…」

佐藤は「この子は化けるよー」と楽しそうだ。

「名前は?」堤が聞くと「…1年の秋元香です…」と控えめに答えた。


あおいは香の足から頭までじっくり観察している。

長い白の靴下と長いスカートで足がまるで見えない。

あおいが靴下を下げ、スカートをクルクルとまくり上げた。


「ひゃああぁ、や、やめてくださいぃ」佐藤は鋏で前髪を切りメイクを施していく。


約一時間で仕上がった香はキキ♡ミミ様にも勝るほどの美貌だった。

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